2022年4月6日水曜日

息子の誕生日

 若い頃から漠然と将来結婚したら子供は2人、上は女の子で下は男の子、いわゆる一姫二太郎を考えていた。そして娘が生まれ、次に息子が生まれた時は念願叶った気がして嬉しかったものである。そんな息子が生まれて、今日で17年である。振り返ってみると、感無量のところがある。娘が生まれた時のダメージがあり、普通の妊娠は難しいと言われた。ダメもとでと試したのは体外受精。それで見事着床。途中で息子だとわかる。

 喜びも束の間、胎児に異常があるかもしれないと医師に脅さた。堕ろすなら早い方が良いとも言われ、暗澹たる気持ちにさせられた。障害児として生まれたら、一生の問題である。産むのが良いのか悪いのか。しかし、産もうと決めたら母親の入院騒ぎ。絶対安静で何ヶ月か過ごして臨月を迎える。退院して通院に代わっていたが、出産は人工的に行うと予定日が決められた。だがその予定日の朝、破水して病院に向かう。私もあらかじめ休みを取っていたのでスムーズに対応。昼過ぎ、私の目の前で息子がこの世に生まれ出た。

 ハイハイからよちよち歩きへ。大人の真似をしようとするが、うまくできずに周囲に笑いを振りまく。幼稚園からかけっこだけは早くと、運動会の前に特訓。ほとんどの運動会で一等賞を取った。ラグビーをやらせたいと思ったが、自分の経験もあって野球もやらせた。息子とキャッチボールというのが父親のベタな夢であるが、私もグローブを買って息子とキャッチボールをした。誘えば嬉しそうに素直についてきて、公園で一生懸命ボールを投げてきた。

 そんな息子も私が通った都立高校よりもワンランク上の都立高校に入学し、既に高校2年生。身長は私を越え、ラグビー部に入らないかなとの私の願いも虚しく、野球部に入った。残念ながら弱小チームで、甲子園はおろか、予選で1、2勝できれば良い方というレベルのようであるが、毎日楽しく練習しているようである。残念ながら勉強は平均点をうろうろ。特に数学に苦戦しているようである。文武両道がモットーの私としては、「野球も勉強も両方しっかりやれ」と言っているが、どこまでやるのやら。

 17歳と言えば、かなり自分というものが確立されてくる。私も17歳の頃はどうだったか思い出そうとするが、どうだっただろうと思うばかり。今と変わらないような気もするが、世界は自分を中心に回っているような気がしていたようにも思う。自分が意外と「普通」なんだと思わされたのは社会に出てからだったように思う。今は、「普通だが一味違う男」でありたいと思っている。息子はどうだろう。世界の中心にまだいるのかもしれない。

 驚くことに息子にはもう彼女がいる。私は高校3年になる前だったから、私よりも早い。私に似てか、イケメンだとよく言われるから当然なのかもしれないが、我が身を振り返って念の為「避妊だけはしっかりやれよ」とアドバイスした。息子に対してそういう性教育は気恥ずかしい思いがあるが、こればっかりは油断はできない。自分は父親にそんなことを言われたことはないが、こればっかりは父親の義務だと考えている。さらにどこで買えるかも教えた。私も最初は夜中にこっそり買いに行ったものである。「当分大丈夫」というのが息子の答えであった。当分っていつまでだろうと思わずにはいられない。

 これから息子にはどんな人生を歩いてもらいたいだろうかと考えてみる。高校生活が終われば大学があり、その先には社会人がある。国立難関大学に合格でもしてくれれば嬉しいと思うがどうだろう。私は執念で突破したが、持てる力以上に出し切ったから大変だったが、それ故に満足もあった。良い大学を出れば就職が有利などという考えは微塵もないが、そこに入る努力の過程と、考える思考回路の育成ができたことが私の場合は今につながっていると思うので、息子にもと思ってしまう。

 就職は、とか考えるのはまだまだ気が早い。大企業に入れば安泰など教えるつもりはないが、大企業に入れば白が付くのは確かである。たとえ転職したとしても、最初に「大手企業に入社した」というのは、個人のプロフィールを飾るに十分である。新人教育もしっかりしているだろうし、社会人としての基礎は身につけさせてくれる。一生しがみ付けなどとくだらないことを言うつもりはサラサラないが、最初に大企業に入るメリットはあると思う。

 その先はとにかく困難にあってへこたれない精神力だけはつけてほしいと思う。安泰な人生を歩んでほしいが、人生の航海は凪いだ海ばかりではない。私も夜中に不安で目が覚めてしまうような経験を何度もした。息子には味わわせたくないが、そうもいかない。であれば耐える、あるいは乗り越える術と精神力とを身につけてほしいと思う。私の経験がそれに生きれば何より。そういう経験談を少しずつこれからしていきたいとも思う。日々逞しくなっていく我が息子であるが、これまでの日々を思いつつ、これからの人生にエールを送りたいと思うのである・・・


-MayaQ-によるPixabayからの画像

【本日の読書】
  


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