2016年9月4日日曜日

数学を学ぶ際の心得8箇条

昨日は、高校の同期会であった。クラス担任の先生とは卒業以来の再会で、その他の旧友たちとも楽しい再会のひと時であった。数学の担任であったN先生とは前回以来4年ぶりの再会。N先生は、私が所属していたラグビー班(普通の高校の「部」に当たるものである)の顧問の先生でもあった。ラグビーの「ラ」の字も知らないN先生だが、休みの日の試合にも引率で来ていただいたこともあり、当時から、そして今も感謝の気持ちが絶えない。

そんなN先生とは、私が今でも数学が好きであること、高校一年の娘が「確率がわからない」と言っているのを聞き、私も本を借りてきて改めて勉強し直していることを伝えた。そうすると、酔っ払いつつも目をキラリと光らせたN先生は、おもむろにA4の紙の束を取り出して私に差し出した。見れば「数学を学ぶ際の心得8箇条」と名打っている。それまで7箇条だったのだが、最近一つ加えたのだと教えてくれた。

【数学を学ぶ際の8箇条】
1.        別解・別証明を幾通りも考えよ
2.        逆は成立するかを考えよ
3.        類題を研究し、一般化及び特殊化を図れ
4.        答案作成・プレゼンテーションの練習をせよ
5.        論理の流れを大局的に捉えよ。その際、順不同が成立するかを考えよ
6.        なぜその考え方に気づいたのかを考えよ
7.        なぜそれを学ぶかを考えよ
8.        失敗・行き詰まりを記録し、その理由の分析を何度も試み、分析が進んだ範囲でその都度その分析を記録して公表せよ

 先生はすでに現役をリタイアされている。だが、まだ数学の研究は続けているという。いただいた資料の中には、数学の問題がいくつも載っていた。
ab>0,r>0とする。半径の大きさがrの動円が楕円x2/a2+y2/b2=1に外接しながら楕円を一周するという。この時
       動円の掃過する領域をFとする時、Fの外周曲線の方程式とその長さとを求めよ。
       ①のFの面積を求めよ
       ・・・・』
そして最後には、これからの類題や解答例をインターネットで発信してみたらいかがかと呼びかけられている。また、数学オリンピックを始めとした各種オリンピックへの出場を考えている人への提案もなされている。正直言って、文系の私にはついていけない世界だ。

しかし、にもかかわらず、昔から、そして今もなんとなく数学は好きなのである。年度始めには、子供達に教科書を見せてもらうことがあるが、その時じっくり見るのが歴史と数学だ。この二つは「できる」「できない」ではなく、「見たい」「知りたい」という気持ちが働く。昨年は微分・積分をすっかり忘れていることに気がついて、思い出したいと思って図書館で本を借りてきて読んだ。基本書だったからよく理解できたし、やっぱり数学は面白いと思えた。

先生の作った8箇条は、長い年月をかけてできたものだという。そういえばその第1条は、高校時代にも授業で言われたような気がする。先生は、数学は単に学校の勉強というだけでなく、その考え方はあらゆるところで基本になると語られた。そう考えてみると、自分は何でも一つアイデアが浮かぶとそれで満足してしまうところがある。第1条や第2条などはそれを戒めてくれるところがあり、第8条まですべて今の仕事に応用できることに気がついた。事業を考える上でも役立つ考え方かもしれない。

 今でもラグビーの練習試合に相手高校に行った時の1シーンを思い出す。グラウンドの片隅に佇み、先生はずっと我々の試合を観ておられた。ルールも何もわからない中、いかにも場違いなその様子に、休みの日にわざわざ出てきていただいて申し訳なく思ったものである。「最後に一言と言われても、何も専門的なアドバイスができなくて申し訳なかったよね」と先生は語られたが、それで対外試合ができたわけで、それだけでもちろん十分だったのである。

大学受験に失敗し宅浪している時、どうしても分からない数学の問題を持って先生の元を訪ねたことがある。その時も、忙しい合間を縫って丁寧に教えていただいた。その話をすると、「数学のことを聞かれたら、誰であろうと私は答えるから」と先生は答えられた。自分の職業、そして好きなことに対する誇りが、先生との短い会話の中から伺えた。

先生は、これからも研究を続けられるのだという。もうその教えを聞く生徒もいないし、続けてどうなるものでもないのであろうが、先生にとってはそんなことはどうでもいいらしい。ただ、自分が携わってきたことについて、最後まで続けたいのだという。インターネットや図書館や古書店等で調べたり等、手段はいろいろあるらしい。「今度会う時には、10箇条になっているかもしれないよ」と先生は笑って語られた。

 そのスタンスは、先生からの新たな教えである。『Masterキートン』のユーリー・スコット教授は、「人間はどんなところでも学ぶことができる。知りたいという心さえあれば」と語っている。それを先生はまさに地で行っているわけである。それに触れた以上、自分もそういう心意気を持ち続けないといけない。体も鍛えなおしたいし、勉強もし続けたい。そして何よりそういう気持ちを保ち続けたい。よく見れば8箇条のサブタイトルは、【人生を歩む上での8箇条のご誓文】とちゃんと書いてある。心に刻んでおきたいと思うのである・・・




【本日の読書】 

     

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