かねてからNetflixのオリジナルコンテンツ製作はすごいなと感心していたが、最近はとうとう日本のドラマにも進出してきた。何気なく気がついて観ることにしたのが「First Love 初恋」である。観ようと思った第一の理由は主演が満島ひかりであったからだが、タイトルに心惹かれるものがあったのも確かである。もう還暦も目の前に迫りつつある年齢となると、恋などというものは遠くなってしまった感があるが、それでも過去の自分の経験からも感じるものがある。竹内結子亡き後、好きな女優No.1の満島ひかり主演というだけでも観ないではおかれない。
物語は主人公の野口也英と並木晴道との恋物語。それが高校時代と現在、そして也英の息子綴と詩と3組の物語が並行して描かれる。高校時代、相思相愛だった也英と晴道だが、現在では別々の生活を送っている。バラバラに始まった物語がやがて一つの形になって行く。人生は思い通りにはならない。相思相愛だった2人がなぜ別々の道を歩むことになったのかが、少しずつ描かれていく。しかも時を経て再会した2人は、なぜか初対面のように振る舞う。その謎も明かされていく。
「初恋」というタイトルにある通り、2人にとって互いが初恋ということらしい。私の場合、初恋は小学生の時だから2人の場合は少々遅すぎる感はある。まぁ、それはともかくとして、ドラマを観ながら思い起こされるのは己の経験。しかしそれは初恋ではなく、成就することのなかったもの。と言っても正確に言えばすれ違ってしまったと言うもの。それはドラマの主人公2人の関係のようでもある。現在の也英は離婚した相手との子供がいて、晴道も同棲している女性との結婚を控えている。そんな時、再会してしまったが故に晴道の心は揺れ動く。
私もとても似たような経験をしていて、しかしその時ドラマの晴道のような決断はできなかった。今でも歩むことのなかったもう一つの道が心の片隅で疼いている。最近、いろいろな漫画を読んでいるが、気がつけば「人生やり直し系」の漫画が多いことに気付く。否、そういうものを選んで読んでいるから多いと感じるのかもしれない。そしてなぜそういうものを選ぶのかと言えば、今でもあの時点に戻って人生をやり直したいと本気で思っているからかもしれない。そう言えば、満島ひかりの次に好きな安藤サクラ主演のドラマ『ブラッシュアップライフ』も「人生やり直し系」で、思わず観てしまった。
「人生やり直し系」の漫画では、主人公が来るとわかっている「未来」に備えて失敗した過去の行動を改めて成功させて行く。未来がわかっているから自信を持って正しい行動が取れる。今、1994年の自分に戻れたら、心から満足のいく人生をやり直せると思う。「人生やり直し系」の漫画が面白いと感じるのは、叶わぬ自分の願いを漫画の中で主人公たちが実践しているからかもしれない。『First Love 初恋』は「人生やり直し系」のドラマではないが、自分が選べなかった道を主人公は選んでいくので、それがいたく己の心を刺激してくるのである。
ドラマは主人公たちだけがスポットライトを浴びているわけではない。特に也英のタクシー運転手仲間である濱田岳が也英に想いを伝える場面などは、自分が同じように振られた過去を見ているような気にさせられる。いい事言っているんだけど、ダメなものはダメなんだよなぁと思ってしまう。濱田岳はちょっと気弱な三枚目を演じることが多いが、このドラマでは立派だなと思ってしまう。男子たるものかくあるべしと思う。きっといい友達になれると思う。
このドラマ、一般的にはどうなのだろうと思う。個人的にはいろいろと自分の心が刺激されて魅入ってしまったが、若い人からすればバツイチで子供もいる主人公の「二週目の恋」にはさして心惹かれることはないのかもしれないと思ってみたりする。自分の年齢になればまったく抵抗感はない。自分も「二週目」を経験してみたいとさえ思っているから尚更であろう。こうしたドラマの世界に浸ることはしばしば現実からの逃避になるが、それはそれでいい逃避ではないかと思う。何かと思い煩うことの多い日々である。このくらいの現実逃避は許されると思う。
ますますNetflixからは目が離せなくなってしまった。観たい映画、観たいドラマは山積していて減る気配はない。読みたい本もまた然り。この分でいけば、老後も暇を持て余すということはない気がする。満島ひかりももっと多くの映画やドラマに出演してもらいたいと思う。そしてまた私の心を刺激してほしいと思うのである・・・
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