『派遣で16年同じ職場で働くも雇い止め 渡辺照子・練馬区議「雇用形態で差別が合法化」』というネットニュースを目にした。なぜか我が国では「派遣=悪」という図式が出来上がっているように思える。しかし、以前から私はこの図式がどうも腑におちないでいる。「差別が合法化」とは物事の本質を無視した物言いであるように思える。派遣の問題点として、マイナビの「派遣社員の意識・就労実態調査2023年版」というものから、「現在の派遣元に不満な理由」というものが発表されていた。それは以下の通り。
1. 高賃金の仕事が少ない(ない)このうち「3」と「5」はわからない。が、たとえば「1」などはスキルによると思う。「高い金を払ってでもやってほしい」というスキルがあれば問題はないだろう。そうではなくて、なんのスキルもないのに、ただ「高賃金の仕事が少ない」というのは、そもそも虫が良すぎる。意識の段階でわかっていないとしか言いようがない。そんな仕事があれば正社員を辞めてみんな派遣になるだろう。
「2」であるが、そもそも派遣先の企業は派遣元にそれなりの費用を払っている。以前、我が社でも正社員が辞めてその補充として派遣会社に派遣を依頼したが、月額の費用は「正社員に対する給料よりもずっと高かった」。確かに毎月定額で賞与などはなかったが、1年間の合計は正社員を雇うのとほとんど変わらなかった。幸い、派遣されてきた人がいい人であったため、派遣会社と交渉してそれなりの移籍費用を払って正社員になってもらった。その後昇給したが、昇給前の年収は「派遣費用の年間費用よりも安かった」。
しかし、最終的にその派遣社員に支払われる給料(派遣元から支払われる給料)は、我々が払った派遣費用から「派遣元が利益を抜いて」派遣社員に払うため、ずっと安くなる。その派遣社員からすれば、正社員登用によって給料が上がる(賞与も含めてである)ので喜んでもらった。同一賃金同一労働は当たり前であるが、派遣会社が利益を抜けば同一にならないのも当たり前である。それがわかっていない。「4」は上記の通り我々のような利用方法であれば正社員になれるルートはある(少ないのかもしれないが)。
そもそも、派遣は企業にとって都合の良い制度である。それは雇用の調整弁としてであり、正社員は簡単に首にできないが、派遣社員なら都合で雇い止めにできる。そういうニーズから生まれてきたものである。もし派遣という制度がなければ、企業としては正社員として雇うか雇わないかの選択を迫られる事になり、もしかしたら雇用自体が生まれなかったかもしれないのである。その時は「派遣の口」すらなかったわけで、失業が長引いていたとも言える。それでいいのだろうか。
そもそも派遣制度に文句があるなら、派遣になどならなければいいのである。派遣しかないのであれば、失業したままでせいぜいアルバイトくらいしかないわけで、それが良かったのであればアルバイトをすればいいのである。「アルバイトは嫌、でも正社員にはなれない、失業も嫌」となって派遣社員になったのであれば、何で文句を言うのだろうかと思う。雇い止めになる可能性がある事はわかっている事であるから、その時に備えておけばいいだけである。冒頭のネットニュースの方は、16年間も何をしていたのだろうかと首を傾げざるを得ない。
マスコミも「雇い止めはひどい」という論調でしか語らないが、そういう問題の本質を理解していないとしか言いようがない。16年間派遣で働いていたこの方は、派遣制度があったから働けたのであり、そうでなければ働けなかったのである。その方が良かったのだろうか。派遣制度があるから正社員になれないというのは間違った考えである。もちろん、派遣制度がなければ企業もある程度は正社員として雇わざるを得ないだろうが、それでも総数ではない。派遣の者が「すべて正社員になれるわけではない」のである。
「雇用形態で差別が合法化」などどこをどう見ればそんな発想が出てくるのだろうかと思う。もちろん、物事を上部だけ見ていればそういう結論は出てくるが、嘆かわしい限りである。我が社も過去に正社員の産休時になどに派遣を利用したそうであるが、まさにそういうのが派遣制度のありがたいところである。正社員の給料以上の費用を払わなければならないが、その利便性には変えられない。今後もお世話になる機会はあるだろうが、大いに利用させていただきたいと考えている。
いつもの事ではあるが、マスコミにはもっと勉強してほしいと改めて思うのである・・・
Rosy / Bad Homburg / GermanyによるPixabayからの画像 |
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