2026年3月26日木曜日

会社を買う

 仕事でM&Aに携わる機会ができている。以前はM&Aというとバカ高い費用を取られ、大手の企業が行うものというイメージがあったが、近年そのバーが下がってきており、我々のような中小企業でも手が出せるようになってきている(手数料は相変わらず8桁台で安くはない)。こういうチャンスを生かそうと、サイトに登録して案件情報を見守り、これというものに関しては連絡を取って詳細情報をもらい、チャンスを伺っている。そして3年前、そのチャンスを生かしてM&Aでとある中小企業の買収に成功した。

 ビギナーズラックという言葉があるが、その買収は理想的なほどうまくいき、今でもグループ企業の1社としてグループの業績向上に貢献している。二匹目のドジョウを狙って今も日々数多の情報に目を通しているところである。M&Aのすそ野が広がってきたことは歓迎すべきことであるが、「玉石混交」という言葉がすそ野の世界には見事に当てはまる。ピカピカの会社(我々には手も出ないほど高い)からなんでこんな会社(価格もタダ同然である)と思うものまで様々である。買う方も「見る目」を要求されるという事なのだろう。

 明らかに胡散臭い(と言っても詐欺というほどではない)ものとしては、1つには「設立から日が浅い」というものがある。設立して数年というと、なぜ売るのだろうかと単純に思う。通常、何らかの思いがあって会社を設立し、思いを持って事業を継続するものであろう。それをわずか数年で売り払ってしまおうとするのはなぜなのか。そこにはすそ野の広がりを商売チャンスと見て、売るための会社を設立し、それなりのビジネスをやって会社の体裁を整えているとしか思えない。そんな「売るための会社」を買ってもうまくいくとは(我々の場合であるが)思えない。

 また、経営陣がそのまま残るというものもある。理由を見れば「資本獲得のため」という文言があったりする。よく見れば業績も右肩下がりである。これって業績が悪化して潰れそうになってしまい、オーナーとしてリスク回避から売りに出しているのではと思わされる。そういう会社はたとえタダで購入しても、借入れの返済を引き受けたりすればその分お金を出すのと同じことになる。オーナーは連帯保証を外れてリスクから解放されることになる。リスクだけ取らせて今まで通り経営するというのは虫がいいと言わざるを得ない。

 実際、我々が最初に目を付けた会社だが、業績が悪化する中、オーナーが会社を手放す決意をしたものであった。確かに業績は悪化しているが、買収して本社を統合したり引退した経営者の役員報酬負担がなくなったりすることを考えれば十分黒字化は可能であり、是非買いたいと考えた。しかし、大まかな合意ができたところで、最終的にオーナーが手放すのが惜しくなったのか、取引の中止を申し出てきた。やむを得ないと思ったが、数か月後に再度連絡があり、「やっぱり売りたい」という事になった。

 そこで取引再開となったが、よく見ればその間に決算があり、業績はさらに落ち込んでいた。という事は、オーナー自身も「もったいない」などと言えない状況に追い込まれたのであろうと推察された。今度はこちらからお断り申し上げた。その時、別案件が浮上していたという事情もあるが、オーナーが慌てて手放すほど悪くなっているのだろうという推察がお断りの理由である。タイミングが悪ければ買っていたわけで、危ないところだったかもしれない。そういう危うさも秘めているという事である。

 それを防ぐには、細かく会社の内容を調べることももちろん重要であるが、何より「売る理由」が大事だと思う。我が社が前提にしているのは、「高齢による後継者不在」。人間は誰でも年を取る。会社を設立して経営していても、いずれ経営を続けられなくなる。その時に後を託せる者がいればいいが、いなければ会社をどうするかという問題がある。こういうケースは会社がまだ生きており、後を引き継いでいける可能性が高い。「まだやりたいがもうできない」という理由が一番安心できる。

 そういう意味で、オーナーの年齢も大事である。中にはまだ40〜50代という人がいて、「新たな事業を設立するため」と説明されたこともあったが、儲かる事業であれば手放すまい。仮に手放す場合はそれなりの価格をつけるだろう。そうでない場合、やっぱり「売り逃げ」を疑ってしまう。それでもうまくいくケースはあるだろうと思うが、手放すオーナーの腹の内はわからず、「君子危うきに近寄らず」が正解かと思って手を引っ込めてしまう。どんな案件にもリスクはあり、「買って失敗」よりも「買えなくて失敗」の方がはるかにマシである。

 ビギナーズラックはあまりにもうまくいったので、二匹目のドジョウは是非とも手に入れたいと考えている。毎日多くの情報が寄せられる。考えてみれば結婚相談所と同じようなものかもしれない。お互いがハッピーになる買収を目指したいものである。いろいろな会社を見る楽しみもあり、焦る必要はないのでじっくりと相手を見極めたいと思うのである・・・





【本日の読書】
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