今はすっかり「安全保障関連法案」一色になっている感のある国会だが、実は派遣法の改正というのが着々と審議されている。以前、派遣切りが話題になっていたが、あれ以来、法律も変わっている。今回、また何が変わるのかはよくわからないが、この問題の本質を理解していないところで政治家が議論しているような気がしてならない。
そもそもは、「派遣」というのは、「正社員」と「アルバイト・パート」の中間のような存在だ。それは企業にとって「都合の良い」存在だと思う。「正社員のように働き」、「アルバイトのように解雇できる」という点で、だ。ただそうは言っても、企業を批判するのは簡単ではない。
なぜなら我が国は、ありがたいことに簡単に社員をクビにできない社会である。だから、業績が悪化しても簡単に整理解雇はできない。となると、雇う時は慎重になる。「今10人必要だからといって、10人雇ってしまって将来市場の需要が減った時に大丈夫か?」となるのである。そこで、たとえば「10人必要だが、5人に抑えておこう」となるのである。
そうなると、10人の求職者のうち、職を得られるのは5人だけとなる。求職者とすれば、残る5人は他をあたらないといけないし、なければバイトで食いつなぐしかない。ところが、派遣だと企業も万が一の時は雇い止めできるとなれば、「5人は正社員、5人は派遣」として10人採用できる。イメージとしては、そんなところだろう。
この派遣制度を敵視している人たちがいて、そのために法律がコロコロと改正されているのだろう。何とか「派遣」などという制度は廃止して、「全員正社員」という方向にもっていきたいのだろう。反対派の意見を見ると、「生涯派遣に陥るリスク」などというのがある。「雇い止め」で職を失ったり、「生涯派遣社員」で安く使われて終わることがないようにしようという意図だろう。
それはそれで悪くはないと思うが、それだと「派遣」という働き方の意味がなくなってしまう気がする。無理やり正社員の方向に行かせるべく法律で縛ろうとしているのが、国会でのこれまでの派遣を巡る動きだと理解している。だから、何となくおかしなものになっている。「3年ごとに職場を変える」というルールもそうだと思う。
しかし、我が国には「職業選択の自由」がある。派遣が嫌なら派遣にならなければいいだけの話である。生涯派遣が嫌なら、正社員になればいいだけのことだ。政治家(特に反対派の人たち)があれこれ口をはさむことではない。ただ、正社員やアルバイトと同様、不当・違法な扱いをされないように枠組みをつくるだけで十分ではないかと思う。
そもそも先に挙げた通り、派遣がなければ「職」そのものがなかったかもしれないものである。失業しているよりマシと考えれば、派遣だって悪くない。同じ職場に長年派遣されて、それでも正社員より給料が安くても仕方ないではないか。嫌なら正社員になるか、失業を選ぶしかない。そう言うと、「正社員になれない」という意見が聞こえてきそうだが、それは「仕方ない」。我が国は全員雇用が保証される社会主義国家ではないのである。
そういう思いがあるから、国会での議論を聞いていてもピンとこない(というか議論の内容を詳しく知ろうという気になれない)。政治家も、弱い労働者の味方をして票を得ようと思っているのか、はたまた経済の仕組みを理解できず何でも保護しようという博愛精神なのか、もっと本質を理解しないといけないのではないかと思えてならない。
派遣で働く人にもいろいろな事情があるだろう。全員が嫌々ながら働いているとも思えないし、満足している人もいるだろう。働き方も人それぞれだ。政治家が最低限の労働者の権利を守る以外に口を出すことはないと思う。「派遣が嫌なら正社員になればいい。そのために必要なら必要以上の努力をすればいい。」
ただそれだけのことなのに、無駄な時間を使っているような気がしてならないのである・・・
【今週の読書】
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