2011年3月31日木曜日

休止中のATMに思う

日中仕事で外出して、ふと思い立って駅の改札口横にあるATMに立ち寄った。
確か改札口の横にあったなと記憶していたのだ。
ところが、あるにはあったが休止中だった。
張り紙には「節電のため」と書かれていた。
まあ仕方ない。

その時なぜだか、社会人3年目くらにの時に行った香港の事を思い出した。
香港支店に赴任していた先輩を訪ねて遊びに行ったのだ。
香港の街並みは興味深かったが、私も銀行員とあって、何より興味を惹かれたのは現地の銀行。
そして一番印象に残ったのは、街中にある24時間営業のATMだった。

当時日本では、ようやくATMが夜何時まで開いているという状態だった。
24時間営業のATMなど一台もなかった。
先輩にさっそくその疑問をぶつけてみた。
なぜ、香港で可能な24時間ATMが日本ではできないのかと。
そうしたら、24時間と言ってもよく札切れで使えないのはザラなのだと言う。
現地の人は、使えなければ使えないで他へ行くのだと言う。

だが、そんな事だと日本ではクレームものだ。
常にきちんと稼働しているのが当たり前だ。
ただ機械を動かすだけではなく、常に「サービスを提供しなければならない」のである。
そうした体系作りが必要なので、日本に24時間営業のATMが登場したのはずっと後になってからだった。

その時は、「日本人は何て子供なのだろう」と思った。
手取り足とり面倒を見てもらわないといけないなんて、と思ったものだ。
しかしあとから考えれば、そうした過剰とも言えるサービスを当然とするカルチャーが、日本の製品やサービスが高い品質を保つ原動力となったのである。
電車は常に時間通りに運行し、ATMはいつでも稼働し何かあれば電話ですぐに係員が駆けつけてくる。徹底した製品やサービスは、Made in Japan のブランドを燦然と輝かせている。

そうしたハイクォリティなサービスも節電の前に暗くなってしまっている。
間引き運転で朝は身動きも取れないラッシュに揉まれ、気軽に立ち寄れたATMは沈黙。
駅の構内も会社のトイレや食堂も薄暗い。
原発に頼らないようにするためにも、今後はこういうのも仕方ないのだろうかと思わず考えてしまう・・・

しかしなあ、と一方で思う。
こういう不便な状態から、またあれこれ考えるのも日本人なのではないだろうか、と。
ちょっと前までは、細り続ける家計を前に、省電力の家電製品が次々と発売されていた。
それらはこれからは、もう一つの節電という役割を担うために今後も開発され続けるだろう。
ディズニーランドは自家発電の方向に動くようだし、すでに電力の自由化で自家発電能力のある企業も増えている。一般にも小型のハイスペックな発電機なども売られるようになるかもしれないし、太陽光や風力などにもこれまでのエコ目的だけではなく、拍車がかかるかもしれない。

ピンチに嘆くばかりでなく、それを商売のネタにしてしまう逞しさも日本人にはある。
これから世界が驚くようなものを生み出していくのかもしれない。
スリーマイルで原発がストップしたアメリカ。
国内電力の8割を原発が生み出すフランス。
さて日本はどこに行くのだろう。
何だか楽しみな気もするのである・・・


【本日の読書】
「こんな言葉で叱られたい」清武英利
「フリーター家を買う」有川浩
     

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