2026年2月22日日曜日

論語雑感 子罕第九 (その23)

論語を読んで感じたこと。解釈ではなくあくまでも雑感
【原文】
子曰、法語之言、能無從乎。改之爲貴。巽與之言、能無說乎。繹之爲貴。說而不繹、從而不改、吾末如之何也已矣。
【読み下し】
いわく、ほうげんは、したがうことからんや。これあらたむるをたっとしとす。そんげんは、よろこぶことからんや。これたずぬるをたっとしとす。よろこびてたずねず、したがいてあらためざるは、われこれ如何いかんともするきのみ。
【訳】
先師がいわれた。「正面切って道理を説かれると、誰でもその場はなるほどとうなずかざるを得ない。だが大事なのは過ちを改めることだ。やさしく婉曲に注意してもらうと、誰でも気持よくそれに耳をかたむけることができる。だが、大事なのは、その真意のあるところをよく考えてみることだ。いい気になって真意を考えてみようともせず、表面だけ従って過ちを改めようとしない人は、私には全く手のつけようがない」
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 社会人生活の中で何よりも難しいのは人間関係であると断言できる。私も社会人デビューしてからずっとこれで煩わされている。うまくやれる人とやれない人とがいるが、その違いは何かと言われるとよくわからない(わかれば苦労しない)。しかし、上司からすれば自分に従順な部下は「愛い奴」とされ、何かあれば面倒を見てやろうという気になるのだろうという事は何となくわかる。逆に自分とは反対の意見をきちんと論理立てて反論し難く主張してくる者は「小生意気な」と思われるのかもしれない。私はどちらかというと、間違いなく後者だと思う。

 若い頃はそれこそ遠慮なく思うところをぶつけていたと思う。社会人2年目になった時、支店のレクリエーション係になった。ある時の事、休みの日でも関係なく役割を言いつけられるのに辟易し、正面から担当の役席者に反論した。「休みの日にはやりたくない」と。そして言われたのが、「仕事だぞ」の一言。それに対し、「仕事なら休日出勤手当は出るんですか!」と返した。その時の役席者の腹の中は煮えくりかえっていただろう。もちろん、理屈では私の方が正しい。正面切って道理を説かれたので、その方も一言も反論できなかった。

 そんなことを繰り返していると、心もだんだん疲弊してくる。そこで対立を避けるために考えたのが、冠婚葬祭。どうしても参加したくない休日の支店行事に際し、「友人の結婚式に呼ばれていまして」と何度使っただろう。友人の結婚式は親戚の葬式に比べて無数に使える良さがある。そうすると、相手も「仕方ないな」と思ってくれる。表面的な対立は起こらず、多少の良心の痛みだけで済む。誰でも気持ちよくそれに耳を傾けてくれる。今はそんなことをしなくても、そもそも休みの日に若手の意向を無視して駆り出すことなどできなくなっている。いい時代である。

 孔子の意向とは異なるかもしれない。しかし、会社では上司の意向には「しなやかに」対応する必要があると思う。たとえ内心ではおかしいと思っていても、直球で正面切って道理を説けば反発を招きかねない(もちろん、そんな「直球」を歓迎する寛大な上司なら別であるが・・・)。優しく婉曲に道理を伝え、「わかっていただく」ように工夫を凝らさないといけない。それでも意見が通らない場合は、「決定が下ったら従い、命令は実行せよ」(後藤田五訓)である。私の場合、上司は社長になるのでそこはきちんとわきまえないといけないと思っている。

 しかし、我が社には社長の同輩がいて、隠然たる力を持っている。長年の功績には揺るがないものもあるが、もはや老害と化していて社内でも苦虫を噛み潰す者も多い。正面切って道理を説くなど言語道断であり、優しく婉曲に言うしかない。ご機嫌さえとっておけば害はない。表面だけ従っておくのが賢い処世術となっている。孔子の考えからしたらまったくけしからん状態なのかもしれないが、しかしそれが今のところ有効なのだから仕方がない。「物は言いよう」という言葉もある。同じ事でも言い方は大事である。礼儀があるのは当然だが、正面切って道理を説く前に相手を見る事が重要である。

 さて、翻って自分はどうだろうと思う。正面切って道理を説く部下を疎ましく思い、優しく婉曲に注意する者を愛い奴と愛でていないだろうか。今のところ大丈夫なような気がしている。正面切って道理を説く者はむしろ歓迎で、こちらも正面切って道理を説き返すつもりがある。婉曲な表現はむしろ嫌いで、「言いたいことがあるならはっきり言え」というくらいである。そのスタンスは維持したいと思う。怖いのは己自身が老害になること。人の振り見て我が振り直せで、意識したいところである。

 孔子の説く意見とは異なるかもしれないが、そんな感のある今回の言葉。良き上司であることを意識しつつ、もういい歳だし、賢く振る舞いたいと思うのである・・・


Toshiharu WatanabeによるPixabayからの画像


【今週の読書】
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