2018年3月25日日曜日

コストか投資か


もう数年前のこと、同窓会の幹事をしていて同窓会の活性化案をいろいろと考えたことがあった。活性化のために必要なのはまず人を集めること。それも年に1回の総会に人を集めることと考えた。そこでまずネックになっていると考える「会費(6,000)」を無料にすることを提案した。今はちょっと居酒屋へ行っても4,000円もあれば十分楽しめる。わざわざ6,000円も払ってくるのは、よほど好きな人か参加するのが定例行事と化している人ぐらい。だから来るのはいつもの固定メンバーと化していたのである。

新しい人を呼び込むのにまずは会費という壁を取り除こうと、私は総会の無料化を提案した。無料であれば、少なくとも2つあると私が考えていた大きなハードルのうち1つは消える(もう1つは「知り合いがいない」だ)。そこで考えたのは、総会の経費を「コスト」ではなく、「投資」と考えること。「コスト」であればどうしても消極的になるが、活性化策に対する「投資」と考えるなら納得性もあるだろうと思ったのである。ところが、「タダで飲み食いするのはけしからん」等の意見が主流を占め、私の考えは理解されなかった。

「投資」であろうと、「コスト」であろうとお金が出て行くことには変わりない。要は考え方の違いなのであるが、どう考えるかは重要ではないかと思う。もし、皆が「投資」と考えてくれていたら、「タダで飲み食いするのはけしからん」という発想は出て来なかっただろう。あれから何年も経過しているが、同窓会総会への参加者は依然として増えていない。同じことは、企業においても言えると思う。例えばそれは人件費である。

人件費は管理会計上は販管費に分類される。つまり「コスト」である。コストである以上、できるだけ抑えようと考えるのは当然の経営発想である。けれどこれを「投資」と考えると、また考え方も変わる。例えば私の勤める中小企業でも、現在来年度の社員の給料を少し上げることを提案している。ここのところみんなの働き方も変わってきていて、よくあるように「言われたことだけをやる」というスタイルではなく、自分なりに工夫して「プラスαの働き」をしてくれるようになっている。それを評価して、さらなるモチベーションアップにしてもらえたら、との考えからの提案である。

と言っても、社員総数10名の中小企業である我が社では、給料のアップといってもたかが知れている。今回私の提案している案は、年間の金額に直すと30万円である。1人あたり数千円の世界である。もちろん、給料は一年だけのことですまない。それがずっと続くわけであり、10年としても300万円である(平均年齢の高い我が社では、あと10年働く人が果たしてどのくらいいるのだろうという感じである)。この金額をどう考えるか、である。「コスト」と考えるなら、私もちょっと考える。しかし、「投資」と考えれば抵抗感は少なくなる。

同じことでも考え方を変えると結論も異なる。例えば今回我が社では、ある販売用不動産の売れ行きが悪く、思い切って500万円価格を下げようと言う意見が出てきた。どうしようかと迷っていたら、買い手がついて、結局200万円下げただけで契約できた。差額の300万円は失わずに済んだわけである。不動産を売るとなれば、500万円ものディスカウントを一気にやろうとする。「戦力の逐次投入は愚策」と社長は考えたのであるが、それはそれなりに正しい。しかし、値下げした分は永久に失われるわけである。

それに比べれば、社員のモチベーションアップにつながると考えられる投資300万円について渋るのは理に適っていない。少なくとも、一瞬で失われてしまう値下げよりも確実に会社にプラスになって残る。どうせ使うのなら、こういうお金の使い方をするべきだと個人的には思う。お金の使い方はいろいろである。どうせ使うのなら、それが「コスト」なのか「投資」なのかを考えてみる必要はあると思う。その場で消えてなくなってしまうものなら「コスト」であるし、後でリターンとして戻って来るのなら「投資」である。

何事につけそうした意識を持ち、「コスト」であるなら抑制的に考えればいいし、逆に「投資」と考えるべきものを「コスト」としてしか見れないようなことは避けたいと思う。そうした見る目を持ち続けたいと思うのである・・・




【今週の読書】
 
    

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