昨今、「働き方改革」が叫ばれ、一方で裁量労働制について法整備が行われようとしているが、個人的にはどうなんだろうと思うところがある。今は小さい企業とは言え、一応「役員」なので私には時間外労働という概念がない。言ってみれば、「裁量労働制」と言えないこともない。会社の業績を上げることが職務であり、「何時間働いた」かが問われるのではない。したがって働き方の自由度は高く、場合によっては土日も「テレワーク」しているが、一方で平日でも私用で職場を離れることもある。まぁ、いまのところ結果を出しているので、気楽にやらせてもらっている。
それに対し、前職の銀行員時代はそういうわけにはいかなかった。銀行員も一応ある程度出世すると、いわゆる「経営層」になる。支店で言えば支店長、副支店長といったレベルで、こうなると「働かせる立場」となるので何時間働いても時間外手当はなくなる。そこに至る前の段階では当然「従業員=働かされる立場」なので、時間外勤務をすれば「時間外手当」がつくことになる。この時間外手当の存在が実は大きかった。何せ銀行は長時間労働の職場だ(今はだいぶ削減されてきているようではある)。時間外手当も年収の2割程度を占めていたので、かなり重要な収入であった。
「時間外手当」の占める割合は大きかったが、青天井ではない。私もかなり稼いでいたが、いわゆる「36協定」という労使間協定があったため、これを超過しないようにうるさく言われていたものである。その昔は時間外手当は「申告制」だったから、私は新人時代などほとんど時間外勤務を「していなかった」が、咋今はパソコンの起動時間でバレてしまうから正直に申告しないといけなくなり、働く立場的には好ましくなっている。その分、「絶妙な調整」が必要で、私も年間時間外勤務の制限時間より5分少なく終わらせることで、その「手腕」を発揮していたものである。
申告制の時代は随分「安く働かされていた」と思うが、オンライン管理時代になると、結構「調整」が必要だった。それは「少なく収める調整」というよりも「ギリギリまで増やす調整」である。仕事もベテランになれば効率よく終えられる。しかしそれで早く帰れば時間外手当が減って収入も減る。したがって効率的にやるのもほどほどにしないといけない。日立時代の大前研一氏は効率よくやって5時に帰って反感を受けていたらしいが、私はそんな度胸もなかったから、うまく調整して周囲と協調しつつしっかり稼いでいた。同じ仕事でも5時までに終わらせるのと8時までに終わらせるのとを比べた時に、8時までやった方が収入が多いとなれば当然そうするだろう。
本来、仕事の成果に対して報酬が払われるのであれば、こういう事態は起こらない。収入が同じであれば、当然短い方がもらう方としては得だからである。だが、言葉で言うほどこれは簡単ではない。似たような職場は日本全国至る所にあるだろうし、一方でやってもやっても終わらない過酷な職場もあるだろう。「働き方改革」も悪くはないが、後者では歓迎されても前者では歓迎されないだろうし、難しい問題である。
企業側は、当然やることをやって早く帰ってもらいたいと思うだろうし、働く方としては、なるべくのんびりやって沢山収入を得たいと思うだろう。「働き方改革」が本当に必要な職場と余計なお世話な職場とがあるわけである。裁量労働制も聞こえはいいが、結局のところは時間外を抑えたいという企業の要求が根底にあるのだと思う。働く方には働く方の事情もあるし、いろいろな思惑が入り混じってなかなか正解は難しいと思う。
世の中的にはどうであれ、自分は自分の働き方を進めていくだけ。今の働き方は極めて心地良いし、自分だけではなく一緒に働く人にもそうあって欲しいと思う。残り少ないサラリーマン生活、楽しく働きたいと思うのである・・・
【本日の読書】
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