2012年5月25日金曜日

変わりゆく街並み

葛飾区に京成立石という駅がある。
ここにはかつて私が勤めていた銀行の支店がある。
とは言っても、今では合併して店舗が統合され、同じ支店名でも私が通っていた店舗ではなくなってしまっている。

先日、仕事で久しぶりに立石の駅に降り立った。
懐かしさもあって、少し周囲を散策してみる事にした。
私が通っていたのは、もうかれこれ20年前だ。
街の様子も随分と変わっている。

旧店舗の近くに老夫婦が経営する昔ながらのパン屋があった。
古びた外観で一見、買うのに抵抗感を覚えるような店構えなのだが、これが実においしかった。支店の女性陣も絶賛していて、私も時々ここのパンが食べたくなって、あえて寮で朝食を取らずに行った事が何度もある。そんな店だったが、さすがに跡形もなかった。

帰り道によく寄り道した本屋もなくなっていた。
書評などで目をつけた本を買いに、仕事帰りに寄っていたのだ。
やはり老夫婦の経営で、比較的遅い時間まで開いていたため、重宝していた。
店に置いてない本はちょくちょく取り寄せてもらっていたし、自然と仲良くなって、何も買わない時でもおしゃべりしていたものである。
店を閉めて、きっと引退してどこかで老後を送っているのだろう。

生まれて初めて親知らずを抜いた歯医者もなくなっていた。
親知らずの抜歯が、あれほど大変だとは想像もしていなかった。
仕事帰りに寄って抜いてもらったのだが、その日は当然ながら夕食は食べられなかったし、次の日も仕事で大変だった。

若手でよく行っていたカラオケスナックもなくなっていた。
あの頃はまだカラオケルームなんてなかったと思う。
かろうじて残っていたのは、つけ麺屋だった。
よく遅くなって、寮の夕食を諦めざるを得なかった時に、寄って食べたものだ。

消防署や信用金庫や公園などは昔のままだ。
(公園はちょっと小奇麗になっていた)
駅前商店街も、全体としては変わっていない。
(今時珍しいレトロチックな商店街だ)
立ち食い寿司屋も残っていた。
京成立石の駅自体もまったく昔のままだ。

変わったところと変わっていないところ。
まだ20年程度の月日だと、それらが混在している。
当然と言えば当然ではあるが、街も年々姿を変えていく。
昔懐かしいあの頃の立石の街並みは、もうどこにもない。
3年間通った支店の跡地には、今では立派なマンションが建っている。

思えばあの頃は遅くまで働いていたものだ。その上に仕事を寮に持ち帰ってもいた。
懐かしいあの頃にもう一度戻ってみたい気もするが、今あの頃のように働けと言われると、ちょっと怯んでしまう。つらい思い出は、時間のフィルターがろ過してくれる。
立石に残っている思い出は、今や良いものがほとんどだ。

普段離れているから変化がわかる。
考えてみれば、実家の周辺だって随分変わっている気がするが、いつも目にしているのでわからない。我が町だって、住み始めた頃から比べると、別の街と思うかもしれないほど変わっている。またさらに20年もしたら、もっと変わっているのかもしれない。

今は当たり前の町並みだが、いずれ思い出の中でしか見られない光景になる。
そうなる前に、少しは写真にでも残しておこうかという気もする。我が町は終の棲家となるだろう。いずれ杖にすがって歩く日がくるのだろうが、この街の変化だけはリアルタイムで追いかけていく事にしたいものである・・・


【本日の読書】
パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ - ジェフ・ジャービス, 小林 弘人, 関 美和   1Q84 BOOK 3 - 村上 春樹





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