“A rolling stone gathers no moss”という英語のことわざがある。よく知られていることだが、このことわざはアメリカとイギリスでは解釈が違う。イギリスでは、コロコロと転がるように変わる人や物事は良くないと捉えられているようである。この場合、moss=苔は良い意味で使われている。
これに対し、アメリカでは転がる石は常に新鮮で変化に富んでいるとされ、苔はむしろ悪しきものとされているようである。日本人的には、「石の上にも三年」ということわざがあるし、「苔のむすまで」と君が代にも歌われているように、イギリスの解釈に近いと思う。アメリカのように転職を繰り返すのは、良しとしないところからもそうだろうと思う。
日本人である自分としては、当然イギリス的な解釈に近くこの言葉をとらえたいが、それは職業とかスポーツとか、何か趣味など一つの道を行く場合であって、その道を行く上では常に転がるべし、変化するべしと考えている。昨日より今日は一歩前進していたいし、明日はさらにもう一歩。そのためには、昨日と同じことをしていてはいけない。どちらかと言えば、アメリカのローリングストーンだ。
「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである」とは、進化論のダーウィンの言葉であるが、この言葉は結構気に入っている。私自身、結構飽きやすいところがあるのかもしれないが、同じことを続けるのが苦痛であるがゆえに、共感するのだろうと思う。
ただ、これは悪くはないと思う。長年務めた銀行などは、ルーティンワークも多く、慣れてくれば比較的楽にこなせるようになる(もちろん、大変な仕事も多い)。人間は安きに流れる動物で、楽をしよう楽をしようと考えるようになる。楽をするために知恵を絞るのなら良いのだが、慣れたやり方を踏襲し維持しようとすれば、考えずにできるようになるから楽ができる。安定した職場ゆえにそうなりがちで、これが一番危ない。
銀行にいる時は、そういう気持ちで楽をしても、いつか必ず後悔するだろうと思っていたし、そのうち体がなまってしまい、いつしか組織に頼らないと生きていけなくなってしまうのが怖かったからでもある。事実、そういう人が周りにいくらでもいたから、反面教師には事欠かなかったこともある。それが転職を経た今、役に立っていると少なからず実感している。
昨日と同じことをしていれば、確かに楽だが面白みは少ない。それはたぶん、他の誰でもできることだから、自分は常に「なくてはならない存在」にはなれない。下りのエレベーターに乗っているのと同じで、常に昨日とは違うことをしないと自分の存在価値は出せないと思っている。
正直面倒なこともあるが、ラグビーをやっていた頃から、トレーニングは常に続けるものだと身にしみついている。やめると試合で弾き飛ばされるのは自分だ。だからトレーニングをやめよう、休もうとは思わなかった。そんな考え方に慣れているから、苦にもならない。
昨日とは違う今日。
今日とは違う明日。
ライバルは昨日の自分。
常に変化を心がけていきたいと思うのである・・・
【本日の読書】