戦火の飛び交っていたガザ地区で停戦が実現し、ウクライナでも停戦の動きが出てきた。停戦の条件を巡っては当事者間でいろいろと思惑があるのかもしれないが、殺し合いが止まるという事はなによりも好ましいと思う。ガザでは世間的にはパレスチナ寄りの意見が多数であるように思う。ウクライナ戦争ではロシアよりもウクライナに対して同情的である。しかしながら、喧嘩には双方に理由があるものであり、どちらか一方にのみ肩入れするのはどうかと思う。トランプ大統領の誕生はいろいろと物議をかもしているが、停戦の気配が出てきたのはトランプ大統領の功績に間違いはないと思う。
良し悪し別としていきなりプーチン大統領にコンタクトを取ったのは正解だったのだろう。もともとアメリカがロシアを追い込んだと思っているし、アメリカの支援で戦争が継続しているわけであり、そのアメリカがロシアに歩み寄れば停戦の話が出てくるのも当然だろう。これに対し、ウクライナが頭越しの交渉を批判するのもよくわかるし、ヨーロッパがアメリカが単独で動く事を警戒するのもよくわかる。要は「どこに視点を置くか」であるが、「停戦」というところに視点を置くなら、トランプ大統領の行動は正解だと言える。
視点を「停戦の条件」に置くなら、ロシアに歩み寄る事はロシアに有利な停戦条件になる可能性があり、当事者のウクライナをはじめとして不満に思うところは多いだろう。あえて侵略に打って出たロシアの行動を正当化するものであり、今後の影響を考えたならまずいのかもしれない。1名でも多く救う事を考えて「停戦第一」に考えるか、今後の影響を考えここまで来たのだからさらなる死傷者が増えようと好ましい「停戦条件第一」に考えるか、どちらもそれなりに筋は通っており、あとは「考え方」次第であると思う。
ガザの停戦も好ましい事だとは思う。世の中は「イスラエル=悪」に傾いているように思うが、そもそもの発端はハマスの暴挙であり、市民約1,200人を殺害し、240人以上を人質とした行動はどんな理屈をもってしても正当化はできないだろう。これに対するイスラエルの反撃により、パレスチナ市民4万人以上が亡くなっていて、イスラエルに囂々たる非難が寄せられているが、一方でハマスに対し、「直ちに人質を全員解放せよ」という声が聞こえてこないのはどういうわけかと思う。
少し前に『ハマスの実像』という本を読んだが、これはハマスを取材して行くうちにハマスにシンパシーを感じてしまったジャーナリストの一方的なハマス寄りの偏った立場から書かれているものである。そもそもであるが、自らの要求を通すために武力でもってなそうというところが既に間違っている。それも私の個人的な考え方であるが、やはり武力ではなく平和裏に交渉によって勝ち取るべきものだと思う。「天井のない牢獄」と称されるイスラエルのガザへの圧力は確かにひどいのかもしれないが、それはハマスの武装闘争方針がもたらしているものと言える。
ハマスもイスラエルが反撃する、そしてそれによって市民に死傷者が多数出るとわかっていてなぜ武力で攻撃を仕掛けるのだろうか。自らの信念を通すためなら自分たちの同胞に被害が出ても構わないと考えるのはなぜなのだろうか。『ハマスの実像』の著者はハマスこそがパレスチナの代表だとするが、本当にパレスチナの市民はハマスを自らの代表だと思っているのだろうか。もしそうだとすれば、自分たちに被害が出てもそれはそれで仕方がない、それにも増してイスラエル憎しの感情が上回っているという事になる。そしてそうだとすれば、「被害覚悟の闘争」と言える。
被害覚悟の闘争であるなら、イスラエルのみを非難するのはやはり間違っていると思わざるを得ない。個人的にはパレスチナの人には非武装闘争をしてほしいと思う。すべての武器を捨ててガンジーのような非暴力の抵抗に出るなら、国際世論はパレスチナの方に傾くと思う。イスラエルも硬直的な態度を改めないといけなくなるし、その方が遥かにパレスチナ問題の解決に近づくと思う。そうした考えがパレスチナの人々の間に生まれてくるのは、まだまだ時間がかかるのだろうか。
世の中話し合いだけですべて解決できるほど人間は人間ができているとは言い難い。しかしながら殺し合いよりは時間がかかっても話し合いで解決するスタンスは捨てて欲しくないと思う。我が国の近隣にもきな臭い煙が漂っているが、何とか賢明なる解決策を後世に残してほしいと思うのである・・・
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HUNG QUACHによるPixabayからの画像 |