2012年5月29日火曜日

工場見学にて

千葉県の某所にある取引先の工場見学に行って来た。
工場長の案内で一通り見学させていただいた。
いろいろと説明を受けたのだが、一番印象に残ったのは外国人研修生の話であった。
その工場では、インドネシアからの研修生を数名受け入れていたのである。

最初はありがちな違法就労かと思ったら、「外国人技能実習制度」という我が国の正規のルートでのきちんとした研修生だった。母国で2年間の語学研修を済ませ、来日後1ヶ月間は国の受け入れセンターで過ごして日本の生活に慣れ、その後で各企業に配属されるらしい。

工場の敷地内にアパートが建ててあって、そこで寝起きしているという。
工場長に案内されて彼らのそばを通った時、みんな笑顔で挨拶してくれた。
技能実習と言っても、やる事は建設資材の簡単な加工だから、どれほどの「技能」が習熟できるのかわからない。企業にしてみれば、どう取り繕うと安い労働力なのだろうと思う。
良いのだろうかという気持ちと同時に、若者を確保できない企業の悲鳴も理解できる。

工場の作業自体はそれほど大変だとも思えないが、屋内といってもほぼ吹きさらし状態の工場内は、エアコンなど効くわけもない。夏は暑く、冬は寒いだろう。直射日光と雨が避けられるだけだし、それでも一部は屋外作業もあるし、一日働けば汗と埃にまみれる事になる。いわゆる3K職場の典型だ。日本の若者が寄りつかないのも無理はない。

しかし研修生たちから見ると、そんな職場でもありがたいようだ。
何せ母国の給与水準からすると10倍の収入らしい。
仲間達とスーパーで食材を買っては自炊し、しっかり貯めているらしい。
3年間の期限限定ではあるものの、その間しっかり働き、母国に帰ったあと畑を買ったりする者もいると言う。そこには、搾取される不幸な労働者という姿はないようだ。

国で語学研修を受けて外国に行けるという事は、インドネシアではそこそこ学力の高い人たちなのだろう。なのに我が国に来て、我が国では同世代の若者がやりたがらない仕事をしている。そんな現実にいろいろと考えてしまう。それが我々の親たちが築いた国力の差というものの姿であり、我々はその恩恵に浴しているという事なのだろう。

帰り道、駅前にある巨大なパチンコ店が目に入ってきた。建物そのものよりも目についたのは、広い駐車場を埋め尽くす車。そこの周辺は当然車社会だから、みんな車で通っているのだろう。見るからに昼間っから大繁盛のようだ。若者たちは就職がないと嘆き、パチンコ店は昼間から大賑わい。一方で汗と埃にまみれて働くインドネシアからの留学生たち。うかうかしていると、そのうち追い抜かれる日がくるかもしれない。

まだまだ差はあるのだとしても、そんなところにあぐらはかきたくないものだ。
せめて自分は今の仕事を一生懸命やろうと思う。
せっかく親たちが築いた資産を、食いつぶさないようにしたいものである。


【本日の読書】

パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ - ジェフ・ジャービス, 小林 弘人, 関 美和   1Q84 BOOK 3 - 村上 春樹






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