2025年10月22日水曜日

ワークライフバランスとは無縁の仕事

 日本初の女性総理大臣として高市早苗自民党総裁が選出された。私は自民党の支持者ではないが、女性先進国のアメリカとフランスでもまだ女性の大統領が誕生していないことを鑑みると喜ばしいことであると思う。それに先立ち、自民党総裁に選出された際のスピーチで「ワークライフバランスを捨てる」と発言したことについて賛否が分かれているという。とある調査では「ポジティブに受け止めた53%、ネガティブに受け止めた29%」となったようである。この時代にあって概ね好評だったのは好ましいことだと思う。

 ただし、ダイヤモンドオンラインには『「働いて働いて働きまくるリーダー」が部下を不幸にする決定的な理由』というネガティブな意見が表明されていた。いろいろな意見があっていいと思うが、その違いはどこからくるのだろうかと考えてみた。私自身は総理大臣たる者は、国のために働くということを全国民から付託されているわけであり、「24時間働く」のは当たり前だと考えている。そこにはワークライフバランスなど入る余地はなく、それを堂々と表明した高市新総理には拍手を送りたいと思う。

 しかし、先の記事を読んでいくと、それをネガティブにとらえる理由は「誰か(特に影響力のある上司など)が長時間労働をすることは、周囲の部下や同僚の労働時間を長くし、彼らの幸福度を下げてしまう可能性がある」ということのようである。つまり、本人はいいけど部下が長時間労働を強いられるということが否定の理由であるようである。もっともな意見であると思うが、これも考え方だと思う。国民全体のことと部下のこととを比較してどちらを優先すべきかという問題で、著者は部下を選択しているだけであり、そういう考え方もあると思う。

 ただ、こういう場合、私は可能性の話で反対するのではなく、メリットデメリットを考慮し、メリットの方が大きければデメリットを最小化する方法で乗り切ればいいのではないかと考えるタイプである。つまり、部下が長時間労働に苦しまなくて済む方法を考えればいいのではないかと思うのである。これは何事であれ同じであるが、目的(メリット)とリスク(デメリット)を比較し、メリットが大きければデメリットを最小化してやる方法を考えればいいだけのことだと思う。「デメリットがあるからやらない」というスタンスでは、当たり前だが何事もなしえない。

 そもそもであるが、考え方の違いには「見えている景色の違い」もあると思う。ワークライフバランスは主として「従業員目線」の考え方である。もちろん、それ自体悪くはなく、むしろ大事なことである。しかし、一方で経営者目線で考えると、そこにあるのは24時間働く覚悟の有無である。経営者であれば(特に社員を雇っていれば)、会社を存続・成長させるためには全精力を傾けるものであり、そこにワークライフバランスという概念はない。もちろん、だからといって社員に長時間労働を強いるのは違う。総理大臣は会社経営者よりはるかに大きな責任を負っているのでなおさらである。

 おそらくダイヤモンドオンラインの記事を書いた方は従業員目線での意見を述べたのだろう。日頃から何をどう考えるかというところには、普段からの「目線」が影響する。従業員目線で見ている人は、必然的に物事をそういう目線から見て判断する。高市総理の発言を聞いて、従業員目線で重要なワークライフバランスを脇に除けるような発言を危ういものと判断したのであろう。私はと言えば、先にも述べた通り総理大臣の辞書にはワークライフバランスという言葉は載っていないと考えるので、まったく問題を感じないし、むしろ当然だと考える。それはどちらが正しいという問題ではなく、「目線」の違いと言えるだろう。

 一般的に何かを考える時に、メリット・デメリットの比較と代替案の発想は大事だと思う。メリットよりもデメリットの方が大きい時はそれをやる意味はないだろう。また、代替案の発想も大事だと思う。ただ、「〇〇だからダメ」で終わってしまうと、やはり物事をなしえないという結果に終わってしまう。「どうしたらできるだろうか」という創意工夫の発想でデメリットを最小化することができないかという思考が、なしえる何事かにつながっていくと思う。ダイヤモンドオンラインの記事は、デメリットに気づかせてくれるという意味では大いに意味のある内容であった(私もその視点には気づかなかった)。自分と異なる意見にはそういう気づきも含まれていたりする。

 それにしてもダイヤモンドオンラインがこういう記事を掲載するということは、こういう視点で物事を考えるスタンスだということなのだろうと思う。賛否両論が掲載されていると、それぞれの意見がわかって思考訓練になると思う。しかし、残念ながら新聞も含めてメディアは自らの意見を押し付けるところがあり、常々そこは残念に思う。まぁ、自分で考えるトレーニングになるという意味ではいいのかもしれないし、そう思うことで納得するようにはしている。高市新総理は特技が徹夜だという。それはどうかと思うが、女性ということだけが話題で終わるのではなく、国民のために大いに成果を挙げていただきたいと思うのである・・・


Suman MaharjanによるPixabayからの画像

【本日の読書】

全体主義の起原 新版(1) ハンナ・アーレント  一度読んだら絶対に忘れない生物の教科書 - 山川 喜輝  黛家の兄弟 (講談社文庫) - 砂原浩太朗




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