2021年5月30日日曜日

料理

 最近始めたのは、タバコ以外にも料理がある。と言っても趣味で始めたのではなく、必要に迫られて、である。実家の母親が、よる年波か、腰の痛みもあってか料理ができなくなってきている。まったくではないが、手の込んだものができなくなり、それを父が不満に思い始めているのである。それも無理からぬこと。本当であれば、同居ができれば一番なのであるが、嫁姑戦争が長期冷戦状態ではそれも無理な話。弟が調理師免許を持っているので月に一度でも行って何か作ってやってくれと頼んだが、弟だけに頼るのも如何かと思う。かと言って、自分には料理などできないし・・・

 と思っていたら、いつも観ている「カンブリア宮殿」で、「クラシル」が紹介されているのを観て、「これだ」と膝を打つ。クラシルは、料理の動画サイト。それまでレシピなど見せられても何もできなかったが、動画で作り方まで見せられると「これならできるかもしれない」と思い至る。そしてやってみれば簡単にできる。味もまずくはない。むしろ、「素人がいきなり作ったにしては上出来」というレベル。そこで、週末に実家に通い、夕食を作り始めたという次第である。

 それまでも母の指導の下、カレーを作ったり、「母親の味」であるシャケコロッケを一緒に作ったりということはしていたが、そこまで。単独でメニューを決め、買い物に行き、料理するということはなかったが、これが可能になった。そしてやってみればそんなに難しくはない(と言っても、「難しくない」ものを選んでいるのではあるが・・・)。何より、母親が「何を作ってくれるの?」と楽しそうに待っている姿がなんとも言えない。そして「美味しい」と言って食べてくれるのは、なかなかいい気持ちである。

 料理を作りはじめて気がついたのだが、やはり献立を考えるのは大変である。クラシルでスクロールして「探す」のは簡単だが、何もない中で考えるのは大変である。GWは二泊三日で泊まってこれをやったのであるが、朝は簡単にパンを食べるからいいとして、昼は何にしようと考え、食べ終わると夕食は何にしようと考え始める。メニューが決まったら、冷蔵庫のストックを確認して買い物リストを作り、買い物に行って料理する。食べ終われば後片付けをするが、あっという間に1日が終わる。普通の主婦は合間に掃除洗濯をこなすわけであるから、これは大変である。

 慣れてくれば冷蔵庫のストックを確認し、余った食材からレシピを検索してメニューを絞り込むようになる。食材ロスをなくしていこうと思えばそういう順序になる。さらに余るのを見越せば、次の料理の献立も合わせて考えるようになる。献立を決めて買い物に行っても、特売品などがあれば急遽献立を変更するという芸当も必要になるだろう(私はまだそこまで対応できていない)。いわゆる「主婦の苦労」というものが、ようやく現実問題として実感できるようになったと言える。「慣れ」もあるだろうが、これもなかなか大変である。

 ようやく完成した拙い料理であるが、次に気になるのは「評価」である。母はおいしいだけではなく、「ちょっと塩気が足りない」などど適切なフィードバックを返してくれるが、親父は黙ったまま。もともと私も食べ物に贅沢は言わないタチであり、「出されたものは黙って食べる」のを「美学」としてきたが、作った立場としては、どうなのかというフィードバックが欲しいところ。「出されたものは黙って食べる」のは、作った人に対する態度としては、美学でもなんでもないということがわかる。

 料理をするようになると、平日自宅で食べる妻の手料理に対する見方も変わってくる。妻も結婚当初はオロオロしていたし、初デートのお弁当はお義母さんの手作りだったが、今ではすっかりベテラン主婦で、料理もいろいろとバラエティーに富んでいる。毎食、食卓につく度に「これどうやって作ったのだろう」ということがまず気になる。そして当然、「美味しい」という感想を述べる。と言っても「今さら」なのか、私の評価に対しては無反応である(娘の評価に対しては嬉しそうに反応している)。

 当面は、毎週末の実家通いを続ける予定である。料理だけでなく、トイレ掃除や床の雑巾掛けといった「家庭内重労働」も母はできなくなっており、せめて週に1回でもやろうというところである。男の立場からすると、1ヶ月くらいやらなくても平気であるが、女の立場ではそうもいかないだろうし、できない(やらない)ストレスを溜めてもよくない。昼過ぎに行っては、掃除をし、その時々の雑用をこなし、買い物に行き、料理をして一緒に夕食を食べて帰る。のんびり寛いでいる暇はない。

 ちょっとしんどいところもあるが、「できるうちにできることを」と考えている。親父は昭和の男であり、男子厨房に入らずの世代。今さら料理などできないが、私はまだ頭も柔軟。いつか料理も自分のために役に立つかもしれず、将来への備えとして続けていこうと思う。自宅ではキッチンは妻の聖域であり、勝手にあれこれ使って料理などできない。そんなこともあり、当面、「自分のために」実家で料理の腕を磨きたいと思うのである・・・



【今週の読書】
 



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