何事も考えてやるということは重要である。ただ闇雲にやればいいというものではない。我々の資本主義の世界は、考える者のところにお金が集まってくると思う。それはお金を生み出す方法然りであるが、それ以外でも、であるとこの頃つくづく思う。元勤務先の社長との法廷バトルではつくづくそんな思いにさせられる。先方は金に余せて弁護士を立てて訴えてきているが、こちらは「法律相談」で弁護士にアドバイスをもらいつつ、基本的には独力で対応している。「考えれば」高いお金を払わなくても済むのである。
弁護士も得手不得手がある。医者だって免許は一緒でも外科や内科などと専門に分かれている。弁護士だってそうだろう。こちらがラッキーだったのは、どうやら相手の弁護士が債権回収の経験があまりないのだろうというところ。訴訟は基本的にかつての勤務先とそのグループ会社間でのもの。私がかつて新規事業を展開するために設立するよう提案した会社を、首を宣告されたのを機にそのまま元社員4名と共に独立させたものである。その会社は、元の勤務先に借入金があったが、滞納した瞬間に(正確には3週間後に)訴えられたのである。
滞納した理由もカード不良のために振込ができなかったというもので、次の月末には払うと告げていたのであるが、面白くなかったのであろう、弁護士を立てて取り立てに来たのである。まるで闇金まがいの取り立て行為である。しかし、普通であれば、まずは預金の仮差押がセオリーであるが、相手の弁護士は債権者破産を申し立ててきたのである。いきなり仮差押をされていたら預金を押さえられてしまってアウトだったが、そうしなかったのは明らかに手落ちである。私も銀行員時代に債権回収を手掛けていたが、こんなお粗末なやり方はしたことがない。どうやら運はこちらにあると感じる。
裁判所から「審尋期日呼出状」なる仰々しい物が届いてさすがに焦ったが、冷静に「考え」、要は「破産状態にない」ということを裁判所に疎明するだけでいいのだと要点を理解した。一応、弁護士をしている後輩に1時間10,000円の費用で弁護士相談に乗ってもらい、準備をした。ネットで検索して「答弁書」を見よう見真似で書き上げ、当日持参。裁判官も弁護士もつけずに1人できた私に、相手の弁護士の発する法律用語を「わかりますか」と優しく翻訳してくれる。同席していた書記官も後でこっそりアドバイスをしてくれた。味方はしてくれないが、知らないことによる不利益がないようにしてくれたのである。
訴えた元勤務先の社長は、自分では基本的に考えない人であった。すべて任せて丸投げというタイプ。弁護士に対してもすべてお任せなのだろうと推察される。私であれば、まず弁護士には経験を問うところから始める。債権回収の経験はどのくらいあって、今回はどういう方法をとるのか。専門家だからと言ってそのあたりは怯まない。どういう方法を取り、それはどのくらいの効果があって、どういう風になると失敗するのか、そのあたりをじっくり聞くだろう。弁護士はあくまで「代理人」である。一応、「先生」とは呼ぶが、「代理人」は「代理人」である。主は自分である。
元社長は、目の前に出されたものを見て判断する思考方法。しかし、それでは思考範囲が限られてしまう。私はこうした目の前に出された物だけで考えるのを「井の中の蛙思考」、あるいは「条件反射思考」と名付けている。だが、物事を深く考えるにはこれではいけない。「それ以外に何かないのか」と考える。あるいは、「今がいいのか、後の方がいいのか」と考える。前者はいわゆる水平思考というやつだと思うし、後者は時間軸思考だ。人間誰しもたくさん知識があるわけではない。それでいてしっかり考えるためには、「それ以外に何かないのか」と問いを立て、人に聞き、自分で調べて可能な限り広い範囲で考えるしかない。
回転寿司にたとえれば、目の前に回ってきた中トロにすぐに手を出すのではなく、「これは握りたてか、そうでないなら個別にオーダーして握りたてを食べようか」と判断する(水平思考)。あるいは、中トロよりもその日のオススメの方がいいものがあるかもしれない。また、先に寒ブリやサーモンを食べてある程度食べてからにしよう(時間軸思考)かと考えるようなものである。もちろん、「チャンスの女神は前髪しかない」と言われるから、考える間に飛びつくのも大事だと思うが、それはケースバイケースで判断するつもりである。
裁判所は公平である。孤軍奮闘の私に裁判官が同情したわけではないと思うが、こちらの主張が受け入れられ、まずは破産認定は回避した。元社長が弁護士費用にいくらかけたのかはわからないが、たぶん100万円くらいはかかっているだろう。それに対し、こちらは法律相談を2回、合計2時間で22,000円。ホームページを見ると1時間あたり15,000円となっているから、「先輩価格」なのだと思う。「先輩の役に立てるだけで嬉しい」と言ってくれて、こちらも「費用は払う」と言っているが、いまだに請求書が送られてくる気配はない。
元社長は諦めきれずに次の「貸金返還請求訴訟」を提起してきた。これから法廷バトル第二幕。引き続き、弁護士は立てずに孤軍奮闘予定である。こういう経験も得難いものだと思う。あれこれと考えるのは楽しいことであるし、怒りという負のパワーに駆られてダークサイドに落ちないようにしたいと思う。金はないけど「考える」という武器はある。この武器をフル活用して法廷バトルを楽しみたいと思うのである・・・
Kai ReschkeによるPixabayからの画像 |
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