2020年1月22日水曜日

全裸監督

 昨年、NETFLIXに加入して映画を楽しんでいるが、NETFLIXにはドラマもある。今は『ゴッサム』と『全裸監督』をそれぞれ交互に観て楽しんでいる。どちらも面白いのだが、特に『全裸監督』が面白い。これはかつてアダルトビデオで一世を風靡した村西とおる監督の自伝映画である。というと、エロ目線での興味かというとそうではなく、意外にもビジネスマン視点でのものである。当然ながら、それは村西とおる監督のアダルトビデオを観てもわかるものではなく、知られざる裏側の面白さである。

 村西監督であるが、勤めていた会社が倒産し、英語教材の営業マンに転職する。ところが訪問販売がうまくいかない。上司に叱咤され、できる営業マンに頭を下げて教えを乞う。その先輩にヤクザの親分の家に行けと言われ、それと知らずに訪問する。気付いた時には後の祭り。家に引っ張り込まれるが、腹を決めて親分に口八丁でセールスする。例の口調そのままである。そして見事親分に売り込むことに成功する。以降、一皮むけて才能が弾ける。そして他の追随を許さない成績を収める。

 不運にもこの会社も倒産し、ふとしたきっかけでビニ本(懐かしい響きである)の世界に入る。今よりもはるかにアダルト規制の強かった時代、人々の「見たい」という欲望を掴み、ギリギリの露出で販売攻勢に出る。たちまち販売店網を築き上げ、売りに売りまくる。既存勢力からするとこれは面白くない。買収を試みるが、失敗すると妨害工作に出る。当然、警察からもマークされる。既得権を守ろうとする勢力からすれば、ルールを無視した新興勢力は面白くない。一方、消費者のニーズを得た立場はやっぱり強い。

 目を光らせる警察の指導を守る既存勢力と、消費者ニーズを味方につけた新興勢力の争いである。法律問題が絡めば、それは消費者ニーズより優先されるのは当たり前。しかし、村西監督が必死に戦ったからこそ、規制の枠が広がったのも事実。今日のアダルトビデオは、表のものでも当時よりははるかに露出が多いと思う(たぶん)。そしていよいよ時代の流れもあり、戦場はビニ本からビデオへと移行する。仲間とともにビデオ制作会社を立ち上げる村西監督。そこからの行動も目を引く。

 ソフトな表現のビデオに物足りなさを覚えた村西監督は、何と大手の会社の契約女優を引っこ抜いて自分の作品に出演させる。あくまでもリアリティを追求する監督は、ついに女優に本番を持ち掛ける。当時は疑似行為であったわけであるが、よりリアルを追求するなら必然的に本番へと行く。周りのスタッフがまずいと制止するが、監督は情熱を込めて女優を口説いてしまう。結果は、ハイクオリティの作品が出来上がる。この作品で「駅弁」が登場したのかと感慨深い。

 そしていよいよあのわき毛の黒木香が登場する。監督自ら出演し、あの「笛」のアイテムも登場する。「ナイスですね」というあの独自の口調も勢いを増す。かつて観ていたビデオ製作の裏側が描かれるのはそれだけで興味深い。ビジネスマンとして成功するには、「考え方(マインド)」「情熱」「創意工夫」が三種の神器だと思っているが、監督はそれをすべて備えている。資金面を案じて制止する参謀を高い理想を掲げて説き伏せていく。この人はアダルト業界ゆえに白眼視されたかもしれないが、ビジネスマンとしても成功する素養を備えていると感じた。できる人間は何をやってもできるということである。

 村西監督が一世を風靡していたのは1980年代の後半。ちょうど私も20代前半の血気盛んな時代。ただし、ちょっと個人的な好みのストライクゾーンからは外れていたが、それでも随分とお世話になったところである。改めて振り返ってみると、現在では当たり前になった行為の数々が村西監督の作品発祥らしい。やっぱり「考え方」「情熱」「創意工夫」の三種の神器を備えている人は強い。改めてそのように思う。

 これからドラマの後半戦。ますます興味深く観ていきたいと思うのである・・・




【本日の読書】

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