2022年11月13日日曜日

会社は何のために売上を追求するのだろうか

 経営者というのは、どんな人物が望ましいのだろうかとこの頃よく考える。会社の業績を上げられる人か、それとも社員を大事にして働きやすい職場を提供できる人か。もちろん、その両方を両立できるのであればそれに越したことはない。会社も業績が悪ければ社員に満足のいく給料を払えないし、給料が良くても業績必達のプレッシャーが凄くて休みの日も満足に休めないという状態だったら、何のために働くのだろうかと思ってしまう。

 会社を経営して行くには、業績目標というのを掲げてその達成を目指して行くというのは当然の事である。目標の売上高があり、利益がある。それを達成すべく日々工夫を重ねて行くのが経営であり、役員は社長をサポートしながらその実現に向けて努力するものである。だが、だからと言って部下の尻を叩けば良いというものでもない。「数字にこだわればどうしてもギスギスしてくるのは避けられない」とある役員は言う。そうだろうかと思う。

 数字にこだわるのは、役員としては当たり前だと思う。それなくしてただ漠然と業務をこなしているだけでは、気がつけば会社はなんら成長もしていないということになるだろう。ただ、毎日目の前の仕事をこなしているだけで安定して給料がもらえるという事は、大抵の場合あり得ない。そもそも会社が成長しなければ、理論的にも給料は増えない。去年よりも給料を増やしてもらいたいと思うのであれば、去年よりも会社の収入を増やさなければならない。それを計画的に行うのが経営であり、役員の仕事である。

 月々の計画があり、毎月その結果をトレースする。目標を達成していれば良し。達成していなければ、原因はなんなのか、それに対して今月はどういう手を打つのか。いわゆるPDCAというやつであるが、そうやって月々の目標の達成度を確認していく。「売上を追求すれば、社内はギスギスする」というのは言い訳でしかないように思える。それはただ、部下に対して鞭を振る事だけしか考えていないのかと思ってしまう。

 売上を達成できない原因はなんなのか。それをきちんと掴めば対策も見えてくる。であればその対策を部下に指示すれば良いわけである。相手ピッチャーの速球に振り遅れるなら、「バットを短く持ってコンパクトに振り抜け」というアドバイスをするべきであり、「なんで打てないんだ!」となじっても打てるようになるわけもないし、互いにギスギスするだけである。そういうアドバイスができない上司が、「売上を追求すれば、社内はギスギスする」などと言うのだと思う。

 目標を立てる時に大事なのは、目標を達成するとどうなるのかを示すことではないかと思う。「給料がこれだけ増える」などとなると、社員もやる気が出るだろう。大抵の社員は(意識の高い社員は違うだろうが)、会社の売上目標などにあまり興味は持たないものだと思う。だから、「給料がこれだけ増える」ために売上を追求するとした方が、社員も売上の追求を我が事として考えてくれるだろう。「我が物と思えば軽し傘の雪」である。社長の給料を上げるために一生懸命働いてくれる社員はそういないと思う。

 売上及び利益の目標を追求するという事は、会社の成長を求める事で、その果実を社員にきちんと還元すれば、社員も頑張って働いてくれると思う。役員の役割とは、そうやって社員にやる気を出させて目標必達に導くことであり、ただ鞭打つことだけではない。「社内がギスギスする」という役員は、そこのところを理解していない。目の前にきちんと人参をぶら下げる工夫をしなければならない。

 上場企業であれば、経営目標の必達は株主からの要求であり、日々の株価が露骨に経営者の成績として現れる。成績が悪ければ簡単に首を切られてしまう。されど未上場の企業であれば、ましてや大株主が社長自身であったりすれば、そうしたプレッシャーはない。我が社は未上場であるが、一部に「モノ言う株主」がいるから、それなりにプレッシャーはあるが、上場企業ほどではない。割と自由にできるのが未上場企業のいいところである。

 何のために会社は成長を追い求めるのか。そこには社長の自己満足だけではなく、そこで働く社員の幸せにつながるモノでなければならない。もちろん、社員の中には頑張る者もいればそうでない者もいる。そこに差がつくのはやむを得ないことであるが、大事なのは頑張る社員に頑張る理由を与えることである。頑張る理由を与えつつ、成果をもたらすために目標を達成しなければならない。それが役員の役割であり、役員が正しく仕事をするのであれば、「社内がギスギスする」などということにはならないだろう。

 休日はリラックスして過ごしているが、休日だからこそ、そんなことをツラツラと思うのである・・・


Artturi MäntysaariによるPixabayからの画像 

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