ワールドカップが終了し、その余韻もまだ残る中、国内では大学と高校の全国大会の時期となっている。社会人のトップリーグはワールドカップの影響もあって、来年初の開幕である。大学ラグビーに関しては、一昨年まで大学選手権9連覇を達成した帝京大学が早くも姿を消している。高校や大学は、3年、4年で選手がすべて入れ替わる。どうしても勝ち続けるのは難しい。したがって、「選手の獲得」というのは大きなテーマであると思う。
詳しいことは知らないが、強豪チームであれば、学生の方から「あそこでプレーしたい」という動機から志望してくることもあると思うが、もちろん有望選手をスカウトするというところもあると思う。我が母校が所属する対抗戦Bグループでもまた然り、である。ただ、我が母校は国立大学ゆえにスカウトはできない。受験を潜り抜けてきた中から一生懸命勧誘するくらいである。一方、私立の大学ではスカウトに力を入れている大学もあって、忸怩たる思いを抱くこともなきにしもあらずである。
そう言えば、今年のワールドカップで残念ながらベスト8で敗退してしまったオーストラリア(前回大会では準優勝)は、捲土重来で、次期大会を見据えてチームの強化に取り掛かっているという。ラグビーの場合、3年居住すればその国の代表になれる(ただし、複数国の代表にはなれない)というルールがある。スカウトはオーストラリア国内にとどまらず、市民権と5,000万円以上の給料を餌に、南アフリカ、ニュージーランド、ポリネシア各国から有望選手に声を掛けているらしい。
ラグビーにとどまらず、高校野球でも中学の有望選手を集めている強豪校の話は耳にしているし、プロでなくてもアマチュアの世界においてもスカウトは、「勝つための第一歩」なのかもしれない。しかし、やはりそんなスカウトとは無縁の国立大学出身の私としては、やっぱりスカウトというのは、邪道という気がする。というより、そう思いたいと言った方が正確かもしれない。「そんなことを言っていては勝てない」と言われればその通りであるが、その中でなんとか勝つために努力する方を選びたいと思う。
先日、大学のOBの集まりで聞いた話は、そんな思いを強く裏付けるものであった。それはOB会費の件である。学生の活動には当然費用がかかるが、全額学生の個人負担というのは無理な話。OBがOB会費を納め、それを学生の活動の支援に当てているのである。我々も現役時代、それで助けられたので、今は半年ごとに1万円の会費を納めている。その納入率に話が及び、我がラグビー部OBの会費納入率は70%だとのことであった。実はこれが多いらしい。
ちなみに、同じ対抗戦Bグループの某私立大学では30%を下回っていて、金額的に比較すると我が部の1/4以下である。それではとてもスカウト費用を含めてチームの強化費が賄えないので、差額は大学側が支援しているという。我が母校はと言えば、大学側の金銭的支援は、大学施設に関するものを除けば、当然ない。その差は一体何だろうかと考えれば、それは自分たちの所属していたチームに対する愛情だろうと思う。腕を買われて勝つためだけの目的で集められたのではなく、厳しい状況下、自分たちで工夫をし、OBもそれを温かく支援し、勝ち負けだけにとらわれずに学生・OBが一体化している。そんな結果なのではないかと思う。
それを聞いて、その場にいた一同は改めて誇らしい気分になった。そもそも学生スポーツは、本来学業の傍らに行うものであって、学業優先の文武両道を目指すべきものである。学生生活のすべてを注ぎ込むものではない(それはあくまで理想であって、実際には我が母校とは言えどもそういう学生はかなりいるが・・・)。結果的にそうなったとしても、スカウトまでして選手を集めるものではない。学生スポーツとして、本来あるべき姿を我が母校は維持していると言える。
Thomas WolterによるPixabayからの画像 |
【本日の読書】
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