転職して1ヶ月。ほぼ社内の様子には慣れ、仕事の内容も概ね把握し、自分のペースで仕事をこなしている。当然ではあるが社内にはいろいろな人がいる。これまで銀行に26年半、不動産会社に6年半勤めていたが、今度の会社はまた違う人たちがいて面白い。仕事の内容が変われば当然とも言えるが、そうは言っても仕事の「やり方」というものはそう変わらない。仕事のできる人、できない人というのもそれぞれいて、しかしながらそれぞれ共通しているものだと改めて思わされる。
今度の会社の部下の1人は、若手の3年目。言われた事はそつなくこなす。直属の上司曰く、一方、あまりできのよろしくない人もいる。あちこちで怒られている声が聞こえてくる人がいて、耳をすませてみると「なぜやっていないのか」と問われて、「(やるように)指示されていません」と答えていた。これはサラリーマンとしては最悪に近い回答である。典型的な「指示待ち族」である。しかもその仕事の担当者はその人なのである。自分の担当であればなおさら「やらなくてもいいのだろうか」と思わなければいけない。自分が担当で一番よくわかっているわけであるから、「何を成すべきか」を考えていないといけない。指示されていないのなら(指示がないと動けないと思うのなら)、「やらなくてもいいのですか」とか、「やってもいいですか」と自ら指示を出してもらうよう働きかけるぐらいでないといけない。
そもそもなぜそういう回答をするかと言えば、おそらくその人は常に「やらされ仕事」をしているのだろう。仕事は自ら作り出すものである。たとえ最初は指示されたことからスタートするにしても、どこかで自分主体にならないといけない。ところがいつまでも受け身のままだと「言われるまでやらない」という事が身に染みつき、それは思考レベルで浸透するから、言われるまで自分で考えるということをしなくなる。言われて初めてスイッチが入るから(=自分がやらなければいけないとわかるから)、慌てて「聞いていません」、「指示されていません」となってしまうのだろう。
そういう人は、A=Bだと教えられると、A=Bだと理解する。B=Cだと教えられると、B=Cだと理解する。しかし、そこで思考停止してしまい、それではつまりC=Aなんだなというところまで気がつかないのである。先日もある役所への申請について、疑問に思い調べてみたのだが、担当しているその人に聞けばあるケースAをピックアップして申請しているとのこと。しかし、ちょっと考えてみたところ、その趣旨からするとBというケースでも申請していいのではと疑問が湧いた。そこで役所に確認したところ、申請可との回答が得られた。それに該当するケースがかなり見つかったのである。
私も初めての業務であるが、ちょっと「考えて」みればわかることなのである。少なくとも疑問には思えるだろう。そうしたら聞くなりなんなりして調べてみればいい。それだけでその仕事をより深く理解する事ができる。しかし、「言われたことだけ」やっていてはそういう疑問すら持てない。あるいは疑問にぐらいは思ったのかもしれないが、「言われてもいないことはやらなくてもいい」と考えたのかもしれない。そういう思考習慣が根付くと大変である。
たとえば経理の仕事についたら、言われるがままに伝票を切ったりという作業から入るかもしれない。慣れてきたら、これはどうしてこういう勘定科目でどうしてこういう記帳をするのだろうと疑問に思うべきである。そしてそれを一つ一つ確認していけば、「ではこういう場合は」という疑問が次々に湧いてくる。やがてもっと詳しく知ろうと思えば、本を買って簿記の勉強を始めることもできるし、長じて簿記の資格を取ろうとすることもできる。自分の担当する仕事をそうして極めようとすれば、やがてその道のプロとなれる。それは決して「指示されていないから(やらない)」という思考回路からは出てこない。
「給料以上の仕事をするのは損」という考えがあるが、それは極めて害のある考え方である。給料以上の仕事をしたら損というのは目先のことしか考えていない。それではいつまでたってもその給料しかもらえないということに気づいていない。人の振り見てではないが、他人の様子はよくわかるもの。自分は大丈夫だとは思うが、今一度油断がないかは意識したいところ。新しい環境であるがゆえにいい緊張感もあるし、そのあたりを改めて自分も強く意識したいと思うのである・・・
Erik SteinによるPixabayからの画像 |
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