平日は毎日6時に起きて、髭を剃ったりゴミの日にはゴミを出したりし、ヨーグルトの朝食を取りながら朝の読書をする。それから出勤。電車の中では主にビジネス系の本を読み、仕事をして帰りには主に小説を読みながら帰宅する。両親のために食事の支度をして一緒に食べ、それから寝るまでの間、自由時間を楽しむ。「判で押したような」と言えば言える毎日を送っている。若い頃はそんな毎日を送るのは耐え難く、常に何らかの変化を欲していたが、今はそういう毎日を愛おしく思う。
そんな毎日を「つまらない」と言われるかもしれない。言われてもそれに対する反論は持ち合わせていない。ならばそういう毎日を諦めているのかと言われればさにあらず。そういう「判で押した」毎日こそが大事だと思う。もちろん、それだけで終わっているならいつか耐えきれなくなるのかもしれない。しかし、週末は好きな映画を観たりラグビーをしたりと平日とは変化があるし、年に数回は温泉に行ったりしている。そういう至福の時間も持てている。それで十分だと思う。
その昔、一緒に働いていた同僚は、一日の仕事が終わると、「今日も良いことがなかった」とボヤいていた。しかし、「悪いことだってなかっただろうし、それでいいじゃないか」と私は毎日心の中で反論していた。どこに焦点を合わせるかという話かもしれないが、私はどちらかと言えば「コップに半分“も”水が入っている」と考える方であり、「良い事がない」よりも「悪い事がない」方を選ぶタイプである。なので何の心配もなく夜布団の中で目を瞑る事ができる平凡な日々をありがたく思う。
そんな私だが、過去に何度か不安で夜眠れない経験をしたことがある。不安とは誠に厄介なもので、「(悪い事態が)起こるかもしれない」という予想であるが、実際に起こっているわけではない。されど起こった時の状況を想像するだけで苦しくなるものである。起きている間中、その不安が心から離れない。何をしても集中できない。ようやく夜、眠りにつくが、不安で眼が冴えたり、せっかく眠れても不安な夢を見て夜中に目が覚めてしまう。私の性格からして誰にも辛い心中を打ち明けられない。
逃げ出したくても逃げる場所はなく、12年前は毎朝近所の神社に行き、頭を垂れて心の平安を得ようとした。神頼みは意味がないと常日頃考えているが、神社の厳粛な雰囲気が心を落ち着かせるという効果をもたらした。その間、ブログも中断している。そんな心境ではなかったのである。5年前はそこまで酷くなく、会社の事業展開のために銀行借入の連帯保証人になる事になり、万が一の時には財産を失う恐怖に震えた。それなのに突然の社長の裏切りで失業に瀕したわけで、連帯保証の恐怖と失業の恐怖とがダブルで襲ってきたのだった。それでも「神に祈れ、だが岸に向かって漕ぐ手は緩めるな」というロシアの格言の心境が多少の救いになっていたところがある。
そうした経験を経て思ったのは、人生至福の経験も大事だが、こういう不安に怯える日々は過ごしたくないという気持ちである。夜中に不安な気持ちが高ぶって目が覚める事ほど耐えがたいものはない。人生山あり谷ありと言われるが、山低くとも谷が浅いに越したことはない。そこに重きを置くがゆえに、何も起こらない平和で平凡な日々が愛おしいのである。もちろん、山は高い方がいいが、富士山でなくても高尾山くらいがいくつかあるほどで十分だと思う。今年の夏休みも万座温泉に行ってこられたし、それが何よりである。
人を羨めばキリがない。友人知人の中には私よりも金を稼いでいる者がいるし、頻繁に海外旅行に行ったり、高級車に乗ったり(個人的にはあまり高級車には興味はそそられない)、夫婦仲が良かったり(これはかなり羨ましい)しているのを見ると羨ましいと思う。自分もできるだけ欲望に沿うように生きたいと思うし、そのための努力はしたいが、だからと言って足元の平凡な1日1日を嘆くつもりはない。ほとんど記憶にも残らないようなこうした平凡な毎日こそがありがたいと思う。
こうした心境は、「勝つ事よりも負けない事」を重視するものかもしれない。負けなければいいという考え方は消極的かもしれないが、勝つ事よりも重要だと個人的には思う。それは弱者の戦略かもしれないが、生き残り戦略としては正しいものの一つである。6600万年前の生物の大量絶滅期に生き残ったのは強いものではなく、むしろ弱いものであったようだし、自分が弱者であるとは思わないが、人に羨ましがられる強者でなくてもいいと言うのが正直なところである。何よりも心の安定を維持していきたいし、そこに重きを置くのであれば、平凡な毎日はそれを満たしている。
いずれ海外旅行にも行こうと思う。国内でも石垣島には行きたいし、非日常の楽しみは追及していきたい。そしてそのためにも心穏やかに暮らせる毎日を大事にしたいと思う。平凡な日々を恥じることなく過ごしたいと思うのである・・・





















