2013年3月9日土曜日

それをお金で買いますか

それをお金で買いますか 市場主義の限界 - マイケル・サンデル, 鬼澤 忍, 鬼澤 忍
 先日、マイケル・サンデル教授の「それをお金で買いますか」を読んだ。世の中、売り手と買い手が合意すれば、どんなものでも売買は成り立つ。もちろん、違法品の売買は論外だが、違法でなくても「そんなものまで売買するのか」と思うようなものが紹介されていて、ちょっと驚いた。

刑務所の独房の格上げ:一晩82ドル
インドの代理母による妊娠代行サービス:6,250ドル
絶滅に瀕したクロサイを撃つ権利:150,000ドル
主治医の携帯電話の番号:年に1,500ドル~
額(あるいは体のどこか)のスペースを広告用に貸し出す:777ドル
病人や高齢者の生命保険を買って、彼らが生きている間は年間保険料を払い、死んだ時に死亡給付金を受け取る:保険内容によって異なる

 アメリカを始めとした海外の例であるが、日本人的な感覚からすると、かなりの違和感を覚える。ただ、実際に自分が売買するかどうかは別として、発想としてはかなり面白いと思った。人の思いつかないようなものを発想できるかどうかは、もしも事業家になろうと考えている人であれば重要な要素だろう。事業家になるつもりはなくとも、そういう発想力は持っていたいものである。

 そう言えば、私がかねてから参加している社会人向け勉強会「寺子屋小山台」での講義で、「政治家を雇う」という発想が出て来た。三流の政治家しかいないと嘆く我が国民に対し、「有能な政治家を雇ってはどうか」という発想だった。今だったら、誰を雇うだろうか。日本人に限らなければ、海外の著名な政治家を連れてくるなんて考えてみると、結構楽しい想像かもしれない。

 また、雇うとは違うが、政治家になりたい人が票を買うというのはどうだろうと思う。もちろん、これは公職選挙法違反行為であるが、影でこっそりやるのではなく、堂々と公平にやったら問題ないような気もする。売買するとしたらいくらになるだろうと考えると面白い。まずは買収資金の総額がいくらかが重要なファクターだ。

それに当選に必要な票数。前者を後者で割れば、一票当たりの値段が出てくる。国政選挙だと百万票単位となるだろう。1票100円としても1億円。100円じゃバカらしいし、1万円くらいはと思うと資金は100億円必要になる。政治家になっても、よっぽどうまく立ち回らないとペイしないだろう。孫さんくらいなら、ポンと出せるかもしれない。

 あるいは、企業なら自社に有利な法律でも作らせようとしたら、100億、200億と出せるかもしれない。資金力の弱い人であれば、1万票クラスの市議会レベルでないと難しいだろうか。実現したら、候補者ごとに1票の価格がランキング表示されるかもしれない。選挙会場では、電光掲示板に候補者ごとの価格が表示されていて、出足の鈍い候補者が慌てて金額を釣り上げたりするかもしれない。資金力にもよるが、価格をいくらに設定するかはなかなか難しいところだろう。専門のコンサルタントが、跋扈したりするかもしれない。

 売る方はどうだろう。高ければ何でも良いと思うだろうか。自分だったら、どうするだろう。共産党あたりだったら、よっぽど高い値段を提示しないと売らないだろうな。価格の高過ぎる候補者は却って敬遠されるかもしれない。「あいつが政治家になったら危ない」と、まともな人なら思うかもしれない。そうすると、やっぱり人物本位になるだろうか。

 人によっては、堂々とお金は出しませんと言う候補者に潔さを感じて入れるかもしれない。そうすると、結局お金を出さない方に収斂されていくのかもしれない。くだらない事をうだうだと考えてみたが、マイケル・サンデル教授は相変わらず面白い示唆を投げかけてくれるものだと、つくづく思うのである・・・


【本日の読書】

サラリーマンは、二度会社を辞める。 - 楠木 新 四〇〇万企業が哭いている: ドキュメント検察が会社を踏み潰した日 - 石塚 健司






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