2009年11月23日月曜日

早慶戦

 11月23日はラグビー界では「早慶戦の日」として知られている。伝統ある両校(慶応のグラウンドには日本ラグビー発祥の地の碑が立っている)ゆえ、12月第一日曜日の早明戦とあわせて不動の日程である。そしてこの日には同じ対抗戦グループに所属する大学は公式戦を組まないという不文律もある。

 そもそも関東大学ラグビー界は対抗戦グループとリーグ戦グループとの2つがある(これ以外にも地区対抗グループがあるが、大学選手権に出場資格はない)。対抗戦とはもともと古くからある早稲田、慶応、明治といった伝統校が対抗試合を始めたのが始まりである。以来、年に一度互いの力をぶつけ合う場として定期戦を組んできたのである。

 やがてラクビーが各大学に広まるが、伝統校は新興大学とは一線を画しており、新興勢力は独自にリーグ戦グループを形成する(ちなみに弱小ながらも我が母校は1922年創部の伝統を誇り、対抗戦グループの一角を担っている)。やがて大学一番を決めるという流れができてくる。しかし伝統ある対抗戦グループはあくまでも年一回の定期戦を重視し、「順位を決める」という考え方に反発する。しかし、それが抗しきれなくなり、渋々順位を決めるようになったという経緯がある。

 最初は伝統ある定期戦第一で、その結果に基づき便宜的に順位を決めていたのであるが、何せ各校バラバラに組んでいた定期戦。試合数がバラバラで順位を決めるのが困難になってくる(慶応・東大などの保守的グループは試合数を増やさなかったし、帝京などは伝統がないためやたらとグループ内で定期戦を組んで地位向上を図っていた)。そしてとうとう今のABグループに分けて、試合数を均一化し順位が明確になるようになったのである。

 だが、定期戦の伝統は脈々と生きていて、その象徴が今日の早慶戦と12月の早明戦と言える(我が母校も東大との定期戦の伝統があり、かつてABに分かれて公式戦はなくなった事があるが、その時でも定期戦としての試合はやったのである)。聞くところによると、早慶戦・早明戦に出る事は、選手にとって限りない名誉らしい。そんな試合だからか、結果は終わってみなければわからない。他の試合ではありえない力を発揮し、その日までに何敗かして優勝戦線から離脱したチームが、全勝で来ている相手に予想を覆して勝つという事も過去にあったほどである。そんな特別の試合に際し、他の対抗戦グループ各校もこの日に試合を組まない事で、両校に敬意を示しているのである。

 そして私も今日は試合開始の5分前にはテレビの前に陣取っていた(もちろん、奥様に言いつけられていた事はすべて終わらせて、である)。試合は今年全勝同士の「事実上の決勝戦」に相応しい迫力あるものであった。観ている時に「矛盾」の元となった故事を思い出した。どんな盾でも貫く矛で、どんな矛でも跳ね返す盾を突いたらどうなるか、というあれである。その答えが今日の試合だったような気がする。どちらを応援するという事もなく、ただ良いプレーを堪能していたが、20-20の引き分けという結果は、見応えあるものであった。

 観終わると体が疼く。学生の頃は次の日の練習には力が入ったものだ。体はともかくとして、気持ちの上ではあの頃のままだ。今週末の最終戦を控え、現役の学生たちはきっと力が入っているに違いない。本日、秩父宮競技場には22,000人の観客が押しかけたそうである。まだまだラグビー人気は健在なのだろうか。ラグビー・シーズンもいよいよ後半戦。じっくり楽しみたいと思うのである・・・
      



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