2024年5月5日日曜日

民間企業に勤めて

 世間ではGWであるが、と言っても私はどこに出掛けるという事もない。シニアラグビーの練習に行き、実家に行って一泊していろいろと手伝ってきて終わりである。さらになぜか喉の痛みと微熱が出て、結局のところ残りの2日間は家で静養といったところである。特にする事もなく、NetflixやAmazon Prime、Disney+で映画やドラマを観て過ごしている。そんな怠惰な生活ではあるが、やはり気がつけば仕事の事もあれこれと考えている。

 この春から社会人になった娘は、公務員になった。就職について、母親とは何か話をしたのかもしれないが、私にはなんの相談もなかった。娘の人生なのでそれでいいのであるが、公務員は公務員で悪くはないと思う。世間では相変わらず子供に就かせたい職業として公務員は人気のようであるが、私はただ「安泰だから」という安易な理由で公務員になれと言うつもりは毛頭ない。安定した生活を送ってほしいと思う気持ちは世の親と同じであるが、その方法論として「公務員」とは思わないだけである。

 そう言えば、私も小学生くらいの時、母親に「公務員になったら」と言われたことをぼんやり覚えている。その時は、遠い将来の職業について具体的な事を考えることはなく、なんて答えたかも忘れてしまった。結局、親に相談する事もなく銀行に就職したが、その報告をした時、母は「それでいいのか」と心配顔で念を押してきた。当時、都市銀行は16行あり、私が就職した銀行は上から6番目。有名国立大学を出たのに「それでいいのか」という意味だったが、「大丈夫なのか」という心配があったのだろう。

 母の心配は現実になり、私の就職した銀行は金融危機の中で救済合併という形で消滅した。母の心配も意味があったと言える。その後、紆余曲折して今は中小企業の役員という身分を勝ち得ている。残念ながら出世はできなかったので、銀行に残っていても50代前半で退職金をもらって関連会社か取引先に転籍して(給料は半減する)、さらに60歳定年でさらに給料は下がっていただろう。それに対し、今は役員だから定年はないし、収入的には銀行員時代の9割くらいは維持できているし、まぁうまくいっていると思う。

 就職してからも一度だけ「公務員になれば良かったんじゃないか」と言われたことがある。4店目の店舗の時、当時の支店長にそう言われたのである。たぶん、私の考え方が公務員的だったのだろうと思う。民間企業は良くも悪しくも稼がなければならない。「すべてのお客さんに公平なサービスを」という公務員的な発想と、「お金をたくさん払ってくれるお客さんを優遇する」という民間企業の発想が相入れなかったのである。「公務員になれば良かった」という当時の支店長の発言もよく理解できる。

 民間企業は稼がなければならない。今の会社でも3カ年計画を立てて、収益マインドの向上に努めているが、現場のエンジニア上がりにはなかなか浸透しない。「いい仕事をしてさえいればいい」という発想が、経営層に入っても抜けきらない。「成長しなければ社員の給料も上げられない」と訴えるが、足元の仕事を真面目にこなしていれば、収入も増えて給料も増えるという意識が染み付いているのかもしれない。あまり言い過ぎたせいか、「売上第一主義」と勘違いされ、「社員が疲弊して、ついてこれない奴は切り捨ててもいい」という言い出す役員も出てきてしまった。

 会社が成長しなければならない訳は、単純に言えば「売上が同じだったら給料も同じ」という理屈である。給料を増やしたいなら売上を上げて成長しないといけない。それは社員をハッピーにするためであり、疲弊させてしまったら本末転倒である。そんな事もわからないのかと愕然とするが、それが中小企業の意識レベルなのかもしれない。民間企業は公務員と違って「必要な仕事だけしていれば良い」というわけにはいかない。そこに「いくら儲かるか」という視点が絶対に必要である。もちろん、「給料も少なくて良いし、上がらなくてもいい」という人がいれば別であるが・・・

 これからの会社の未来に関しては漠然とした不安がある。「このままでいいのだろうか」という不安である。生き残っていくためには世の中の変化に合わせて変化していかないといけない。それができるだろうかという不安である。民間企業はそこが最大の欠点である。大企業であれば(比較的)安泰だろうが、定年という問題がある。雇用延長と言っても、給料は半減するのが普通だろうし、これに関しては個人個人で克服していかないといけない。

 私の場合は、会社が安定して存続できれば問題はない。目標の70歳まで今の給料を維持できる。問題は「いかに会社を安定して存続させられるか」である。100人の社員もいるし、それは自分だけのことではない。あれこれ考えても妙案が浮かぶわけでもないが、役員会で議論してみてもいいアイデアがいくつか浮かんだ。さっそく議論してみようと思う。公務員になったとしたらどんな人生を送っていただろうか。いずれ引退した時に、やはり民間に行って良かったと思えるように、これからの残り時間で奮闘していきたいと思うのである・・・

Nattanan KanchanapratによるPixabayからの画像

【今週の読書】
「変化を嫌う人」を動かす:魅力的な提案が受け入れられない4つの理由 - ロレン・ノードグレン, デイヴィッド・ションタル, 船木 謙一(監修), 川﨑 千歳 安倍晋三 回顧録 - 安倍晋三, 橋本五郎, 尾山宏, 北村滋





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