2020年7月2日木曜日

税金は悪か

先日の事、取引先に対する支払いについて、「指定先(別会社)に振り込んで欲しい」という依頼があった。こちらとしては別に金額が増えるわけでもないため了承したのだが、聞くところによると税金対策らしい。今期は儲かっているとのことで、何やら税理士に怒られたそうである。その手の話はよく聞くことで、似たセリフとしては、「経費で落ちるから」という話もある。これはもちろん、「経費として会社で認められている」という意味もあると思うが、社長さんが言う場合は「税金を払うよりいい」という意味の場合もある。

また、「税理士に怒られる」というのもおかしな話で、まあそれはものの言い方だとしても、税理士の主要な役割は「いかに税金を払わないで済ませられるか」だと言える。本来は、「市民が正しく税金を納められるようにサポートする」ことだと思うが、クライアントあっての商売だからそんなことを言っていたらクライアントが逃げてしまうだろう。「いかに税金を抑えてくれるか」というニーズに応えられないとクライアントを維持できないだろう。

できることなら税金を払いたくないというのは、誰しも共通して思うことだろうと思う。かくいう私も、毎年源泉徴収票を見ると、支払っている税金の額に愕然とする。所得税だけではない。都民税、固定資産税もあるし、自動車税もある。年金はいずれ自分に返ってくると思えばまだしも、税金はそうではない。その合計額を見るにつけ、「これだけあったら何が買えるだろう」と考えるとタメ息が出てくる。ふるさと納税や医療費控除など利用できるものは利用しているが、それでも微々たるものである。

もちろん、税金は社会のためであることは重々承知している。身の回りのインフラもそうだし、治安維持や様々な保証など恩恵を受けているのは間違いない。税金なくして平和に暮らすことなどできないわけで、何ら異論はない。このコロナ禍では先日10万円の給付金をもらった。それはそれでいかがなものかと思わなくもないが、それでももらえれば嬉しいし、それも税金制度がしっかりしっているからであり、そのためにも税金はきっちり納めなければいけない。

それは誰もがわかってはいると思うが、それが「総論賛成各論反対」の最たるもので、他人にはしっかり納めてもらいたいが、自分が払う分はなるべく減らしたいと考えるのが人情。サラリーマンはともかく、商売をしている人は、「いかに税金を払わないで済ませるか」が最重要課題という人も多いだろうと思う。そういう人たちがみんな積極的に納税していたら日本の税収も2倍くらいになるのではないかと思ってしまう。消費税の増税ももしかしたら不要だったかもしれない。

「だからみんなもっと公共心を持って税金をより多く払うようにしよう!」というのが解決策かと言えば、本当にそうだろうかと思う。人間、お金を潤沢に持っていれば問題はないかと思えば、そうとは言い切れない気がする。自分の財布の紐はしっかり締めても人の財布の紐は緩めるのが人の常。税収が増えたら増えたで、もっと無駄遣いが増える気もする。それはともかくとして、税金を払いたがらないのは、「もっともっと」という人の気持ちの現れだと思う。

たとえば年収400万円の人が、「もっと収入が増えたら税金を払ってもいい」と思っていたとする。だが、その後500万円になってもやっぱり税金を払うのを惜しむだろう。500万円の人には500万円の都合がある。それが1,000万円になっても2,000万円になってもやはり同じだろう。かくいう自分も、ふるさと納税がお得だと知ればやるし(最も決断を下したのは腰の重い妻だが)、医療費控除の申告もきっちり計算してやっている。制度として認められた軽減策が利用できるなら必ず利用する。

考えてみれば、今は色々なボランティアがあり、また募金もある。クラウドファンディングなどお金を集める仕組みもいろいろである。だが、街頭で納税を呼び掛ける人はみたことがないし、税金なんかは間違いなく世のため人のために使われるものであるが、あえてたくさん納税しようとする人は少ない気がする(中にはそういう奇特な人もいるだろう)。集めなくても取るシステムが出来上がっているからでもあるが、みんなの意識も大きいように思う。

多大な借金が積み上がっている我が国の財政だが、最近はあんまり気にならなくなってきた。「子供達に借金を残す」という懸念もあるが、少子高齢化で、金持ちが使い切れないほどの財産を残したまま亡くなり、相続人がいないとなればそれは国庫へといく。そういう財産がこれから増えるようにも思う。お金持ちはみんな相続税軽減に血眼になっているが、それも相続人あっての話である。それで万事解決とはいかないと思うが、それでたくさん「残してくれる」人もいるかも知れない。

相続対策は昔から銀行員としてたくさん見てきたが、結果として借金をしすぎて失敗した人たちも見てきた。そういう経験からも、「納めるものは納めた方が結果的にはいい」という意識も持っている。幸い自分にはあまり縁はないが、せめて毎年の納税くらいは気持ちよく納めた方がいいと思う。どうせ払わなければならないのなら、気持ちよく払った方がいい。仕事でもそうであって、厳しい業績もあるが、変な節税策には手を出さない考え方でいる。

 結局、税金は儲けた以上にはかからないわけであり、社会貢献だと思って気持ちよく払うのがいいんじゃないかと思うようにしているのである・・・


Michal JarmolukによるPixabayからの画像 
【本日の読書】
 




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