2022年1月6日木曜日

論語雑感 雍也第六(その9)

論語を読んで感じたこと。解釈ではなくあくまでも雑感。
【原文】
季氏使閔子騫爲費宰。閔子騫曰。善爲我辭焉。如有復我者。則吾必在汶上矣。
【読み下し】
季氏(きし)、閔(びん)子(し)騫(けん)をして費(ひ)の宰(さい)たらしめんとす。閔(びん)子(し)騫(けん)曰(いわ)く、善(よ)く我(わ)が為(ため)に辞(じ)せよ。如(も)し我(われ)を復(ふたた)びする者(もの)有(あ)らば、則(すなわ)ち吾(われ)は必(かなら)ず汶(ぶん)の上(ほとり)に在(あ)らん。
【訳】
魯の大夫季氏が閔子騫を費の代官に任用したいと思って、使者をやった。すると、閔子騫は、その使者にいった。「どうか私にかわってよろしくお断り申しあげて下さい。もしふたたび私をお召しになるようなことがあれば、私はきっと汶水のほとりにかくれるでございましょう」
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 私は基本的に頼まれ事は断らない主義である。それは、「頼まれる」というところに相手の「お前なら」という期待を感じるし、それはありがたい事であるからである。自分に置き換えてみれば、誰かに何かを頼みたいと思った時には引き受けてくれそうな人、そして引き受けたことをきちんとやってくれそうな人を選ぶ。「頼まれる」ということは、そういう「相手のリスト」に自分が入っているという事であり、私の様に人付き合いがどちらかと言えば苦手な人間にとって、それは感謝すべき事だからである。たとえそれが雑用であったとしても、である。

 と言っても、実際すべて引き受けるかと言えば、なかなかそうも言い切れない。断る場合もあると思う。その最たるものは、やはり「自分には難しい」という事である。例えば、シニアラグビーで今のチームのキャプテンを引き受けてくれと言われたらまず断るだろう。それには「自分にはできない」という最大の理由がある。安易に引き受けても十分こなせなければ迷惑がかかる。そういうものを引き受けるのは、逆に無責任に他ならない。気持ちだけではどうにもならないものは断らざるを得ない。

 ただ、そこで難しいのは、頼まれるということは、仮にも相手の目にはふさわしいと映っていることであるということである。自分には無理だと思っていても、相手から客観的に見ればふさわしいと見えているわけである。「無理だ」と思っているのは自分だけで、案外やってみたらうまくいくということもあるかもしれない。逆の立場に立って見れば、十分ふさわしいと思う人に白羽の矢を立てると思うから、そのあたりは考えないといけないだろう(まぁ、そういう意味でもキャプテンを頼まれることはないと思うから安心していられる)。

 また、頼まれごとをやった場合、それまで知らなかった世界が見えるということもある。これまでやった中では、母校の財団法人のある社会人向け講座の世話役なんかがそうであった。今まで会うこともなかった人と関わり合い、自分なりの企画を立て、構想を練って実行するというのはいい経験になった。その後、転職した際にその時の経験が一部経営に役立ったと思う。声をかけてくれた人には感謝だし、また土台をきちんと作ったのでその恩は実績で返せたと思う。

 年賀状をもらうと、よく「飲み会を企画してくれ」というコメントが書かれているものがある。それもはっきり言えば、「自分はみんなと飲みたいが、企画するのは面倒だからお前がやれ」という裏のメッセージがはっきりしている。面倒な役割を押し付けられているのはありありだが、それでもその役を頼んでくるということは、少なくとも「期待」があるわけである。それも大事にしたいと思うので、コロナの様子を見つつ企画しようと思う。

 そういう考え方でいるので、頼まれごとを断固拒否する人の考え方には相入れないものがある。そこは考え方の違いであり、違いがあっていいと思うが、ただ「損をするなぁ」と思うだけである。自分の世界が広がることもないし、相手の友人リストの上位にいくこともない。もちろん、面倒は避けられるのでその時はいいだろう。それがいいと考える思考回路の人にはそれでいいし、私はそう考えないというだけのことであるから、それが悪いとも思わない。

 私が魯の閔子騫であったら、代官任用の話を迷わず受けるだろう。この短い文章だけでは前後の様子がわからないから何とも言えないが、もったいないと思う。もっとも、重要なポジションであれば、簡単に引き受けるというわけにもいかないだろう。私も今の会社で社長をやってくれと頼まれたら、やはりすぐには引き受けられない。社員の人心掌握という意味ではもう少し時間が必要だと思うし、簡単にできるものではない。ただ、その時が来たら、迷わず引き受けられるようにこれから働いていきたいと思う。これからもいろいろあると思うが、「頼まれる」ということを大事にしていきたいと思うのである・・・



【本日の読書】
  



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