2020年7月19日日曜日

人間の記憶

人間の記憶とは不思議なものだと思う。何か法則性があるわけでもなく、人によってマチマチ。自分自身のことで言えば、最も古い記憶は3歳ごろのもの。と言っても、2歳なのか3歳なのかは判然としない。ただ、4歳の時に引っ越しをしており、古い家に住んでいた頃の記憶がすなわち3歳頃までの記憶というわけである。武蔵小山商店街で迷子になったり、銭湯に三輪車で行って盗まれたり、テレビで『キャプテン・ウルトラ』や『黄金バット』を観たりしたものがある。

記憶も何が基準で残るのかもわからない。印象深い出来事が記憶に残るのはわかるが、何気ないごく日常の記憶が残っていたりする。すぐに自分で思い出す記憶もあれば、写真や人に言われて初めて思い出すものもある。あるいは人に言われても思い出せないものもある。まったく思い出せないものなど、人に「あの時、こうだった」と言われても自分の体験だとは思えず、他人の経験談を聞いているような気がして不思議なものである。そのメカニズムはどうなっているのだろうかと思う。

覚えているのは問題ないが、問題なのは忘れてしまうこと。自分の経験したことなのに忘れてしまうというのはなんだか悲しい。もう20年以上日記をつけているが、それも「忘れたくない」という思いもある。いまでも時折、過去の日記を読み返すが、読んで「ああそうだった」と思い出すものもあれば、まったく思い出せないものもある。日記は意識して時系列で出来事を描くようにしているが、それも己の記憶を思い出しやすくするためでもある。

映画はブログを書いている。ブログは普通だれかに見てもらうことを意識すると思うが、私の場合は、想定読者は自分自身のみである。すべて自分の記憶のためである。映画ブログ20071月の途中から始め、以来鑑賞した映画は現時点で2,244本になる。定期的に見直しているが、「こんな映画観たっけ」という映画が見事にある。あるいは観た記憶はあるものの、内容については忘れてしまっているものが多い。映画はまだしも、本になると忘却率はかなり高い。

歳をとると物忘れがひどくなるというのは確かで、最近人の名前を忘れるのはよくある。失礼に当たるので、なるべく忘れないようにとは意識するが、なぜこの人の名前が出てこないのだろうと、愕然となるケースもある。もう何年来の知り合いで、合えば親しく話しているのに、ある日バッタリ会うと名前が出てこない。人の名前ですらそうであるから、「あれ」とか「あそこ」とか名前が出てこないものとか場所とかはザラである。自分のことながら嫌になってしまう。

50歳で不動産業界に転職して、宅建とマンション管理士の資格を取ったが、勉強は大変であった。なにせテキストを見直すと、マーカーで印がついているが、誰がつけたのと聞きたくなることしばしば。若い頃は、一度見たらたとえはっきり覚えていなくても、「確かどこそこに書いてあったな」と思い出したものであるが、今は自分でマーカーを引いたのすら忘れていることがある。かつて神経衰弱では無敵を誇り、難関国立大学に合格した実績も今となっては影も形もなくなっている。

人間の脳も年齢とともに細胞が衰え、記憶容量も減っていくのだろう。記憶力の衰えは悲しい事実だが、それでも完全に忘れるわけではなく、正確に言えば「思い出しにくい」ということである。自力で記憶が呼び戻せないだけで、日記を読み返したり、ブログの記事を読み返したりすると記憶が蘇ってくる。つまり、忘れているわけではないわけである。引き出しにガタがきて飽きにくいものの、開ければそこにキチンと保存してあるわけである。これはかなり救いになる。要は思い出す手段を確保すればいいわけである。

資格試験は、対策として徹底した「反復作戦」を取った。重要項目はノートにまとめ、毎週末に必ず読み返す。「忘れたら覚える」。忘れても忘れても覚え直す作戦である。それとYouTubeを利用したビジュアル記憶。テキストで読むだけでイメージしにくいものはこうして映像で覚えることで克服した。もっとも合格した後はかなりの勢いで忘れていると思う。まぁ、実務では必ずしも記憶していなくてもなんとかなるからいいのではあるが・・・

今はまだいいが、この先怖いのは何と言っても痴呆だろう。自分が自分でなくなる。家族の顔でさえ忘れてしまう。そうなった時、果たしてそれは自分なのだろうかと思う。自分自身がそうなるのか、どうすれば避けられるのかはわからないが、最後まで自分自身は保っていきたいと強く思う。

そんな先のことまではわからないが、これからますます記憶力は衰えていくのだろうと思う。それに対しては、ひたすら「補助装置」を充実させていくしかない。観た映画、読んだ本、経験、それらをしっかりと記録していきたい。それで少しでも思い出せるのなら、それでいいではないかと思う。最後まで自分で自分の人生を振り返られるようにしていきたいと思うのである・・・

Free-PhotosによるPixabayからの画像 


【今週の読書】
 





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