「明日は雪かきお願いね」
妻の“お願いと言う名の指令”を受け取ったのは、まだ雪降りやまぬ前日の事。幸い我が家には、以前雪かきをしようとしたがチリ取りしかなく、難儀した経験から買い置いていたスコップがある。
そして翌日となる今日、昨日とは一転した快晴の中、雪かきを始める。既にお隣とお向かいのご主人が雪かきを始めている。軽やかな挨拶とともに雪かき開始。今日が休日で良かった。仕事の日ならこうはいかない。震災の日は金曜日だったから、歩いて帰る事を選択できた。こういう偶然も目に見えない運命の作用だとこの頃感じる。
まずは範囲の確認。何事もやみくもにやれば良いというわけではなく、事前の計画が重要だ。自宅玄関の周辺と、駐車スペース、それに家の前の道路の半分、そんなところだろう。雪は家の横の日向に積むことにした。何せ我が家の周辺は、日陰だと雪がずっと残ってしまう。
さて初めて3分で容易ならざる事態に気がつく。思いもかけぬ重労働だとわかったのである。いまだラグビーで鍛えし時代の意識がある自分。「雪かき如き」という印象は、どうしても拭えない。されどすぐに腕が重くなり、5分で背中が痛くなり、挙句にプラスチック製のスコップにヒビが入った。
頭の中で、計画の大幅修正プランが練り直される。道路は半分の半分。駐車スペースは雪が残ったって構わないだろう。今日はやっぱり仕事の方が良かったかもしれない・・・
息子はお隣のクラスメイトの友達と雪遊び。双子のその友達に近所の子供たちも集まってきて、すぐに歓声とともに雪合戦が始る。雪まみれになる事など何のそのだ。微笑ましく眺めながらこちらは雪かきを続ける。上着を脱ぎ去り、トレーナー一枚になる。お向かいのご主人はTシャツ姿だ。
かがんだ瞬間、すぐ横の車に当たった雪弾が炸裂する。さらには目の前を雪弾がかすめる。気がつけば“戦場”の真っただ中だった。息子と同級生の女の子もお兄ちゃんと参戦している。さらにふと見れば、さっき除雪したばかりの玄関の脇がいつの間にか“補給基地”と化している!萎えそうになる気持ちを奮い立たせ、飛び交う雪弾の下、ひたすら己のミッションに励む。
やがて戦火は止み、ご近所のご主人もいなくなっていた。だいぶ計画を縮小したとはいえ、それでも取りあえず雪かきの格好はつけた。己の仕事に満足したところに妻が、昼食に呼びに来る。青空を見上げつつも、午後は映画でも観て過ごそうかと思案し始めると、成果を確認した妻が一言。
「御苦労さま、残りは午後ね♪」
妻曰く、「家の前の道路は手前から道路の半分まで、そして範囲は少し隣の家にはみ出すくらい」が好ましい雪かきの範囲らしい。当初立てた計画は、間違っていなかったと言うわけだ。となるとまだまだ先は長い。結局、裏の老夫婦の事を考え、“好ましい”範囲を越えての大サービス。ようやく終わって、左腕がパンパンになった。明日、起きられるだろうか。
嗚呼、真夏の太陽が恋しい・・・
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