2025年6月22日日曜日

神様の話

 神様はいるのだろうかと子どもの頃疑問に思った事がある。今では「神は信じるものである」と考えている。「いるかいないか」ではなく、「信じるか信じないか」である。日本人は無宗教とよく言われるが、毎年大勢の人が初詣に出かけていることを考えると、日本人は立派に神を信じていることになる。心の中でどう思おうと、神社に行って手を合わせる行為自体は立派な信仰行為である。日本の神道にはキリスト教やイスラム教のような教義が何もない。「やらなければならない義務」は何もない。よって初詣に行くだけで、立派な信徒である。

 神は信じるものであり、それで十分であるが、では存在するのかどうかはどうであろうか。ないものを証明するというのは、悪魔の証明とも言われているが、それでも昔から神の存在証明というものがいろいろと行われてきている。その中でも共感できるのは、「宇宙論的証明」と「目的論的証明」と呼ばれるものである。「宇宙論的証明」とは、宇宙はビッグバンによって始ったとされるが、その原因が何かはわかっていない。しかし、わかっていなくとも「何か」があるはずであり、その「何か」を「神」と名付けるというもの。キリスト教でイメージする人間の姿をした神を想像するよりも現実的である。

 一方、「目的論的証明」とは、宇宙や生命には精巧なデザインや目的が見られるため、それらを設計した知的な存在がいるというもの。それを「神」と名付けるもの。以前、『神の方程式 「万物の理論」を求めて』という本を読んだが、この本の主張がまさにそれであった。理論物理学の教授である著者の意見がそれかと思ったが、そうとでも考えないと理解できない生命の不思議の数々は確かにある。ミツバチや蝶が受粉を媒介する仕組みなど、どうして知性のない自然の中でそのような仕組みができたのか実に不思議である。

 我々は、例えば「ある数を4倍して3を足したら23になった。ある数は何か?」と聞かれたら、通常未知数xを使って、「4x+3=23」という方程式を使い簡単に解ける。それと同様、原因がわからないものに「x」を当てはめて説明しているのが今の科学である。その「x」を「神」とすればいいのではないかと思う。そうするとxは至る所にある。道端に生える雑草が受け継ぐ生命の仕組み。我が家も家の横に何もしていないのにいつの間にか雑草が生えており、それを抜くことをしばしば妻から命じられているが、なんの意思もないのに雑草は生えてくるわけで、道端の雑草にも神は宿っていると言える。これは八百万の神々を説く神道の考え方に他ならない。

 また、そんな神道の「神」は人間に「汝、殺すことなかれ」というような義務を課すこともない。教会に通うことも要求しないし、異教徒を改宗させることも成敗することも要求しない。もちろん、都合が悪くなって神頼みをしてもそんな要求に応えることもない。明日、どうしても晴れてほしいが、降水確率100%で絶望的な気持ちで神頼みしたところ、奇跡的に晴れたとしても、それはさまざまな要因が絡み合って天気図が変わったもので、それは「神の御技」ではあっても、人間の願いを聞き入れたわけではない。「神の御技」というただの偶然である。もちろん、熱心に祈ってもお守りを何個も集めても希望の学校に合格できるかどうかはあくまでも学力次第である。

 友人に会社の社長をやっている者がいる。就職した会社の関連会社の社長で、サラリーマン社長ではあるが、社長は社長である。本人にはそれを誇らしく思う気持ちがあるのだろう、それが何気ない言動に現れている。それを批難するつもりはないが、やはり本当にすごいと思わされる経営者はみな謙虚である。人間は自分がトップになるとどうしても傲慢になりがちである(ちなみに友人は傲慢にはなっていない)。自慢したくなる気持ちはよくわかるが、尊敬を集めるのは謙虚な態度だ。自分より優れたものがいる(=神)と素直に首を垂れる事ができる人間は態度も立派になる。そういう意味で、人間にとって神は必要な存在だと思う。

 この世に神は存在する。それはキリスト教やイスラム教のような神の御名において人殺しを正当化したり、「左の頬を叩かれたのなら」という神の教えに従わなくても良かったりする都合の良い一神教の神ではなく、ありとあらゆる所に存在し、一神教の神さえ受け入れる包容力の高い神道の説く神である。日本に神社は8万社以上あるそうである。それはコンビニの5万6千店をはるかに凌駕する。さらに小さな祠のようなものを加えれば数知れないと思う。それだけたくさんの神を祀っている我が国は、実に信心深い国なのだと思う。神道の神を信じることはおかしなことではなく、我々日本人が胸を張るべきことであるとさえ思う。

 「あなたは神を信じますか?」と聞かれたら、堂々と「信じます」と答えたいと思うのである・・・

Fedra VinczeによるPixabayからの画像

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