2016年7月16日土曜日

憲法改正について思うこと

参議院選挙では、与党自民党を中心とした「改憲勢力」が参議院の2/3を超えた結果となった。これについて、早くも改憲のスケジュールを論じる声もある。また、諦めきれない護憲派は、今度は舞台を都知事選に移して熱い主張をしている。改憲と言っても、その議論の目標となっているのは「第9条」であり、これに対する日本人の思いは強く、さすがの安倍総理もすぐに第9条に手をつけることはなさそうな雰囲気である。

私自身は、解釈改憲には反対で、それを許していたら憲法なんて意味はなくなるし、従って今の矛盾している憲法は修正すべきだという考え方である。憲法は国の基本的な法律であり、義務教育を卒業した人なら誰でも読んで理解できるものでないといけない。従って、今の「読めば自衛隊は違憲」だと誰でもわかるような状態は、看過すべきではない。自衛隊か憲法か、どちらかを選ぶにせよ、とにかく解釈によって憲法の文言を捻じ曲げてはいけないというのが私の考えである。そして自衛隊はもはや現実的に廃止はできないので、だから「憲法は改正すべし」と考えるのである。

護憲派の人たちは、集団的自衛権は違憲だと主張する。「個別的自衛権で十分」などという意見を聞くと、片腹痛くなる。どちらも解釈改憲では五十歩百歩、「目くそ鼻くそを笑う」の世界だ。現状は違憲状態であるから、それはどちらにせよ正さなければならない。理屈で言えば、これ以上の説明は不要だと思う。護憲派の人がどんなに頑張っても、共産党のように「自衛隊廃止」という絵空事を主張する以外は、現状を正当化できないだろう。この点をつくと、大概の人は矛盾に目を瞑ってよしとすることを選ぶのではないかと思う。

そんな改憲派の私だが、護憲派が第9条を守ろうとする考え方はたぶんわかると思う。それは理屈ではなく、「平和の精神」とでもいうべきもので、理屈に合わないからといって第9条を廃止してしまったら、それこそその時々の政権や情勢の都合で再び過去の悪夢の再現となりかねないとでもいうものだろう。確かに、現行憲法が良い悪いは別として、足枷となりブレーキとなっている部分はあると思う。

たぶんそれはほとんどの人がなんとなく共有している感情ではないかと思う。私も理屈では改憲派であるが、そうした不安がないかと言えばそんなことはない。護憲派が主張するように「第9条があったから日本は平和であった」ということはないが、少なくとも危険なまでにアメリカに引っ張られることを回避してきたきたのではないかと想像する。その歯止め機能が、今やあちこちで矛盾と機能不全の原因となってきているのも事実で、だから改憲という強い動きになってきているのである。

そもそもであるが、第9条を作ったのは、戦勝国であるアメリカである。日本が二度と自分に刃向わないようにとしたもので、日本人が自ら望んだものではない。そして冷戦構造の中で、それが不都合になってきたアメリカが、日本に憲法を無視して再軍備させたところから矛盾が生じてしまっているのである。今、「中国の脅威」が盛んに謳われているが、それは世界を支配し続けようとするアメリカに対し、果敢に中華帝国の再興を目指そうとチャレンジしている中国の野望の表れであり、考えてみればわが国には迷惑な話である。

テロの脅威と言っても、それは元をただせばアメリカの世界支配が遠因であり、日本は平和路線をぶれることなく歩み続けているから、これもいい迷惑である。「第9条は押し付け憲法だから変えなければならない」と主張する人たちがいるが、押し付けであろうとなかろうと「良ければ良い」のであり、ずっとそのままにしておいて何ら困ることはない。それができないのは、ひとえに少しでも自国の利益を増やそうとする強欲な大国の影響なのである。護憲派の人たちに決定的に欠けているのは、この視点であろう。

当たり前の話ではあるが、日本がこの世界の中でどことも関わり合いを持たずにやっていくことは不可能なことであり、好むと好まざるとに関わらず、どうしても他国の影響を受けずにはいられない。憲法も国内問題のようでいて、実はそうではないと思う。終戦直後のように、二度と戦争をしませんと言って軍備を放棄したままでいられなくなったのも、すべて国際情勢ゆえである。そうであれば、時代に合わない考え方に拘泥することなく、危険な大国の狭間でいかに自分たちを守っていくか、その考え方にこそ重点を置くべきではないかと思うのである。

そんなわけで、個人的には「変える変えない」ではなく、「どう変えるか」の方に関心がある。それこそしっかり時間をかけて議論すべきことではないかと思うのである。「変える」ことのみに注意を奪われていて、気がついたらさらにおかしなことになっていたでは済まない。その意味では、「思考停止」とも言える護憲ではなく、「未来思考」の改憲の考え方を持っていたいと思うのである・・・
















【今週の読書】
 
    

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