2026年6月7日日曜日

良い赤字と悪い赤字

 現在、会社は決算に向けて非常に厳しい状況にある。売上が計画通りに伸びていかないのである。前期は最終的に黒字で終わったものの、営業利益ベースでは赤字であり、今期は何としても営業利益ベースで黒字を計上しないといけないのである。ところで、なぜ黒字を計上しないといけないのであろうか。逆に言えば、なぜ赤字は悪いのであろうか。「そんなのは当たり前ではないか」というのは簡単。だが、なぜだろうか。赤字とは、すなわち経費が売上を上回っている状態である。会社からお金が流出していく状態である。それは企業の存続に関わる問題であるから「悪」なのである。

 では、企業の存続に関わらないものであれば良いのかと問われればその通りである。企業の存続に関わらない赤字とは、例えば「一時的なもの」、「金額の小さいもの」等が挙げられる。そもそもであるが、企業の存続に必要不可欠なものは何かと問われれば、私は「現金」であると思う。企業は現金があれば赤字でも存続できる。逆に現金がなければ黒字でも存続できない。いわゆる「黒字倒産」と言われる状態である。つまり、赤字か黒字かよりも現金があるか否かの方が重要であると思う。

 赤字のメリットとしては税金(所得税)がかからないということがある。その昔、親父がまだ自営業をしていた頃、私が税務申告を引き受けたことがあった。それまでは税理士に顧問料を払って税務申告をしてもらっていたが、ある時決算書を見せてもらったところ、一目で「手抜き」がわかった。おそらく、事務員か何かに適当にやらせていたのだろう。私は渋る親父を説き伏せて税理士との契約を打ち切り、自ら税務申告を買って出た。まずやったのは親父の給料を下げることであった。

 親父が1人でやっていた印刷業であるが、形式上は法人化していて、親父は役員報酬をもらっていたが、会社は大赤字。その主要因は高すぎる役員報酬。そこで役員報酬を引き下げて利益をトントンにしたのである。こうしたことで、親父の個人の所得税が減り、結果的に手元に入る現金が増えたのである。会社は元々赤字で法人税を納めていない。実態は個人事業主であり、会社も個人も財布は同じ。トントンになってもそれは変わらず。ただ収める税金と税理士への報酬だけが減った次第である。本当は税理士がやるべきことであるが、手抜きすれば顧問先を失うのは当然である。長年の慣れによる怠慢である。

 一方、赤字のデメリットは銀行の融資を受けられないことである。逆に銀行から融資を受ける予定がなければ赤字でもいいわけである。大事なことは現金が残っているか。それがどこであってもいいわけである。親父の会社の場合は、親父個人に残るようにしたので、会社には最低限の現金があればいいのである。これがグループ経営の場合、グループ企業に現金があればグループ企業すべてが黒字である必要はない。銀行融資を受ける予定のない子会社なら赤字でも構わないわけである。

 もちろん、すべての会社が黒字でウハウハなら問題はない。ただ、「とにかく赤字はダメ」という思考停止はよくない。きちんと現金があるかどうかがまず大事。それが大丈夫であれば、大事なのは赤字か黒字かではなく、企業の存続に必要な現金があるかどうか。そこを間違えないようにしたいところである。前職では経営素人の社長が自らの経営で膨らんだ赤字を指して、「親父から株を譲り受けるために相続対策としてわざと赤字にした」と嘯いていた。「ならなぜ相続が終わった後も赤字にしていたのか」という質問は(まだ入社直後であったこともあって)ぐっと飲み込んだ。

 その後、私が入社して経営を立て直し、6年連続の増収と黒字計上、最終年度には史上最高益を達成した。だから会社の株をM&Aで高く売れて、役職員は全員解雇して悠々自適で引退できたわけである。最大限の貢献をしたのに首という結果になって忸怩たる思いがあったが、今思えば退職金規定の整備など気付いていたのだからやっておけば良かったと思う。それはそれであるが、赤字は必ずしも悪ではないということである。本質は何かということはいつも問いかけているが、企業の赤字についてもそういう本質論として捉えておきたいと思うのである・・・




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