2013年3月21日木曜日

税金

 先日、丸源ビルのオーナーが脱税容疑で逮捕されたとニュースでやっていた。都内各所に賃貸ビルを所有し、莫大な資産を築きあげたオーナーは、「脱税ではなく節税だ」と容疑を否認しているという。聞くところによると、「節税(脱税?)はゲーム」と言っているらしい。 

 ネットビジネスで巨額の年収を稼ぎだすある人物は、昨年家族ともどもシンガポールへ移住した。かの国の方が税金がはるかに安いというのがその理由。何でも家一軒建つほど違うらしい。日本の国に住むというメリットを放棄する価値があると言うことなのだろうが、アメリカなどでも話題となっている富裕層への課税はこういうリスクをはらんでいる。

 豊かになればなるほど、あの手この手と節税策を工夫する事になる。節税か脱税かは微妙なところである。当然バカじゃないだろうから、税理士などが総力を結集して「節税」に取り組んでいる事は間違いないだろう。税理士にしても、いかに納税額を少なくするかが顧客を繋ぎとめる生命線となるから、あの手この手と工夫を重ねる。あれこれ研究して法の網の目をくぐり抜けると、くぐり抜けられた網の目はすぐにふさがれ、そしてまた次の網の目を探す。まさにイタチゴッコの世界だ。

 我々のこの世界は当然税金で成り立っている。だから納税は市民の義務であるし、積極的に納めるべきものであるし、高額納税者は世間の尊敬を集めても当然だと思う。とは言え、そうした総論はともかく、実際に自分が納めるという各論になれば、「出来る限り少なく」と思うのは人の常、総論賛成各論反対の場となる。

 サラリーマンは源泉税として否応なく持って行かれるから逃れようがないが、自営業者や会社経営者は日頃から節税意識が鋭い。ただ実際に本当にわかっているのかどうか怪しい人もいる。例えば「税金で落ちるから」と領収証をもらう行為。本当に使わないといけないなら仕方ないが、「(税金で)落とせるから」と使わなくてもいいお金を使うのは問題だ。

 なぜなら税金で控除されるにしても、(交際費なら)損金算入限度額の制限があるし、その範囲内だとしても使ったお金が全額戻ってくるわけではないからである。例えば、法人税が約40%とすると、10,000円の利益で税金は4,000円。税金を払っても6,000円は手元に残るが、「落とせるから」と10,000円使えば、当然10,000円がなくなる。4,000円を「節税」するために、10,000円使うと言う事になりかねない。

 まあ本当は認められない「家族での飲食を会社の交際費にする」といったものなら、使わざるを得ない(個人の)10,000円を使ってさらに(会社の)税金4,000円も節税してしまうと言うことになるので、理屈は通る。あれこれ節税に務めるのは「年貢米」の昔からそうなのかもしれない。

 ただ、その使い道を見ていると、やっぱり納税意欲は減退する。3月ともなれば、年度末で「予算消化」のための事業があちこちで行われていると耳にすると、やっぱりそう思う。単年度会計の弊害なのだろうが、獲得した予算はその年度に使わないと次の年から不要とされてもらえなくなる。だから何が何でも使う事になる。民間のように、「無駄に使わずに貯めておいて使う」という事はできない。

 映画『プリンセス・トヨトミ』では、税金の無駄遣いをチェックする会計検査院が登場した。その仕事は重要だと思うが、「無駄使い」はチェックできても、予算通り使われていれば、「本当は工夫すれば使わなくても済んだ」というところまではチェックできないだろう。予算を使わないで済ませられたら、その分必要な時に優先的に配布されるとか、賞与に反映されるとか、そうした仕組みがないと、一歩さらに進んだ「無駄の排除」はできないだろう。

 税金でも何らかの団体の会費などでも、有益に使われていないという事は、納付のモチベーションを著しく下げる。正しく、あるいは有益に使われていると実感できれば、少しは余分に納めようと言う気にもなるが、そうでなければ例え100円でも惜しいと思う。

 丸源ビルのオーナーが「ゲーム感覚」で節税する目的がなんであるかはわからない。使い道に対する不満なのかもしれないし、それともただ単に国家に取られる事が嫌なのかもしれない。ただ、80歳を過ぎて独身で家族もいないと言う。そうすると、その莫大な資産は何もしなければ国庫へ行く事になる。だとすれば何のために節税に勤しむのであろうか。

 もしも金の亡者ではなく、ゲームとしての節税を楽しむのが目的で、貯めるだけ貯め込んで、節税するだけ節税して、最後にはすべて国庫に寄贈するつもりでやっているなら、実はあっぱれな人物なのかもしれない。願わくば、喜んで税金を納めたくなるような使い方をしてほしいものだし、いかに税金を納めたかが称賛されるような社会であってほしいと思う。

 個人的には今のままでも年収が2倍になったら、喜んで税金を払うと思うところである(たぶん)・・・

【本日の読書】

サラリーマンは、二度会社を辞める。 - 楠木 新    ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫) - 池井戸潤

0 件のコメント:

コメントを投稿