ロシアがウクライナに侵攻してから2ヶ月が経過したとニュースで報じられていた。テレビも新聞もずっと「ロシア批判」で溢れかえっている。そして先日は、JRの恵比寿駅で、抗議を受けてロシア語表記を一時隠したという。幸い、批判を受けて元に戻したそうであるが、抗議をする方もそれを真に受ける方もいかがなものかと思わざるを得ない。そこには簡単に一方向の意見に流されてしまう安易な思考と、信念のなさ、事なかれ主義とも言える安易さが見て取れる。
先日読んだ『太平洋戦争への道』という本には、戦前の国民の「熱狂」が紹介されていた。満州事変に際しては、全国130紙にわたる新聞が一斉に国際連盟脱退を主張し、五・一五事件に際しては、首相を暗殺した犯人の「義挙」を国民が支持。そうした国民の熱狂が関東軍の後押しをし、天皇陛下の抑制を無視して中国での権益拡大へと暴走していく。現代でも民主党政権誕生や小池百合子都知事の圧倒的支持など、民意が一斉に一方向に流れる危うい風潮は変わっていない。
軍事侵攻したロシアが悪いことは間違いがない。それに対する批判は適切である。ただ、問題は「ロシアだけが悪いのではない」ということである。ロシアがウクライナに侵攻したのは、ウクライナがNATOに加盟しようとしていたのがその最大の理由である。NATOは「対ロシア軍事同盟」であり、ウクライナがこれに加盟すれば、ロシアの喉元に核ミサイルが配備されることになる。ロシアがこれを嫌ったのも当然であり、似たような状況に置かれたアメリカがキューバ危機では核戦争を決意したことからも、どれほど嫌な状況かというのもアメリカはよくわかっているはずである。ならば認めなければいいものを、侵攻前にアメリカはロシアのウクライナのNATO加盟を認めるなという要求を拒否している。
ウクライナ政府にしても、ロシアと接する位置関係にあるわけであるから、敵対的な政策ではなく、中立的な政策を取れば問題は起きなかったはずである。そんな思惑の中で、犠牲になっているウクライナ市民こそいい迷惑なわけで、ロシアの即時撤退を要求するのであれば、同時にウクライナのNATO加盟の永久放棄と中立政策の堅持も交換条件として出すべきであろう。ロシアに対する経済制裁にしても、参加しているのは実は欧米諸国のみで、中国やインドなど多数の国は参加していない。こういう事実を我々は冷静な目で見る必要がある。
実は、我が社でも役員同士で意見が合わずにギクシャクしている。原因はコミュニケーション不足である。お互いに会社のために良かれと思っていろいろ考えている。だが、当然その内容は違うわけであり、どちらが正しいというものではない。であれば、お互いに議論して「何が会社にとっていいか」を考えればいい。それによって、譲るところは譲り、通すところは通す。議論して決めたことを一緒に進めていけば問題はない。ところが、互いに相手を批判するだけで、その考えを知ろうとしない。だからギクシャクする。
会社は1人ではできないことを可能にするシステムである。しかし、みんなが目指す方向がバラバラだとそれが機能しない。リーダーの下、一つの方向にベクトルを合わせ、力を合わせて進めば大きなことができる。スポーツでもそれは同じである。そのために経営理念を定め、社長が目指す方向性を決める。しかし、その中でも細かい意見の相違は、互いに交換しあって微調整していく必要がある。誰もが「正しい意見」を持っているのである。それは国レベルでも一緒で、ロシアもウクライナもアメリカも「自分の正義」を持っていて、互いに調整しないから対立するのである。
大事なのは、そういう事情をきちんと理解し、一方だけの意見を聞いて判断するということをやめることである。私は、互いに心の中で反発する役員の双方の意見を聞いてそれを感じている。それぞれの意見を尊重しつつ、会社のためには一つの意見を採用しなければならないとしたら、議論してそれを決めるべきである。そして「決まったら従う」というスタンスがあれば、問題は生じないと思う。どうしても自分の意見を通したいと譲らなければ問題が拗れてしまうが、そういう意地を張らなければ解決策はあると思う。
私がお世話になった先輩は、「複眼思考」ということをよく仰っていた。物事を一つの方向からだけ考えるのではなく、反対側も含めていろいろな方向から考えることである。ゼレンスキー大統領の話だけを聞くのではなく、プーチン大統領の話にも同じくらい耳を傾けるべきだと思うし、私もいろいろな意見を聞くようにしている。もしかしたら、そこには自分に対する批判意見も含まれているかもしれないし、それを耳にしたら心穏やかではいられないかもしれない。それでも知らないより良いと思う。
マスコミの意見は、公平ではなく一方的な意見である。もともとそう思っているので私はマスコミの意見は信用していない。日常生活においても、誰かの一方的な意見だけではなく、いろいろな人の意見に耳を傾けたいと思う。幸い私は社内でそうすることが可能なポジションにある。それをうまく利用して、一方向に流されなることのない確たる意見を身につけていきたいと思うのである・・・
weareawayによるPixabayからの画像 |
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