2019年10月17日木曜日

ラグビーワールドカップ雑感

ラグビーのワールドカップが盛り上がっている。開幕前は、「良くて2勝」だろうと予想していたが、まさかのアイルランドに勝利し、ついに宿敵スコットランドまで破って予選プール全勝での決勝進出は予想していなかった驚きと喜びである。その結果には、ただただ凄いなぁと思うだけである。何でも選手が吐くくらい猛練習したとアイルランド戦前に聞き、そんなに練習して勝てなかったらもう未来はないんじゃないかと思っていたが、やっぱり流した汗、練習は嘘をつかなかったわけである。

私もラグビーをやっていたとあって、友人知人から随分声を掛けられる。「おめでとう」と言われても、別に自分の事ではないしと戸惑うが、まぁ関心が高まるのは良いことだと思っている。テレビの視聴率も先週のスコットランド戦は瞬間最高視聴率53.7%で、今年の全番組の中でトップなのだとか。サッカーのワールドカップの盛り上がりをいつも寂しく見ていたから、そういう意味ではいい気分である。

周りには「にわかファン」がおずおずと名乗り出てくる。自分としては、「にわか」だろうが何だろうがまったく気にしないのであるが、ご本人的には気になるのだろうか。それでも「面白いねぇ」と言っているのを聞くと嬉しくなる。ただ、相変わらず「ルールが難しい」という声を聞く。個人的には「そんなに難しいかなぁ」と思う。確かにいろいろと複雑なところはあるが、試合の流れを観ていれば細かいルールなどわからなくても平気ではないかと常々思っている。ルールを知っていたって、実際なにがあったのかはレフリーのジェスチャーを見ないと我々だってわからないのである。

しかしながら、先日ある知人から「キックの違いがわからない(何でキックを蹴るのかわからない)」と言われてふと気がついた。ラグビーでは、キックでボールをフィールド外へ蹴りだした時、蹴りだしたチームのボールになる場合と相手チームのボールになる場合とがある。ペナルティキックとそうでない場合の違いであるが、「プレーの意図」がわからないと、なんでああいうプレーをするのだろうという疑問に囚われてよくわからなくなるのだそうである。わからないのは、ルールというよりそうした「プレーの意図」なのかもしれないと思った次第である。

そう言えば思い出すことがある。ラグビーを始めたばかりの高校一年の頃だったと思うが、「勉強だ」と言われて大学生の試合を観に行ったことがある。秩父宮で、法政大学とどこかの試合であったが、観戦中眠くてたまらなかったのである。当時、ルールは既に覚えていたと思うが、どうにも観ていてつまらなかったのである。今はどんな試合でも面白いと思うが、当時はまだそうではなかったということ。たぶん、やっぱりルールよりも「プレーの意図」がわからないからつまらなかったのかもしれない。

さらには一つ一つのプレーの精度もあるかもしれない。やっているからこそわかるプレーの難しさである。何気なく蹴ったキックが絶妙の位置に落ちる。ポジショニングにしても、なんでこのプレーヤーがこの位置にいるのだろうとか。タックルにしてもパスにしても、密集での働き掛けにしても、自分には難しいことをさらりとやっている。ノールックパス(味方を見ないでパスする)なんて自分たちの時代にはなかったし(むしろそんなことをやったら怒られていたと思う)、そんな痺れるプレーを観るのも面白いものである。

世間の関心が高まるのは良いと思うが、気になるのはトライを取った選手への賞賛である。それはそれでいいのであるが、ラグビーはチームプレーである。トライは結果であって、そこに至るプロセスがある。トライを取った選手は確かに賞賛に値するが、実はそこに至るまでに優れたプレーがあったりすることしばしである。巧みに相手ボールを奪取したフォワードの選手の働きがあったかもしれないし、相手のディフェンスラインを巧みに抜いて(トライを取った選手のディフェンスを自分に引きつけた)味方のバックスのランプレーがあったかもしれない。それを飛ばしてトライを取った選手だけを絶賛するのは、ラグビーを知る者にはとても違和感があるのである。

以前職場で、歩合制の導入について意見を求められたことがある。不動産業界ではけっこう当たり前の制度である。ただ、私はその時即座にそれを否定した。なぜなら、たとえば不動産を1件売ったとしても、その陰では社員の大小さまざまな「協力」があってこその考え方があったからである。たとえ問い合せであっても、全員一丸となって売ろうとしていたら、親切丁寧に応対し担当する者に繋ぐという意識でやってくれるかもしれない。「どうせいい目を見るのは担当だけ」という気持ちだったらそうはならないかもしれない。最後にトライした人だけではなく、「繋いだ人」に対する意識があったからこそ歩合制を否定したのであって、その精神はラグビーで培ったものとも言える。

さて、予選プール全37試合(残念ながら台風の影響で3試合が中止になってしまった)が終わった。これまで「全試合観戦しよう!」と決意して32試合を観終った。あとは録画で撮ってある5試合と決勝トーナメントの8試合である。決勝トーナメントはどの組み合わせでも強豪同士の好カードになる。我らが日本代表にはもちろん頑張ってもらいたいが、その他の試合もとても楽しみである。
 あと2週間、最後までじっくりと楽しみたいと思うのである・・・


日本vsアイルランド戦

【本日の読書】
 



 

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