2012年10月23日火曜日

初めの一歩

 週末、突然小学校一年の息子がそばに来て、「パパ、ママがパパに野球のルールを教えてもらえって」と言ってきた。なんでもテレビで野球を観ようとしたら、妻にそう言われたらしい。どうせパソコンの前に座って遊んでいるだけだろうと思われたのだろう(まあ事実だから仕方がない)、そんなセリフが出て来たようである。他の事ならともかく、そういう事であればと息子と一緒に野球を観る事にした。

 時にセ・リーグのクライマックス・シリーズ。圧倒的有利を予想していた我がジャイアンツだが、予想外の3連敗の崖っぷち。負けたら日本シリーズに出場できないとくる。シーズンの圧倒的成績からして、それはちょっとないだろう。まあいい機会だから、一緒に応援しようと言う事になった(たぶん息子はこうして必然的にジャイアンツファンになるのであろう)。

 さて、説明を始めると、実は息子は何も知らないとわかった。
「今はツーアウトだろ、」
「ツーアウトって何?」
「・・・」
「つまり、ストライクが3つで1アウト、」
「ストライクって何?」
「・・・」
こんな調子なのである。

 考えてみれば、「将来プロ野球選手になりたい」と言いながら、さらに叔父さんに夏の甲子園に連れて行ってもらいながら、誰もルールなど教えていない事に気がついた。私も普段はほとんどテレビで野球など観ていないし、学校で友達だって教えてくれないだろうから知るはずもないのである。今さらながら当然の事に愕然としつつ、改めて1から教える事にした。

 ストライク3つでバッターは3振と言って攻撃できなくなる。アウト3つで「スリーアウト・チェンジ」、攻撃交代。幸い画面にはストライクゾーンが表示され、投げたボールの位置が点灯するから教える方も教えやすい。そう言えば昔はストライクを先に表示していたが、今はボールを先に表示している。日本人のメジャー進出が盛んになって、メジャーのテレビ放送が増えた影響だろうが、やっぱり違和感がある。それがカッコイイとでも思ったのであろうか。

 1塁と3塁とに引いてあるラインより後ろに飛んだ打球はファウルと言って、ツーストライクまではストライクに数えられる。ゴロで飛んだボールはバッターが着く前に1塁に投げないとアウトにならない。上に上がったフライは取るだけでアウト。一つ一つのプレーをその都度解説していく。一度に覚えられるはずもない。

 風呂に入っても続く。ピッチャー、バッターの他にファースト、セカンド、サード、ショート、外野はレフト、センター、ライトとポジションの名前を教える。興味津々の目で説明を聞く息子。慣れない言葉を一生懸命覚えようとする。自分もそうだったのだろうか、とふと思う。

 たぶん親父はそんな面倒見が良くなかったはずだから、一緒に観ながらあれこれと質問する私に、ぼそっと答える形で教えてくれたのかもしれない。あの頃は毎晩のように一緒にナイターを観ていたと思うから、そんな繰り返しで覚えて行ったのだろう。「野球狂の詩」、「ドカベン」、「あぶさん」など夢中で読んだ水島新司の漫画の影響もあると思う。

 戦術的な事は、近所の子供たちと一緒に野球をやりながら覚えたかもしれない。今の息子には、「1番バッターがノーアウトでヒットを打って塁に出たら、2番バッターはバントでランナーを送って3番につなぐ」などというセオリーを説明しても、まだ理解は難しい。たぶん私も時間をかけてルールやセオリーを覚えていったのだろうと思う。あの頃は、身の回りでは誰もが野球を観ていたし、やっていたと思う。

 今はサッカーも台頭し、昔は我が物顔だったナイター放送も、今はドラマやバラエティに押されてしまっている。時代の移り変わりもあるが、父と子で一つのスポーツを観て応援するというのも、何だか必要な事のような気もする。

 さて親子での応援の成果か、ジャイアンツはその日崖っぷちで踏みとどまる。さらに翌日から連勝して、ついに大逆転で日本シリーズ進出を決めた。まだ日本シリーズが何なのかよくわかっていない息子であるが、「一緒に応援しよう」と言ったら嬉しそうに元気な返事が返ってきた。

 自分がどれだけテレビの前で時間が確保できるかという問題はさておき、ジャイアンツの応援もだが、息子の野球に対する興味をこそ、応援してやりたいと思うのである・・・
 
             
【本日の読書】

ブランドで競争する技術 - 河合 拓 ドラマ「半沢直樹」原作 ロスジェネの逆襲: 2020年7月スタートドラマ「半沢直樹」原作 - 池井戸 潤




   

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