2025年3月31日月曜日

論語雑感 泰伯第八 (その20)

論語を読んで感じたこと。解釈ではなくあくまでも雑感
【原文】
舜有臣五人、而天下治。武王曰、予有亂臣十人。孔子曰、才難。不其然乎。唐虞之際、於斯爲盛。有婦人焉、九人而已。三分天下有其二、以服事殷。周之德、可謂至德也已矣。
【読み下し】
舜(しゅん)に臣(しん)五(ご)人(にん)有(あ)りて、天(てん)下(か)治(おさ)まる。武(ぶ)王(おう)曰(いわ)く、予(われ)に乱臣(らんしん)十(じゅう)人(にん)有(あ)り。孔(こう)子(し)曰(いわ)く、才(さい)難(かた)しと。其(そ)れ然(しか)らずや。唐(とう)虞(ぐ)の際(さい)、斯(これ)より盛(さか)んなりと為(な)す。婦(ふ)人(じん)有(あ)り、九(く)人(にん)のみ。天(てん)下(か)を三分(さんぶん)して其(そ)の二(に)を有(たも)ち、以(もっ)て殷(いん)に服(ふく)事(じ)す。周(しゅう)の徳(とく)は、至(し)徳(とく)と謂(い)う可(べ)きのみ。
【訳】
舜帝には五人の重臣があって天下が治まった。周の武王は、自分には乱を治める重臣が十人あるといった。それに関連して先師がいわれた。「人材は得がたいという言葉があるが、それは真実だ。唐・虞の時代をのぞいて、それ以後では、周が最も人材に富んだ時代であるが、それでも十人に過ぎず、しかもその十人のうち一人は婦人で、男子の賢臣はわずかに九人にすぎなかった」またいわれた。「しかし、わずかの人材でも、その有る無しでは大変なちがいである。周の文王は天下を三分してその二を支配下におさめていられたが、それでも殷に臣事して秩序をやぶられなかった。文王時代の周の徳は至徳というべきであろう」
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 人材は、国家でも企業でも重要である。大きな組織であれば優秀な人材はいくらでもいるだろうが、中小企業ではそうはいかない。我が社もその例外ではなく、どうしても育成に時間がかかるし、手間も掛かる。管理職に登用したり、経営職に登用したりする際、どうしても「選択肢」が限られてくる。私が転職する前に取締役が2名いたが、今から思うと首を傾げたくなるような方であった。それでも会社法で取締役は3名以上いないといけない。そんな中での苦肉の策だったそうである。

 最近は「転職組」が増えて経営人材は充実しつつある。しかし、生え抜き組の中には、日頃の言動から経営という観点では違和感を覚える発言をする人が目立つ。考えてみれば、これまでエンジニアとして腕を磨き評価されてきた人たちである。優秀ではないという事はない。ただ、「経営」はどうしても違う分野になる。それまでやってきた技術の世界とは違うので、なかなかそこの切り替えができないといったところのようである。野球でも「名選手必ずしも名監督ならず」という言葉があるが、それと同じかもしれない。

 その昔、銀行員時代、取引先の社長がよく「我が社には人材がいない」と嘆いていた。この場合の人材とは、いってみれば「経営人材=経営のことを理解できる人材」という意味だと思う。みんな言われた事をやる事に慣れてしまっていて、自分からやろうとはしない。社長の言葉を待っていて、自分の意見を言おうとしない。社長は結構孤独で、経営についてこれでいいのかと悩む事が多い。その時、相談に乗れるかどうか。相談に乗れるような頼もしいNo.2であれば喜ばしい。しかし、そういう人材が社内にはいない。

 我が社も経営人材だけでなく、本業たるソフトウェア開発の人材育成が急務である。ゆえに技術者人材を育成するというのが、我が社の課題の一つである。それはそれで正しい戦略であり、若手のエンジニアにはひたすら技術の向上を目指してもらいたい。ただ、管理職になったら経営の方にも考え方をシフトしてほしいと考えている。ここで語られている「人材」とは経営人材である。国家も企業と同様、「経営」がある。そういう経営人材が必要なのは国家も同様である。

 現代は、女性は数に入らないなどと言えば顰蹙を買うだろう。女性でも立派に経営人材になれる。我が社もこの4月に女性管理職が1名誕生する。その手腕には大いに期待するところであるが、少しずつそれらしい経営人材になれるよう教育とサポートが必要だと考えている。選り取り見取りの大企業と違って、中小企業は少ない選択肢の中から育成しないといけない。しかし、考えようによっては、自分たちにふさわしい管理職を自分たちで養成できるというメリットもある。

 「わずかの人材でも、その有る無しでは大変なちがいである」のは我が社でも同様。そういう人材が10人もいれば安泰かもしれない。いつの世も人材は大事。我が社では「人財」と称しているが、そういう人財を育てられるようでありたいと自分自身思うのである・・・


Kibeom KimによるPixabayからの画像

【本日の読書】

いま世界の哲学者が考えていること - 岡本 裕一朗  ヒール 悪役 (日本経済新聞出版) - 中上竜志



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