近所にあるスーパー「いなげや」にはよく買い物に行く。スーパーのレジは大抵パートのおばさんなのであるが、時にアルバイトと思しき若者たちが立っている。挨拶の仕方など一連の動きがすべて同じなので、たぶんマニュアルで規定されているのだろうと思うのだが、そんなアルバイトの中に男の子がいる。別に男が悪いわけではないのだが、なんとなく自分の中でマッチしないものがある。
自分も社会人になる前はアルバイトの経験がある。初めてのアルバイトは中学3年の時、と言っても高校に入る直前の春休みだ。近所の幼馴染みのお父さんが棟梁だった伝手で、建設現場でお手伝いをしたのが記念すべき初めてのバイトだった。そこは以後も休みのたびに働かせてもらい、こずかいを稼がせていただいた。おかげで、高校生になってからというもの、親からこずかいをもらわなくて済んだのである。
これに味をしめて、高校・大学に入っても当然ながらバイトでこずかい稼ぎを続けた。さすがに学費まではカバーできなかったので、教科書代や通学交通費などの学業に関わるものは親に出してもらい、こずかいは自分で稼ぐという事を貫いた。自分で言うのも何だが、随分感心な学生だったと思う。
アルバイトは親の知り合いの本屋さんというのもあったが、自分で探す事もした。普段はラグビー部の活動があって時間もなく、家庭教師くらいしかできなかったが、今の時期などのシーズンオフはいろいろと探した。年賀用のひよこのお菓子を売った事もあったし、店頭でカメラのフィルム売りの呼子をやった事もあった。その中でも一番のお気に入りは、やはり肉体労働系であった。
最初の建設現場もそうだったが、大学時代にやった築地魚河岸のバイトや防水工事の会社でのバイトなどがなかなかのお気に入りだった。魚河岸の朝は早く、怒声の飛び交う現場に最初は面食らったが、すぐに慣れて怒鳴り返していた。防水工事では、毎日いろいろな現場に連れて行かれ、9時から5時まで作業をした。
10時と3時にはきっちり「一服タイム」が入る。作業が終わって事務所に帰ってきて、その日の報酬をもらって帰る。そのうち新入りのバイトから、「社員さんかと思いました」と言われるほどになった。20数年前の当時で一日7,000円前後は貰えたが、報酬にも内容にも満足していた。
当時も選り好みするつもりはなかったが、それでもスーパーのレジというのは選択肢には入らなかった。その理由を探っていくと、何となく男がする仕事ではないという感覚がある。批判するつもりはないのだが、自分ではやらないだろうし、将来息子がやると言ったら反対するだろう。それは偏見なのだろうか。
もっとも最近では男もお肌の手入れをしたりするようだし、それほど大げさとは言わなくても何の抵抗感もないのかもしれない。そこにニーズがあって、それを満たすのに男女差は関係ないという事であれば、誰がやろうが構わないのも事実だ。そういう意識は偏狭なのかもしれない。
それはともかくとして、アルバイトはいいものだと思う。社会に出る前に稼ぐという体験ができるし、世の中の仕組みもなんとなくわかる。ひよこのお菓子を売った時は、当日の朝、その日付の製造日の日付判を押してから売っていた。当然製造日の表示の偽造であり、今ならまずいと思うのだが、当時は「こんなものか」と思ったものである。
世の中数多ある職業をいろいろと体験する事は難しいが、アルバイトはそんな職業のいくつかを疑似体験できる。子供たちもいずれそんな年齢になるだろうし、その時は積極的にこずかい稼ぎをさせようと思う。どんなバイトがいいだろうか。自分の事ではないものの、今から考えても面白いかもしれないと思うのである・・・
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