【原文】
朝與下大夫言、侃侃如也。與上大夫言、誾誾如也。君在、踧踖如也、與與如也。
【読み下し】
朝にて下大夫と言うときは、侃侃如たり。上大夫と言うときは、誾誾如たり。君在せば、踧踖如たり、与与如たり。
【訳】
朝廷で、下大夫とは、心おきなく率直に意見を交換され、上大夫に対しては、おだやかに、しかも正確に所信を述べられる。そして国君がお出ましの時には、恭敬の念をおのずから形にあらわされるが、それでいて、固くなられることがない。
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人に対する態度という事に関しては、いずこも「目上」「同輩」「目下」に対するものがあるだろう。上に対しては丁寧、同輩に対しては対等、目下に対しては気軽というのが大まかなイメージである。ここで言う下大夫とは自分より身分の低い者、上大夫とは逆に身分の高い者という事なのだろうと思う。会社でも上司に対しては一目置いて接するだろうし、部下に対しては気軽に接するだろう。上司に対しては遠慮して言えないことも、部下になら気兼ねなく言えるという事もある。
孔子のそれは、下の者に対しては威張ることなく意見を言いやすい雰囲気を作っており、上の者に対しては遠慮なく自分の意見を言い、トップに対しても敬意を示しつつ、卑屈になることもないという態度だったのだろう。まさにあるべき姿であるように思う。銀行員時代、上(部長)の顔色を常に伺っていた上司(課長)がいた。判断基準は常に「部長がどう思われるか」であり、自分の意見はないように思えてならなかった。自分の意見がないから、私から意見を求めて相談してもあいまいな答えしか返ってこない。私には不満しかなかった。
しかし、かと言って下に威張ることがなかったのは良いところだったと思う。考えようによっては上司の意向を汲んで判断することは悪いことではない。むしろあるべき姿と言えるかもしれない。私だからかもしれないが、意見を言いやすかったのはその方の良いところでもあった。下の者に対しては壁を作らず何でも言いやすい雰囲気を作ることは大事なことである。その方はその点ではありがたい上司であったのである。ただ、上に対しては、自分の意見を主張するという事がなかっただけである。
社長の前ではもみ手ですり寄っていくというのは、昭和の時代のサラリーマンのイメージであるが、今でもそういう人はいるのかもしれない。会社のトップとなれば、人事権を持っているのである意味絶対権力者である。粗相があってはいけないし、上手く取り入れれば出世もできる。そう考えると、もみ手ですり寄るのは正しい戦略かもしれない。ただ、傍から見ていてみっともないのは確かである。絶対権力者の前でも男であれば堂々としていたいものである。私は昔からそういう事をしたくないタイプであり、媚びを売る意識は今もない。
ただ、会社での絶対権力者に対しては、「最終決定者」という意識で臨んでいる。すなわち、良かれ悪しかれ最終的な判断を下すのは社長であり、「決定が下ったら従う」(後藤田五訓)という信念から、たとえ己の意思に反しても従うのである。いつだったか、社長が取引銀行との付き合いで個人の定期預金を作ることになった。社長だからかなりの金額の定期預金だったが、「もしも会社の金を貸してくれと言ったらどうする?」と社長に問われた。それに対し、私は「何とかします」と答えた。社長はその答えに不満そうであった。
社長は私に財務の責任者として、たとえ社長であってもそういう時は断ってほしいという気持ちだったようである。私は別に媚びを売ったつもりはない。もしも使途が「フェラーリを買う」だったら答えは「No」だっただろう。使途が「銀行との付き合い」だからこそ、何とかしようと思ったのである。会社のために使うのであれば何とかしないといけない。だが個人の楽しみなら違う(もっともはっきり「No」ではなく、のらりくらりと言い訳をしてお金がないと言ってごまかすだろうが)。
トップに対して卑屈になることなく、堂々と対応したいのは当然であるが、考えてみればそれはトップの人柄にもよるのかもしれない。気に食わない者をどんどん排除するようなタイプであれば、私もそんなことは言ってられないかもしれない。今となれば年齢的にも職を失えば大幅な収入減は避けられない。有無を言わさず「フェラーリを買うから会社の金を使う」と言われれば従うしかないかもしれない。そういう意味では、今の私が置かれた環境は、恵まれた環境であるとも言える(今のところは)。
考えてみれば、人に対する態度も相対的なもの。相手次第で変わってしまうところは否めない。生意気な部下であれば、私も心中穏やかでいられないかもしれない。自分の信念に基づく態度ではあっても、そういう相対性のものであると改めて思うのである・・・
【本日の読書】


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