2020年7月12日日曜日

論語雑感 里仁第四(その25)

論語を読んで感じたこと。解釈ではなくあくまでも雑感。
〔 原文 〕
子曰。德不孤。必有鄰。
〔 読み下し 〕
いわく、とくならず、かならとなりり。
【訳】
先師がいわれた。――
「徳というものは孤立するものではない。必ず隣ができるものだ」
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父は、中学を卒業すると友人とともに上京し、住み込みで働き始めたという。今では考えられないが、当時はそれが珍しくなかったという。根が真面目である父は、仕事ぶりも真面目であったようである。もともと田舎者でもあり、遊びなど知らなかったというのもあるだろう。そんな父に対し、社長の奥さんがよくコッソリこずかいをくれたという。おそらく、ちょっと手を抜いて楽をしようなどという知恵もなかったのだと思うが、みんなと同じ給料では不公平だと思ってくれたのかもしれない。

私は、学生時代からラグビーをやっていたが、就職してからも銀行のチームに入って、週末はボールを追いかけていた。ある時、ある試合の後だったと思うが、某先輩がキャプテンと話をしているのが聞こえた。私はその試合は(その試合に限らずであるが)控えであったが、毎週練習には欠かさず出ていた。一方、その試合でレギュラーとして試合に出ていたのは強豪大学出身の先輩。練習にはあまり顔を見せなかったが、試合では誰にも文句を言わせない活躍をしていた。それが「おかしい」というのが某先輩の主張だった。

真面目に毎週練習に来ている者が試合に出られなくて、試合の時だけ来て試合に出るのは如何なものかというのが某先輩の意見。至極ごもっともである。言われたキャプテンも困っていたのを覚えている。確かに、それはそうなのであるが、ただ如何せん実力は実力。私も好きで練習に出ているわけで、実力差がある以上試合に出れないのは仕方ないと思っていた。逆に代わりに出ても居心地が悪かっただろう。それでも某先輩は、真面目に毎週練習に来ているのに試合に出られない私を不憫に思ってくれたのだと思う。

欧米の合理主義から行けば、給料は実績に反映するもので、「真面目に働いたか否か」は関係ない。極端な話、サボっていても成果を挙げれば問題ない。試合に出られる基準も「実力」であり、「毎週練習に出ているか否か」ではない。ところが、我々日本人的な感覚からいくとそうではない。「一生懸命やっている」という事実に対し、とても高い評価が与えられる。それとチームワーク。自分の仕事が終わったからと言って同僚が忙しくしているにも関わらず帰ったりすると、「アイツはなんだ」と言われてしまう。

日本人の場合、「頑張っている」人は周りから評価される。「実績主義」の欧米とは異なり、実績を上げていても頑張っていない人はかえって反感を買う。この場合、「頑張っている」とは、「真面目にやっている」と同義である。今回の論語の言葉は、「徳のある者は孤立することがなく、理解し助力する人が必ず現れる」という意味でよく使われる。「徳のある」とは、何より「正しい心」であり、「真面目に(働く)」ということも含まれると思う。

欧米では、自己主張が強いと言われる。成果も進んで強調されるが、我が国の文化はあくまで謙虚に控えているのが美徳とされる。真面目に働いていれば、「お天道様が見ている」ものであり、「これだけの実績を上げました!」と自己主張するのは煙たがられる(もっとも最近では、成果主義の広まりによってそうでもなくなってきたかもしれない)。最近では、シニアのラグビーチームに参加しているが、練習後の片付けとか黙ってやっていると、手伝ってくれる人が必ず出てくる。

私もやはり日本人の血が濃く流れているのか、実績主義よりも真面目主義の方が心地よく感じる。成果も大事だが、居心地も大事である。同じ職場なりチームなりの場合、一人黙々と働いている人がいれば、手伝おうという気持ちが湧いてくる。それが「隣あり」なのだろうが、手伝ったもらった方も、また手伝った方も心地よい気分になるだろう。そのほかにもいろいろと例はあるだろうが、「働く」ことに限ってみるとそんな風に感じる。と言っても、役員ともなれば真面目だけではダメで、当然実績が求められる。ただ、そういう感情を理解できれば、働き方も工夫できるだろう。

 会社も実績が上がらなければ存続も難しい。徳も大事だか、実績も大事。そして実績があればみんなもハッピーになれる。修正して言うなれば、「徳と実績は弧ならず」とでもなるだろうか。中小企業ゆえ、存続していくのは大変であるが、「徳も実績も意識する」。真面目な父の遺伝子を受け継いだ自分としては、そんな働き方を意識したいと思うのである・・・


Joseph Redfield NinoによるPixabayからの画像 
【今週の読書】
  




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