2017年4月30日日曜日

論語雑感(為政第二その1)

子曰。爲政以徳。譬如北辰居其所。而衆星共之。
()(いわ)く、(まつりごと)()すに(とく)(もっ)てす。(たと)えば北辰(ほくしん)()(ところ)()て、衆星(しゅうせい)(これ)(むか)うが(ごと)し。
【訳】(Web漢文大系)
先師がいわれた。徳によって政治を行なえば、民は自然に帰服する。それはあたかも北極星がその不動の座にいて、もろもろの星がそれを中心に一糸みだれず運行するようなものである
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 「徳によって政治を行う」というのは、よく考えてみるとなかなか理解が難しい。ここでいう「徳」とは何なのか。何となく「人として備えている優れたもの」というイメージはあるが、はっきりとした説明は難しい。逆に政治家にはどんな人物像が理想的かと考えてみる。政治家が己のことだけを考えて政治を行ったとしたら、民衆からそっぽを向かれるだろう。そうではなくて、「自分たちのための政治をしてくれている」と感じたら、大いなる支持を得られるに違いない。

そんなイメージからすると、政治家が備えるべきものとは「利他の心」とでもいうべきものかと思う。「人のために何かをする姿」というものは、やはり共通して人の心を動かすものである。政治家という職業(「職業」という言葉が適切かはわからないが)は、「人(国民)のために何ができるのか」が問われるものである。まさに「利他の心」がなくてはならない職業であろう。そういうスタンスが前面に出ている政治家であれば、まさに北極星のごとく人がその周りを回る様になると思う。

個人的には、それにプラスして「信念」を推したいところである。「人のため」と言っても、「良薬口に苦し」のたとえもある。目先不利益があったとしても、やり抜いた後にもっと大きな幸福があることもある。多少の批判に動ぜずに信念を持って、国民のためになると信じることをやり抜く必要性だってあると思う。現在は特に浅薄なマスコミがちょっとしたことですぐ批判をし、それを恐れた政治家が目先の人気取りに走っている様も目に付く。誠に嘆かわしい限りである。

それに「筋を通す」ということも大切だと思う。「言っていることとやっていることが違う」ということは、政治家でなくても人の上に立つ者ならやってはいけないだろう。最近、女性問題で自民党を離党した中川俊直衆議院議員は、過去に世襲を否定していたが、その3年後に父の選挙区から堂々と立候補して当選している。さらに離党後休業宣言を出したが、休業するなら一旦議員をやめるべきだろう。国民の代表として活動できる人にその地位を譲れば、その間代わりの人が国民のために働けるというものである。

また、これも最近民主党を離党した長島昭久衆議院議員は、小選挙区で落選し比例代表で復活当選した議員であり、離党するなら議員も辞職しないと筋が通らない。国民は「民主党」に投票したのであって、「長島昭久」には投票していない。個人名では落選しているのだから、党を辞めるのであれば議員も辞職するのが「筋」だろう。離党の理由は大変立派だと思うが、だから「筋」を曲げてもいいというものではない。もっとも政治家のこんなことを一々挙げていればキリがないのは、実に嘆かわしいことである。

考えてみれば、「徳」が必要なのは、政治家だけにとどまらないと思う。かの経営の神様、松下幸之助も「人間として一番尊いものは徳である」との言葉を残している。先日、その神様についての本を読んだが、そこで紹介されているエピソードを数々読むと、なるほどと思わされる。松下電器に距離を置いていた取引先の社長さんが、幸之助の人柄に触れ、次の日から店頭の商品をすべて松下電器のものにしたなどという話はその最たるものであろう。こういう人こそ、政治家たるべきものだったのではないかと思うのである。

孔子もそんなことをよく理解していて、だから「徳が大事」と語ったのだと思うが、その言葉は2,500年経った現代でも極めて真実であり続けていて、それどころか、政治にとどまらずあらゆるリーダーが備えるべき資質として当てはまるものかもしれない。企業でも自社の利益ばかり追求しているところは人の支持など得られないだろう。社長はもちろんだが、企業としての「徳」も必要なのではないかと思う。

そうした「徳」を備えた企業であれば、働いていても楽しいであろう。それは決して、夢物語などではなく、実現できるものだと思う。我が社も小なりと言えど、そういう企業を目指して、明日からまた頑張ろうではないかと思ってみた次第なのである・・・






【今週の読書】
 
   

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