『ラグビーは少年をいちはやく大人にし、大人にいつまでも少年の魂を抱かせる』
ジャン・ピエール・リーヴ(元フランス代表FL)
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週末にシニアのラグビーチームで汗を流すのがすっかり恒例となった。1週間に1度ではあるが、みんなでボールを追うのは今更ながら楽しいものである。ラグビーを始めたのは高校時代。当時一年上に知り合いがいて、突然やりたくなったのである。まだ一般的なスポーツとは言えず、経験者も少ないことから、みんなが同じスタートラインから始められるというのも背中を押す一因であった。
その後、大学、社会人とプレーし、30代に入ってから次第にフェイドアウトしていった。子供が生まれたという要因も大きいし、何より加齢による筋力・体力の衰えと練習時間の減少により怪我のリスクがだんだん大きくなっていったこともある。それはそれで仕方ないことでもあり、自然とラグビーは「やるスポーツ」から「観るスポーツ」へと変化していったのである。
それが再び「やるスポーツ」になったのは、四、五年前に大学のシニアチームに誘われたのがきっかけである。そろそろ運動不足もなんとかしたいし、かといって黙々と走るジョギングは好きではないし、なら人工芝グラウンドの上でボールを持って走るのも悪くはないと考えたのである。その時は試合をしようなどという気はサラサラなく、既にシニアチームで試合をしていた先輩から誘われたものの、断っていたくらいである。
そうして始めたが、やはりジョギングよりははるかに楽しい。ボールを持って走り、パント(要はキックである)を蹴る。息も切れるし汗もかく。いい運動であることは間違いない。現役時代は楽に勝てていた同期についていけないこともショックで、きちんと練習に参加するようになったのである。もともと運動することは嫌いではないし、むしろ体を鍛えるのが好きな方だから自然に再開できたと言える。
そうして次第に体が動くようになってくると、月に一回の練習ペースでは物足りなくなり、高校時代の先輩の伝手を辿って別のチームに参加するようになった。毎週練習に参加し、現役時代慣れ親しんだフォワードから新たな挑戦としてバックスへと転身し、体を動かすだけではなく、新しいポジジョンを習得すべく頭も使う。YouTubeもフルに活用して技術を磨く。そしてその流れで試合にも参加するようになったのである。
シニアの試合は「安全第一」の試合ルールを採用している。若手の頃のようなハードなあたりは、ただでさえ怪我しやすい衰えた体には危ない。そこで「自分より上の世代に対するロータックル(腰から下へのタックル)は禁止」「スクラムは組むだけで押しあわない」のようなルールを作っている。それをわかりやすくするために、40代より下は白、50代は紺、60代は赤、70代は黄色、80代は紫と年代別にパンツの色を分けている。加減色が強くなるのは赤パンツからであり、紺パンツまでは一応ロータックルありのルールとなっている。50代の私は紺パンツであり、したがってまだまだロータックルありのルールである。
先週末はその試合があり、私も参加した。相手チームには大学の先輩後輩がいて、こういうのもなかなか面白い。試合の方は残念ながらチームに実力差があって防戦一方。私もボールを持ってのアタックより、相手を止めるディフェンスばかりの試合であった。試合が終われば肘や膝はすり傷に血が滲み、腰には打撲、さらには全身の筋肉痛が加わり、翌日は大変な状態であった。
若いうちならいざ知らず、50代も半ばになってなんでこんな痛いスポーツをやるのだろうかと自分でも思う。テニスとかゴルフとか、年齢に相応しいスポーツは他にもある。そうではあるけれど、ボールを持って走り、相手の隙をつくパスをする。狙い定めてパントを蹴り、体から相手に当たる。走りこんできた相手に思いっきり飛び込んで倒す。無我夢中のひと時は何事にも変え難い面白さである。かつての充実感が蘇ってくる。
たとえ痛くとも、そこには他には変えられない楽しさがある。観るのも面白いが、ラグビーはやっぱりやる方がもっと面白い。昔はチームの勝利という大目的があったが、今は純粋にプレーを楽しむのが大目的である。相手チームも倒すべき相手というより、一緒に楽しむ仲間という感じである。何より、相手がいないと試合はできないし、メンバーが集まらなくても然り。ラグビー経験者でも年をとったら引退してしまう人が大半であり、そう考えると、いい年してまだラグビーをやっているのは貴重な存在であると言える。
【今週の読書】
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