2009年5月22日金曜日

スポーツマンシップ

全身に何百の武器を仕込んでも 腹にくくった”一本の槍”にゃ適わねぇこともある・・・・
                         漫画:ONE PIECE(ワンピース)

他人を負かすってのはそんなむずかしい事じゃあないんだ… もっとも『むずかしい事』は!いいかい!もっとも『むずかしい事』は! 『自分を乗り越える事』さ!
                         漫画:ジョジョの奇妙な冒険
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高校に入ってラグビーを始めた私は、以前も触れたが教えられた通りのプレーを忠実にこなすプレーヤーであった。ラグビーは烈しいぶつかり合いのスポーツである。当然勢い余ってのラフプレーはある。だが、当時「殴られたらタックルで返せ」というのがコーチの教えであった。それは実に日本人の気質にあった考え方である。

何せ武士道精神の伝統ある国。正々堂々を旨とする気質だ。力道山もアントニオ猪木もジャイアント馬場も、外人レスラーの反則攻撃に耐えながら一切反則技で返すことはなく、最後に怒りの鉄拳を振るうというのが美しい勝利のパターンであった。
「タックルで返せ」というのもその考え方にそったものだ。
「目には目を」の文化とは明らかに違う。

だが、大学に入って「自我」に目覚めた私の前に、ヨーロッパの本場のラグビーは実に新鮮であった。そこではラフプレーにはラフプレーで返す文化があった。野球でも頭の近くにボールを投げられたメジャーリーガーは迷わずピッチャーに掴みかかる。
と言っても暴力礼賛ではない。要はそういう精神が大事なのだ、ということである。

それを意識したのはある試合で自分自身ラフプレーにあった時だ。
教えられた通り怒りを正当なプレーで返そうとした。しかし、その時に自分で感じたのは、「正当なプレーで返そう」と一生懸命自分に言い訳している自分の気持ちであった。教えられた通りといいつつも、実はラフプレーで返す勇気がなかったのだ。それまで何となく感じていた自分の限界=「壁」の存在をはっきりと意識した瞬間だ。何の事はない、教えられた通り「きれい事」で返そうとしていたのは、ラフプレーで返すのが実は怖かったからなのだ。

壁を乗り越えるためにやる事はただ一つ。
ラフプレーにはラフプレーで返す事だ。
殴られたら殴り返す。
ヨーロッパのプレーヤーのように、だ。
そう意識したところから新たな世界が開けた。
最初の一発をかましたあとは、無理しなくても自然に手が出るようになった。
そして自分自身感じていた壁も突破できた。

ラグビーは15人のスポーツだ。
一人が乱闘になっても必ず誰かが止めに入る。
それで試合が中止になる事はまずない。
そして「殴られたら殴り返す」熱い闘争心こそが、チームメイトをも鼓舞するのだ。
上手なプレーだけではチームを引っ張れない。
「タックルで返せ」と教えてくれた先輩には申し訳ないが、そんなプレーヤーは大成できないのだ。

ただし、ノーサイドの精神は大切だ。
試合終了の笛がなったら、すべてはノーサイド(敵サイドも味方サイドもない)。
殴りあった相手と笑顔で握手すればいいのだ。
そしてそれこそが、真のスポーツマンシップなのだと思うのである・・・
    
    

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