2008年11月23日日曜日

英雄なき島1

産経新聞出版社の「英雄なき島~硫黄島戦生き残り元海軍中尉の証言」(久山忍著)を読んだ。
これまでも「硫黄島」ものは本、映画といくつか触れた。
これはタイトルにもある通り一人の男の硫黄島体験記である。
すでに何冊か読んでいるのでいまさら硫黄島戦の悲惨さは目新しくないが、読んでいていくつか感じたことがある。

ここで出てくる大曲元中尉は当時23歳。
例に漏れず徴兵検査で合格し、陸軍に入隊が決まる。
しかし直前で海軍の将校が来て「海軍予備学生」制度の説明をする機会に触れる。陸軍に入れば二等兵からのスタートで、名高い鉄拳制裁が待っている。この時氏は、「海軍に行けば将校待遇になれるからまだましだ」と考えて海軍予備学生の試験を受ける。
ここが一つの分かれ道だ。打算的ではあるが、いい加減に決めるわけでもなく、考えて進路を決めるというのはいつの世でもとても重要だ。

また当時の軍隊の雰囲気も描かれる。
何事も志願兵を募るが、誰も心底志願したいとは思わない。
ただ、しなければしないでぶん殴られる。
志願せざるを得ない状況にみなが追い込まれていたという。
日本的といえば日本的だ。

硫黄島といえば栗林中将であるが、氏は中将と2回ほど顔を合わせている。
エピソードの一つとして運送物資である薪を陸揚げしていた所に中将が来て、「それは何か?」と訊ねられる。「薪です」と答えると「薪など運ぶ余裕があるなら武器を運べ」と叱責されたという。氏は中将に対し、大本営が送り込んできたものだからやむなく陸揚げしているのに理不尽だ、と感じて反感を覚える。

このエピソードから感じるのは大局、小局のものの見方だ。
目の前の事実からすれば、氏の言う通り中将は理不尽だ。
しかし、中将が言いたかったのは言葉通りの意味なのだろうか。
迫り来る米軍に対してあまりにも貧弱な日本軍。
みんなボロボロになって手作業で防空壕を掘る姿を見る指揮官の苦悩を感じざるを得ない。氏は当然とは言え、あまりにも目先の事にしか目が届いていない。

現代の会社でも得てしてそうである。
一般社員はあまりにも目先の事実だけにとらわれて不平不満を言う。
しかし経営陣はそれよりもっと多くの情報を得て大局な見地から判断を下しているのである。
そんなイメージがダブってくる。

まだある。
(つづく)

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