何事も事前の計画というのは大事だと思う。それは夏休みの宿題にせよ、会社の経営にせよである。会社の経営においては、「事業計画」というのが大事であって、上場企業はまず100%作っているだろうし、中小企業であってもしっかりした会社ほどきちんと作っていると思う。そういう我が社も「中期計画(3年分)」と「年間計画(1年分)」を作っている。それは何も大手の企業の真似をしようというものでもなく、背伸びをしようというものでもない。「必要だから」というのがその理由である。
夏休みの宿題を例に取るとわかりやすいかもしれない。計画など立てずに行き当たりばったりでその日その日の気分によってやるやらないを決める子が、夏休みの最後になって慌てふためくことは想像に難くない。それに対し、事前に計画を立てていると、今日はどこまでやらないといけないのか、そうすればいつすべて終わるのか(夏休みが終わる1週間前にすべて終わるとか)がわかる。突発的に友達に誘われても、いつどれくらいで取り返せばいいかがすぐわかるので、誘いを受けるか断るかも容易に判断できるし、受ける場合も安心して遊びに行ける。
もちろん、計画など立てなくてもキッチリ期限までに宿題を終わらせられる子はいるし、企業だって行き当たりばったりでも何とかなるところは何とかなっているだろう。それでも計画を立てる1つの意味は「信頼度」だろう。計画を立ててキッチリ宿題を終わらせられる子とそうでない子とは、たとえ両者ともに宿題を終えたとしても親や先生という大人の目から見た「信頼度」は格段に違うだろう。「この子はきちんと計画を立てて実行できる子」という信頼度は、大人の目からすれば大きい。
企業にとって、この親や先生に当たるのはまず金融機関だろう。特に事業資金の融資を受けようと思ったら、この信頼度は大事だろう。税金だけ払いたくないからと意味のない赤字決算をしている中小企業もあるが、銀行融資を利用しないのなら構わないが、それで「お金を貸してくれない」と文句をいうのはお門違いというもの。そもそも借りられているところはそういう文句を言わないものだし、借りられないところは文句をいう前にまず自らの姿勢を正してみる必要がある。
また、お金を借りるためもあるが、純粋に経営の羅針盤としての意味もある。企業は「どこに行くか」「どうやって行くか」ということが大事である。「どこに行くか」は別の表現では「やりたいこと」と言えるし、「どうやって行くか」は方法論である。「本場大阪のたこ焼きが食べたい」というのは「やりたいこと」、その大阪へ「新幹線で行く」というのは方法論である。リーダーの役割は、「本場大阪のたこ焼きを食べに行こう!」と宣言し、新幹線で行くことを決めることである。
この時、たとえば東京駅に向かう山手線が人身事故で動かなくなってしまった場合、目的と方法論がしっかりしていれば、では東京メトロを乗り継いで東京駅に行こうとか、場所によっては品川で新幹線に乗ろうとか、あるいは東横線で横浜方面へ向かい、新横浜から乗ろうとか、いろいろとオプションが出てくる。目的地もはっきりせず、従って方法論もないとなると、行き当たりばったりで都内をウロウロし、結局「何がやりたかったのかわからない」ということになるかもしれない。
「事業計画」がしっかりできていると、目先の突発的な事象に関しても、事業計画に沿って判断すればたとえ迂回したとしてもきちんと目的地へと向かえる。ただし、「事業計画」は当然ながら「実行」が大事である。作って安心して忘れてしまっては意味がない。作ったら日々の実践である。「これは事業計画上どういう意味があるのか」「ここでこの失費は事業計画に影響が出るがどうするのか」等々、常に手元において参照するくらいでないといけないことは言うまでもない。
このあたりの感覚がわかる人とわからない人がいるのは事実。よく観察してみると、わからない人というのは、「否定派」というより「消極的賛成」という人のようである。必要だという理屈に反対はしないけど、自分ではやろうとまで思わない。「否定はしないけど面倒」「(自分のところは)なくても何とかなる」という感じである。もちろん、それでも何とかなるところは何とかなっているわけであり、それでよければいいのであるが、少しでも、特に金融機関との関係をよくしたいのならそんなことを言っていてはいけないのである。
また、金融機関の評価も事業計画を作っただけでは上がらない。それは夏休みを前に宿題の計画を立てたとママに報告しにきた子供をイメージすればわかる。その場ではもちろん褒めるだろうが、肝心なのは実践である。三日坊主では意味がないのは当然。ひと夏やり切って初めて信頼感は上がる。それが続けば、信用は抜群となる。あくまでも実践とセットなのである。今年度は我が社の中期経営計画の最終年度。来年はまた次の中期計画を立てないといけないが、なかなかの波乱万丈。前途は多難である。
Borko ManigodaによるPixabayからの画像 |
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