2025年10月30日木曜日

企業で働くとは

 現在、若手の社員の扱いに頭を悩ませている。勤務は真面目で特に問題はないのであるが、問題なのは「休みが多い」ことである。体調不良と言われると文句は言えない。しかし、その日数が多いのは問題である。有給休暇を使い切ると、あとは欠勤になる。欠勤になれば給与もカットになる。「働かざる者食うべからず」ではないが、働かない以上、給料を払わない(欠勤分を減額する)のは当然である。社労士さん曰く、❝No work,No pay❞の原則らしい。給料を減らすのであれば問題ないかと言うと、そうでもない。休めば当然周りに負担をかけることになる。

 休む本人はいいかもしれないが、その本人が本来やるべき仕事は周りの者がやらないといけない。1日、2日ならいいが、1週間となると先送りできない仕事もある。月末月初等で限られた期限の中でやらないといけない仕事は、本人が出てくるまで待っているわけにもいかない。誰でもできる仕事であればまだしも、特定の人しか精通していない場合、その人の負担は過大になる。取引先との折衝があるような場合は、取引先との信頼関係にも支障をきたすから、担当にもつけられなくなる。

 そもそもであるが、会社と社員は「雇用関係」にあり、入社時に「雇用契約」を取り交わしている。会社と社員は契約関係にあるわけである。平たく言えば、「これだけ働けばこれだけ払う」というものである。「これだけ払う」は給料であるが、「これだけ働く」のは(日本の場合=我が社の場合も)明確にはなっていない。基本的に「土日祝日を除く平日に働く」のが原則で、せいぜい年間付与される有給休暇の日数が「休んでよい範囲」と解釈できる程度であろう。つまり、有給休暇(それ以外に特別休暇があればそれも含めて)の日数が休む事が認められる範囲だろう。

 有給休暇を超える日数を休むということは、すなわち「契約違反」であり、したがってその分給料を減らす事になる。契約違反は契約解除につながるものである。さすがに1日でも欠勤があったら契約解除ということはないが、「度を過ぎれば」当然ありうる話である。今の時代、会社は簡単に社員を首にすることはできない。それはそれで良いことだと思っているが、社員もそれに甘えていて良いということもない。契約という形で働く約束をした以上、社員の方も意識を持って働かないといけない。

 入社前には社員に健康診断を義務付けている。普通、あまりその意味を考えていないかもしれないが、健康であることの証はすなわち、決められた日数働けるということの裏付けである。もちろん、健康面で会社が配慮するべきことがあるかどうかという確認もあるかもしれないが、基本はそうであろう。件の若手社員は欠勤日数の合計が2か月近くにもなる。それだけ休まれると少しでも責任のある仕事は任せられなくなる。結局、行き場を失って私の下(人事・経理・総務部門)に来たが、勤怠状況は変わらず、今や完全に「お荷物くん」になってしまっている。

 そのお荷物くんであるが、根底には「甘え」があるように思う。「契約」関係を意識せず、体調不良であればいくら休んでも仕方のないことという「甘え」。欠勤があれば給料をその分減らされるが、それさえ我慢すればいいことという「甘え」。今の時代、「這ってでも出てこい」という事はできないが、「這ってでも出ていく」という気構えはあってもいい。否、ないといけない。もしも業務で重要な仕事があり、休めばお客様に迷惑がかかるという状況になったらどうするのか。もしも、「這ってでも行けない」くらいであれば、せめて全力で誰かに代わりを依頼しないといけない。

 彼はそういう部分での信頼性を失っていることにも気づいていない。その昔、野生に近い原始社会では、人は狩猟や農耕の労働をしなければその日の食べ物を得られなかったはず。体調が悪いと言って何もしなければ空腹を我慢するしかない。それは人間の、というより生物の宿命であり、大原則である。人類は高度に発達した社会を築き上げ、相互扶助の仕組みもあって働けなくても生きてはいけるが、大原則を忘れてはいけない。理由はともあれ、(決められた日数を)働けないのであれば、退場するしかない。

 会社は働かなくてもサポートしてくれる組織ではない。お金のために働くという契約を交わした集団であるから、働かない(働けない)のであれば、組織から退出しないといけない。そこが家族とは違うのである。件の彼にもそんな話をしてきたが、いよいよ最終的な話をする段階にきている。残念ながら、みんなの稼いだお金を無駄に使うわけにはいかない。お荷物くんを食べさせていくわけにはいかない。厳しいようであるが、レッドカードを出すべき時が来ている。これもお役目と心得てその役を果たさなければならないと思うのである・・・


PDPicsによるPixabayからの画像

【本日の読書】

全体主義の起原 新版(1) ハンナ・アーレント  一度読んだら絶対に忘れない生物の教科書 - 山川 喜輝  黛家の兄弟 (講談社文庫) - 砂原浩太朗





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