実家に戻って以来、週に1回家の掃除をしている。老齢の両親にもはや掃除の能力はなく、私がやっているが、平日にそれをするゆとりはない(世の働く主婦もそうなのだろうかと思ってみる)。それでも部屋に掃除機をかけ、トイレ、風呂、洗面所と水回りも含めて一通りやっている。改めて思うが、自分自身、トイレ掃除をしている自分の姿など若い頃には想像もできなかった。やれと言われても嫌悪感が先だっていただろう。しかし、今は嫌悪感はまったくない。それは自宅だからという事もあるが、自宅でなくても(少なくとも公共トイレではなく住宅用であれば)同様である。これは実績があるので断言できる。
そもそもトイレ掃除に抵抗がなくなったのは、前職の時である。銀行から社員10名の小さな不動産会社に転職し、長年の赤字体質を改善すべく、文字通り最前線に立つことになった。まずは余計な経費を見直すことから始めたが、そこで気づいたのが貸している部屋の外注管理費。これを内製化できれば経費はかからない。社内を見回せば社員はみなあくせく働いているわけではなくゆとりがある。そこで外注をやめて自分たちで直接管理することにした。そうすると、賃貸に出していた部屋が空いた時、ルームクリーニングをしなければならなくなったのである。
社員にはルームクリーニングの経験者もいるし、主婦という強力な潜在力を持った者もいた。そこで自分たちでルームクリーニングをやる事になった。もちろん、私も参加する。言い出しっぺであるし、率先垂範しないと「人に嫌なことをやらせる」だけのリーダーになってしまう。そして始めるにあたり、まずは役割分担であったが、当然ながら誰もやりたがらないのがトイレ。さすがの主婦も「よその家は・・・」と躊躇した。そこで私が引き受けることにしたのである。ここは自分がやらないと、内製化も軌道に乗らないだろうと思ったのである。
結婚して驚いたことの一つは妻がトイレ掃除をする姿。便器を抱くようにして隅々まで拭き掃除をする姿に感動すら覚えたのである。しかし、自分ではやったことがない。主婦の社員や経験者にあれこれと聞きながら取り掛かった。やってみればそれほど抵抗感はない。そしていつしかルームクリーニングでは、バス・トイレは私の担当に(ワンルームマンションでは一体になっていることから必然的に風呂も担当することに)なったのである。1つの転機になったのが、あるワンルームマンションのクリーニングであった。そこは独身男性が長年暮らした部屋であった。
女性であれば違ったであろうが、男は掃除をしなくても平気なところがある。ましてやトイレ掃除をやである。20年以上暮らしたであろうその期間に、おそらく掃除などしていなかったのであろう。便器の元の色はベージュ色だったが、中はどす黒く黒ずんでいた。私もそれを見て躊躇した。クリーニングではなく、リフォームで便器を交換しようかと考えた。しかし、そこでリフォーム費用とその後貸して稼ぐ家賃収入とを計算し、クリーニングすべしと経営面から判断し、覚悟を決めた。かなりに時間を費やして便器に手を突っ込みゴシゴシ汚れをこすり、最終的にはベージュ色の便器に戻した。
仕上がりを見て、自己満足に浸る。あれだけ汚れた便器をここまできれいにできたことに自分でも驚いた。そしてトイレを掃除することに抵抗感はまったくなくなった。トイレ掃除によって得られる効能を説いた本(『掃除道』)を読んだことがあるが、著者の考え方がよく理解できた。と言っても、『掃除道』の著者のように中国の公共トイレを素手できれいにするほどのレベルには程遠い。そんな達人レベルとはいかなくても、掃除そのものに対する抵抗感はなくなったし、(たとえ共同のであっても)トイレをきれいに使おうとする意識も芽生えたのは大きな変化であった。
ルームクリーニングでバス・トイレ掃除担当の仕事は、最後に会社から追い出されるまで続けた。社員のみんなはそれについて何も言わなかったが、たぶん自分がやらされなくても済んでいたことについては満足してもらっていたと思う。賃貸経営では「退去→クリーニング→入居」というサイクルをいかに早く回すかは重要である。当時、退去連絡が入ると、すぐにクリーニングの予定を入れ、その翌日から募集に入れていた(写真が用意できる部屋は退去の翌日から)。みんなは私が言い出すまでクリーニングなどやらなくて済んでいたのに、積極的に協力してくれた。それには私がトイレ担当を引き受けたことも影響したのではないかと密かに思っている。
トイレ掃除は仕事でも私生活でも私の意識を変化させたし、仕事でも一定の成果はあったと思う。少なくとも「言うだけ」「口だけ」の役員ではないと思ってもらえたと思う。今は実家のトイレ掃除だけであり、よそのトイレまで掃除しようとは思わないが、意識の変化は自分自身良かったと思っている。息子も結婚したら自分の家のトイレぐらい掃除するように意識をもっていければなどと考えている。私にはできなかったが、「夫婦仲良くいつまでも」を実現できるかもしれない。
あらためてトイレ掃除にはそんな効能があるのだと思うのである・・・
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