自営業を長らくやっていた父はその昔、「食いっぱぐれそうになったらタクシーの運転手をやればいいやと思っていた」と語ってくれた事がある。まだ日本に車が少なく、教習所の車も左ハンドルの外車を使っていた40数年前に免許を取った父。免許そのものが立派な資格だったためか、タクシーの運転手も「いざ路頭に迷った時」のセーフティーネットだったのだ。その影響で、私もしばらくはそんな考えを持っていた。
今国会で、タクシー事業への規制(運賃規制)を強める特別措置法案が成立しそうだという。これが成立すると、現在決められている運賃の下限を下回る運賃は、認可されない可能性が高いという。国交省の匙加減なので「可能性が高い」という表現なのであるが、「下限を下回る運賃を認めない」というのは、それにしてもいかがなものかと考えてしまう。
鉄道は独占事業だ。だから運賃に国が関与するのは当然かもしれない。だが、タクシーはそうではない。そうではない以上、自由競争にすればいいのだ。私企業の事業であれば、当然利益は意識する。赤字覚悟でやるはずもないし、不当に高ければ競争に負けるだけだ。国が運賃に口を挟む理由がよくわからない。
しかも「適正な原価に適正な利潤を加えたもの」というが、国交省に「適正な原価」がわかるのだろうか?「利益」という言葉は役所の辞書にはない。当然、「原価」だってそうだ。
規制緩和の結果、タクシー業界は過当競争でアップアップの状態らしい。運転手の条件も厳しいものだという。だから「格安タクシー」など、事業者が迷惑するような業者を排除しようというのだろうか。地域によっては料金の変わるタイミングを表示して、結果的に利用者に最適料金を提示できるメーターを開発した業者も出てきているらしい。そんな格安タクシーを排除する意図は何なのだろう?
昔タクシーが独占事業に近かった時代なら規制もわかる。今は免許だけはしっかり管理し、悪徳業者が入らないことだけしっかり見ていれば、あとは自由競争でいいのではないだろうか。「既得権益を手放さない役人」と言われても仕方ないような制度に思えてならない。もっともタクシー業界の人は大喜びだろう。当然だと思っているかもしれない。国がどちらのサイドに立つべきか、は難しいところだ。
はっきりしているのは、タクシーの運ちゃんも楽ではないという事だ。いざという時は、今だったらコンビ二でバイトだろうかと思うのである・・・
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