いよいよ今月からインボイス制度がスタートした。と言っても、実際に実務として請求書のやり取りが始まるのは来月からになる。今現在は、取引のある個人事業者の方と最終確認中である。我が社でも法人との取引はみなインボイス制度を利用するための登録を済ませているので問題はないが、やはり個人事業者はバラツキがあり、取得しない個人事業者との交渉はまだまだ続いている。この制度は簡単だが複雑である。複雑にしているのは税務署であるが、そのツケは我々に回ってきている。何とも言えない、忸怩たる思いがする。
インボイス制度の導入に際し、登録業者とならない個人事業者は免税事業者に留まる。消費税は売上に伴い顧客から受領した消費税と支払に際して払った消費税の差額を納税する。インボイス制度導入に伴い、支払った消費税が免税業者相手の取引では差し引けなくなる。つまり、我々からすれば「免税業者に支払う消費税を代わりに税務署に収める」という制度に他ならない。そうなると、登録番号を取得しない免税事業者に対して消費税を支払うと、税務署に納める分と併せて二重払いになる。したがって、「これからは消費税を払いません」と言うしかない。
こういう交渉をしているのだが、免税業者からは反論が来る。曰く、「消費税分の値下げを要求されたら、そこは交渉の余地がある」と税務署に言われたと言うのである。それに対し、「値下げではない、免税業者は消費税の納税を免除されていて、我々がその分払うことになったので消費税は払えません」と回答しているが、相手も理解できずに話が長くなる。しかし、おかしいではないかと思う。税務署は、我々に対しては免税業者に消費税を支払ってもそれは認めず、その分を収めろと言いつつ、免税業者に対しては、消費税を払わないと言われたら抵抗しろと言う。典型的な二枚舌である。
こんなことをやられたらたまったものではない。そもそも、本来消費税を導入した時に、「免税業者」などというものを認めたところに発端がある。まぁ、最初の緩和策としてはいいかもしれないが、それをやめるなら適切なプロセスでやめればいいわけで、それを(おそらく反対を恐れて)「インボイス制度」などというオブラートに三重くらいに包んでやろうとしているのである。最初から「小規模事業者の消費税免除をやめます」と直接言えばいいわけである。我々こそいい迷惑である。
個人事業者も(今は「フリーランス」などとかっこよく称している)先日インボイス制度に反対するというデモをやっていたが、本来、消費税は国に納めるものである。今までそれをポケットに入れていたわけであるが、それが廃止されるのは当然と言えば当然である。それが嫌なら免税業者に消費税を払うのも本来はおかしいわけで、ポケットに入れられる「益税」がなくなるからと言って、文句を言う筋合いは本来ないはずである。長年甘んじてきた甘い汁が吸えなくなるからといって、反対しているのである。
フリーランスと取引のない大手の企業は問題ないだろうが、取引のある中小企業は大変である。世の中の批判が嫌だからと言って、制度を複雑にして本質を見えないようにし、問題の所在を自分たちに向けさせまいという税務署のずるさには腹立たしい思いがする。それにしても、「小規模事業者の消費税免除をやめる」ということを直接宣言せず、インボイス制度などという分厚いオブラートを考え出すところは凄いと言えば凄い。我々が話をする個人事業者は誰1人としてこの本質に気づいていない。わけのわからないまま、「値下げするなんて酷いじゃないか」と批判の目を我々に向けてきているのである。
国税局には優秀な人がたくさん採用されているから、本質をうまく隠して自分たちが矢面に立たないように複雑な制度を考えだしてきたのだろう。その効果は実に見事である。個人事業者の方も、ある人はわけのわからないまま登録業者を選択し、またある人は税務署の「支援」を受けて免税業者を選択している。こちらも丁寧に辛抱強く説明するしかない。免税業者を選択すると、我々が消費税を二重払いしないといけなくなるので、消費税は払えないと。そしてこれは「値下げ」ではないと。消費税を国に納めるなら(登録事業者になるなら)これまで通り消費税を払うと。
残念ながら国家権力には勝てないので、税務署の二枚舌には対抗する術がない。せめて「値下げに対抗しろ」などと言うのはやめてほしいが、自分たちが悪者にならないように振る舞うのに精一杯なのであろう。個人事業者の方も、優秀だと思っていた人でさえ、「税務署に言われた」と金科玉条のごとく堂々と主張してくる。税務署も無責任極まりない。我々にできることは、丁寧に個人事業者の方にこの問題の本質を説明することである。そうして我々の利益を守っていこうと思うのである・・・
Steve BuissinneによるPixabayからの画像 |
【本日の読書】
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