2024年12月22日日曜日

仕事にて

先日、職場で唖然とさせられる出来事があった。現場からとある設備の貸与を請求され、担当者が手続きをして貸与したのであるが、社内に在庫があるわけではないので、いつものようにレンタルの手配をして渡したのである。レンタル期間は最低1年間である。ところが、現場担当者が2週間ほどしてその設備を返却してきた。「もう用は済みました」と。手配した担当者もそこで驚いた。1年間のレンタル費用を払って手配したものを2週間で返されたわけであるから当然である。返されたものはキャンセルするわけにはいかない(キャンセルしても1年分の違約金は取られる)。誰かがまた使うかもしれない事を期待して、やむなく保管しておくことにした。

普通に考えれば、わずか2週間しか使わないものに1年分の費用を払うのは問題外である。その設備がないと仕事にならないなら仕方がない。しかし、それは必須の設備ではない。言ってみれば「あれば便利」なものである。もちろん、仕事で必要なものであれば会社としては手配するが、そこには当然「費用対効果」という考え方がある。今回で言えば、わずか2週間ほどの「便利」のために1年分のレンタル費用は明らかに過剰である。我が社は中小企業であり、こんな「贅沢」を許せるような懐事情にはない。

なぜこのような事態になったのか。現場の担当者は「必要だから」という理由だけで要求する。それを受けた取りまとめ担当者は機械的にその意図を発注担当者に伝えた。発注担当者は機械的に発注する。通常であれば、そこで現場担当者の上司が「必要とコストとのバランス」を考えて発注するか否かを判断する。そして上司から発注部門の責任者である私のところに依頼が来て、私が発注の指示を出す。私も現場の上司からの依頼であれば、「コストをかけてまで必要なのか」を一々聞くまでもなく(そのあたりの判断は当然していると考え)、指示を出す。

しかしながら、今回、その上司が休職中であり、そのプロセスを飛ばさざるを得なかった事から、担当者ベースで直接依頼があり、いつの間にかの習慣化により、来た依頼は自動的に受ける(本当はそこに判断が入っているのに)ような錯覚を起こしていて、私も知らないところで発注手配が行われていたという事である。由々しき事態なのであるが、そこで改めて私も気がついた。我々の「判断」は目に見えない。外から見れば機械的に発注しているように見える。何も考えなければそういうものだと思ってしまう。

本来的には現場担当者も主任という肩書がついており、主任ともあればそのくらいの「判断」はして欲しいところである。会社の金だと思うから重要性も感じないだろう。これが個人のお金であればたぶんやらないであろう。それが「コスト意識」なのであるが、会社の金となるとコスト意識は薄れるもの。これが管理職であれば、採算管理をしなければならないのでコスト意識が働くが、そうでなければコスト意識など働かない。優秀な社員は自然とコスト意識を言われなくても働かせるが、そうでなければどこ吹く風である。

立場が変わると見える風景が違うという事を昔言われた事がある。役職が上がれば管理する範囲も変わってくるので、それまでと意識する範囲も変わってくるという意味であるが、今回もそれは言えている。日頃から上司とよく意思の疎通をし、また観察しているような社員であれば、普段上司がどんなところを見ているか、を見て自分も同じように見るようになる。そういう者は管理職になってもスムーズに仕事をこなせる。しかし、そうでない者にはいつまでも「あいつは大丈夫か?」という疑問符に付きまとわれる。

経営陣が見ている会社の状況を見て、同じ問題意識を共有できれば、みんなが自然と経営者のように振る舞えるのかもしれない。それは会社経営としては理想形であるが、現実的には「我が身中心」の者も多い。段階を追って管理職に任命し、経営意識を共有しながら、部門統括の立場に引き上げてと、やっていくしかないのかもしれないが、そのあたりの意識の醸成がなかなか悩ましいところがある。管理職でも難しかったりするのは、中小企業の人材力の限界なのかもしれない。

大企業であればともかく、中小企業では経営がごく近くにある。意識さえすれば、経営感覚はいくらでも磨けるし、それはなにより自分自身の力になると思う。それを生かさないのはもったいない事である。若いうちはいろいろと仕事以外に興味を惹かれるのは仕方ないが、30代の中堅クラスになったら、そろそろ一段上の仕事をしても悪くはないと思う。そんな意識向上を導くのが、自分の役割なのかもしれない。嘆くのではなく、どうするのか。そんな意識を持って自分の役割を果たしたいと思うのである・・・


Tung LamによるPixabayからの画像

【本日の読書】

運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」 (文春新書) - 安田 隆夫  三体2 黒暗森林 下 (ハヤカワ文庫SF) - 劉 慈欣, 大森 望, 立原 透耶, 上原 かおり, 泊 功



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