劇団四季の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観てきた。これまでもいろいろな舞台を披露してきた劇団四季であり、何をやるにしても驚くという事はなかったが、いつにも増して今回は興味津々であった。それは何よりも映像でこそ表現可能なSFの表現をどうするのかという部分である。さらに物語の重要アイテムは「デロリアン」、つまり車であり、狭い舞台の上でそれをどう見せるのか。走り回ることはないので、止まったままになるのだろうが、スピードをどう表現するのだろうかと疑問が湧いていた。映画の方は過去3回ほど観ており、面白い映画だけに内容も結構頭に入っている。そんな状態で、四季劇場「秋」に向かう。
相変わらず満席の劇場内。SF的な凝ったデザインの舞台が観客を迎える。定刻通りに物語が始まる。全体的にストーリーは映画をほぼ踏襲している。映画を3回も観たせいか(直近では4年前だ)かなり内容を詳細に覚えている。映画と違うのは、マーティーが誤って過去へと飛んでしまうくだり。映画ではドクがテロリストに襲われるのであるが、舞台ではプルトニウムの放射能漏洩という部分。大きなところではここだけだが、逆になぜここを変えたのか、その部分に興味が湧く。全体を観終わった感想としては、決して舞台で表現できないことはなかったと思うからである。
要所要所に歌とダンスが入るのはミュージカル的にしているからだろう。これはこれでいいと思う。実際に目の前で俳優が演じ、オーケストラが演奏する迫力は映画とは違う魅力を醸し出す。いわゆる「生の迫力」というやつで、映画の10倍近いチケット代の理由でもある。これはこれでいいと思う。この値段であるが、映画は元を作れば映画館やDVDや配信でたくさんの人に観てもらえるが、舞台は役者がその都度演じるので観客は限られてしまう。その分鑑賞費が高くなってしまうのは仕方ないだろう。こちらもたまにの贅沢である。
デロリアンも本物っぽくできている。かつてアメリカのユニバーサルスタジオに行った時、展示されていたデロリアンを見ていたく感動したものであるが、そこまでいかずとも雰囲気は十分に出ていて満足であった。時速88マイルで走るシーンは映像とうまくかみ合わせて迫力は十分。気になっていたSF表現はほぼストレスなく観ることができた。さすがだと思う。人間ドラマの方はほぼ映画を踏襲。主人公のマーティとドクと若き日の両親との絡みは馴染みあるもの。印象的なセリフもそのままであった。
気になったのは、セリフも映画をそのまま踏襲しているため、時代のずれによって理解できないところがあるのではないかというところ。例えば、物語の舞台となっているのは1985年であるが、当時のアメリカ大統領はロナルド・レーガン。そしてタイムスリップした1955年ではレーガンは役者である。30年後の大統領はと聞かれて、主人公のマーティは「ロナルド・レーガン」と答えるが鼻で笑われてしまう。売れない役者が大統領かという1955年当時ではあり得た反応であるが、どのくらいの人がその面白さを理解できただろうかと思ってしまった。若い人だとレーガン元大統領を知らないかもしれない。
アクシデントで30年前に戻ってしまい、そこで同じ町に住んでいた若き日の両親と出会うマーティ。タイトル通り「未来へ帰る」ことが必要だが、若き日の両親と出会ってしまったために、未来が変わってしまう可能性が出てくる。なんと若き日の母親にマーティが惚れられてしまったためであるが、歴史通りに両親をくっつけないと未来へ戻っても自分の存在が消えてしまう。そんなドタバタもストーリーの味付けとなる。主人公のマーティは学生だからティーンエイジャーであり、30年前の両親も同じくらいの年齢とすると、1985年では40代後半ということになる。今回あらためてそんなことを考えながら鑑賞した。
考えてみればこの映画は40年も前の映画である。公開当時、映画館でこの映画を観たが、40年後の世界など想像もしてみなかった。あの頃の自分が今の世の中を見たらどう思っただろう。まずスマホに驚いて喜ぶだろうなと思う。映画の配信にも満足するだろう。世の中の進歩には満足するかもしれないが、自分自身についてはどうだろうか。今の自分の姿を見て、40年前の21歳の私は満足するだろうか。残念ながらそちらの方はイマイチかもしれない。もっと何かできたのではないかと思う事ばかりである。
最後は恒例のスタンディング・オベーションだったが、立たない人も私を含めてチラホラ。となりのおじさんが座っていなかったら私も周りにあわせて立っていたかもしれない。過剰な拍手もどうにも好きになれない。いつもそうだが、ゆっくり座って余韻を楽しみたい私としては、どうもあの雰囲気は苦手である。舞台は好きであるが、あのわざとらしいスタンディング・オベーションだけは好きになれない。映画は静かに座って余韻に浸れるところが良い。まぁ、そんなところはあるが、また機を見て舞台を観に行きたいと思うのである・・・




















