2025年12月22日月曜日

大人の事情なのか

スルガ銀行の不正融資問題 121億円の解決金支払いへ 4年の調停で迎えた「大きな節目」の裏で被害者が語る本音とは

スルガ銀行は福岡市に住む男性など全国各地のマンションのオーナー、およそ400人が所有する604物件のうち194物件に対し、解決金として合わせて121億円を支払うと発表しました。調停による一定の解決でスルガ銀行の不正融資問題は新たな局面を迎えていますが、窮地に追い込まれてきたオーナーたちは、「すぐには信用できない」などと本音を打ち明けていました。

Yahoo!ニュース 12/16(火) 20:04配信

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 この問題は、発生当初から興味を持っていた。元銀行員であり、前職は不動産業者であり、両方の立場を経験してきた身としては当然だと思うが、なんだか世の中おかしな事が当然のことのように報じられていて、違和感だらけである。そもそもスルガ銀行がなぜ世間の悪者になるのか、これは筋の通らない話である。一種の詐欺であるが、騙したのは不動産販売会社であり、スルガ銀行ではない。なのにすっかりスルガ銀行だけが悪者という扱いである。販売会社は倒産して、甘い汁を吸った人たちはトンズラしてしまったのだろうから、逃げられないスルガ銀行が割を食っているのだろう。

 もちろん、「不正融資」をしたスルガ銀行に全く責任がないわけではない。不正融資によって回収不能となった貸付金は損金となるが、その損失や一連の報道による株価の下落は株主に直結しており、株主に対する責任は重い。また、業績悪化などによる給与カットなどがあれば、社員に対する責任もあるだろう。しかし、今回の被害者に対する責任などないはずである。なぜなら、「貸してくれ」という申し出に対し、貸したことにどうして責任があるのか。証拠を改ざんして不正に銀行内の審査を通したとしても、それは銀行内の問題であり、貸付先に対するものではない。

 最近ではお年寄りが窓口で大金を下ろそうとすると銀行員がストップするようにしている。「騙されていませんか?」と確認しているのである。それを鬱陶しいと「自分の金を下ろすのは自由だろう」と逆ギレするお年寄りもいるらしいが、黙って払い出しに応じた場合、「なぜ止めなかった」と銀行を責めるのはお門違いだが、それと同じようなものである。騙したのは不動産会社で、騙されたのは投資家を気取った被害者である。もしも、しっかりと審査機能が働いていたら、騙された人たちは他の銀行に当たっていただろう。ひょっとしたらなんで「融資できないんだ」と文句を言っていたかもしれない。

 ニュースを読む限り、スルガ銀行が非難される筋合いはないと思うが、ニュースに出てこない事情があるのだろうか(あるとしたらそれを報じないのはマスコミの怠慢である)。ただ、騙した不動産会社は倒産してトンズラだろうから、被害者の救済を図るとしたらスルガ銀行しかないというところなのかもしれない。そうした「大人の事情」があるからこそ、「調停」なのだろう。もしも、スルガ銀行に責任があるのであれば、刑事事件になるだろうし、あるいは民事事件にもなるのだろう。被害者も騙されていたとは言え、自分の意思で借り入れの申し込みをしているわけであるし、自分の意思で契約書に実印を押しているわけである。被害者の顔をスルガ銀行に向けるのは本来憚られるべきである。

 スルガ銀行としても、行員が不正融資に関わっていたり(キックバックを受け取っていたという話もある)していたため、「俺たちは関係ない」と言い切れないのだろう。銀行内でどういう処分が下されているかは知る由もないが、行員が不正融資に関わって結果的に被害者が出ているとなれば、他人の顔はできないだろう。不正と言っても、キックバックの受領は明らかに犯罪行為であるが、自分の成績のためだとしたら、成績至上主義に追い込んだ組織体質などという問題に行き着く話である。知らん顔をするのは世間的にお客様商売をしている銀行としてはまずいと判断して調停に応じているのだろう。

 被害者も本来、それを理解した上で少しでも救済を受けられるようにすべきであるが、「すぐには信用できない」などと上から目線でモノを言うのは筋違いに思えてならない。騙されたのは仕方ないと言えなくもないが、大金を投資するにあたってどれだけ調べたのか、胸を張れるオーナーはどのくらいいるのだろうか。提示された資料と話を丸ごとホイホイ信じたのではないかと思えてならない。本来、「投資は自己責任」である。それをどこまで理解して実践していたのか疑問に思う。しっかり調べていれば、おかしいという点はニュースで漏れ伝わってくるだけでも十分にある。

 もしかしたらそんなことは十分にわかっていて、それでも対外的なポーズとしてあえて上から目線で語っているのかもしれない。そこまでは深読みしすぎかもしれないが、表面的な出来事だけではなく、表に出てこない話をもっと知りたいと思わざるを得ない。不動産価格は高騰し続けており、商売のためにおいしい話を持ち掛ける業者は後を絶たないだろう。騙されないために必要なのは「健全な猜疑心」である。それがあれば今回の被害もなかったのではないかと思う。もちろん、騙す方と騙される方では、悪いのは騙す方である。でも、それが世の中からなくならない以上、騙されないことが大事である

 おいしい話には、「すぐには信用できない」と初めから思うようにしなければならないのである。まぁ、スルガ銀行には気の毒な気がするが、それでも今回の被害者が少しでも救済されればいいなと思うのである・・・


Nick MagwoodによるPixabayからの画像


【本日の読書】

 センスの哲学 (文春e-book) - 千葉 雅也  失われた時を求めて(4)――花咲く乙女たちのかげにII (岩波文庫) - プルースト, 吉川 一義





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